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14.20-38 損失38

またサブタイトルのナンバリングを間違えたゆえ、修正したのじゃ。

 学院長マグネアの屋敷。その地下室にいたミネルバは、何やら魔道具を操作して憤慨していた。


「もう何なのよ!私の理論が正しい事は何度も確認してあるのに、こう易々とリンクが切れるなんて……」


 ミネルバは、自作の魔道具を使って、ミレニアを操っていた。これまで何度か試験運転をして、問題無く動作することを確認していたようだが、今日、そして昨日と、少し操作しただけで装置のリンクが切れ、ミレニアの状態を把握することが出来なくなっていたのである。


 理由は不明。だからこそ彼女は憤慨していたのだ。彼女が考えた傀儡魔法の理論は完璧のはず……。にも関わらず、思い通りにミレニアを操る事ができないというのは、彼女にとってはストレスフルな事だったのである。


 ちなみに原因は、ミレニアに流される微弱な電流のせいであり、意識(リンク)が覚める度にワルツがさりげなくミレニアのことを気絶させているからだったりする。ミネルバから見える景色は、ミレニアの目を通した景色でしかないので、死角に回り込んでいるワルツの存在に気づけないのだ。


 あるいは、ミレニアの6感——いわゆる魔力感を用いて、彼女の周囲の魔力を感知するという方法でも、死角を補うことはできた。しかし、魔力を持たないワルツには無意味。結果、ミネルバは、ワルツの存在には気づけなかったのだ。


 ミネルバが、魔力を持たない人物に対し、興味を示さなかった事も、原因の一つと言えるかも知れない。もしも、魔力を持たないワルツの存在に目を向けられたなら、今頃、彼女の未来は大きく変わっていたことだろう。


「あの魔力さえ手に入れられれば、すべてが上手く行くのに……」


 そう言ってミネルバは爪を噛んだ。彼女の祈願が成就させるためには、強大な魔力——ようするにルシアの魔力が必要なのだ。だが、あと少しのところでルシアの魔力を手に入れられず……。やはりストレスが溜まっているようである。


 そんなミネルバは、死霊術が専門である。死霊術でアンデッドを呼び出して使役したり、偽りの生命を物質に宿らせることで、ゴーレムなどを作る事が出来るのである。例として、学院長の屋敷にいるゴーレムたちの半分ほどは、ミネルバが作ったものだったりする。もう半分は、ミネルバの母親であるマグネア製だ。


 そう。彼女たちカインベルク家の家系は死霊術士の家系。ミネルバの親であるマグネアも、その前の先祖も、ずっと死霊術士をしてきた家柄だった。


 彼女たちは共通して、とあることに捕らわれていたのだ。むしろ、呪われていたと言っても良いかも知れない。


 それは、歴代の研究の成果で、彼女たちは人よりも寿命が長く、配偶者に先立たれてしまうことに起因する。彼女たちの家系に連なる大半の者たちは、失った配偶者を蘇らせるために、惜しみない時間と労力を研究へとつぎ込んできたのだ。人を若返らせる方法。死体を腐らせずに、死んだ瞬間のまま、長期間保存する方法。そして、自分たちの研究を継がせるために、自らの子どもに強大な魔力を宿らせる方法などなど……。


 特に、自らの子どもに強大な魔力を宿らせるという術式は、彼女らの系譜の中で必ずと言って良いほど行われており、ミネルバも、マグネアも、そしてミレニアも、親から施術を行われていた。ゆえに、強大な魔力を有する彼女たちの家系は、中央魔法学院において代々学院長を任されてきたのである。周辺諸国を含めた人々の中で、最も大きな魔力を持っている家系と言って良いだろう。むしろ、代々様々な研究を行ってきたからこそ、学院長の座に着けるほどの家系になったと表現するのが正確か。


 そして、ミネルバもまた、家系の呪縛に捕らわれていた。夫に先立たれた彼女は、夫のことを復活させようとしていたのである。


 彼女の夫の場合は寿命ではなく、事故死。魔物に襲われて、命を落としたのだ。それはあまりに早すぎる死。ミレニアがまだ幼く、物心すら付いていないころの話である。


「どうして……」


 ミネルバがいたすぐ近くのタンク。中身を伺い知る事の出来ない不透明なタンクの中に、未だ死んだ瞬間のままの彼女の夫の遺体が保存されていた。


 彼女の目的は、莫大な魔力を使い、夫を生き返らせること。そのための術式は、すべて彼女の手元に揃っていた。


 あとは、術式を発動させるための莫大な魔力をどこからもってくるか、だ。残念ながら、ミネルバ、マグネア、ミレニアの3人の魔力を合わせたとしても、到底、間に合うような魔力量ではなく、第三者から供給して貰わなければならないほどの魔力量が必要だった。10人や100人単位ではない。万人単位の魔力が。


 もはや無理だと諦め掛けていたミネルバは、どうにか自分を騙しながら、日々、人の保有魔力を伸ばす方法を研究していた。ミレニアの魔力が、瞬間的に比類無きレベルで放出されるのも、その研究の影響である。


 しかしそれでも手が届かないほどの魔力が必要。しかし、研究は遅々と進まない……。


 そんな時に入学してきたのがワルツたちだった。特にルシア。彼女が莫大な魔力を有していることは言うまでもないだろう。


 彼女の魔力を一目を見たとき、ミネルバの中で、箍が外れたらしい。何年も研究が進まず悶々としている中で現れた好機。それも、恐らく未来永劫ありえないだろうほどの好機だ。ルシアから魔力を奪うことが出来れば、自分の願いは成就する……。ミネルバは、そんな妄想に囚われてしまうほど、研究に詰まっていたのだ。


 ゆえに、ミネルバは、ポテンティアによる絶対的な力の差を見せつけられても、諦められなかった。……ミレニアの身体を器として、ルシアの魔力を奪い取る。そのためには、特別教室へと近付かなければならない……。それが、ミレニアの身体を乗っ取った理由だ。


 今や彼女の心は麻痺していると言っても良いかも知れない。自らの身体ではなく、我が子をある意味で生け贄にしようとしているのだから。


「……諦めない。諦めないわ……あなた……」


 ミネルバが不透明なタンクに手を触れた——その直後だ。


 学院長マグネアの屋敷に——、


   ズドォォォォン!!


——と轟音が響き渡る。空から地面、そして地下室に至るまで、突如として穴が穿たれたのだ。


 直径はおよそ3mほど。外の眩しい世界の光を地下に齎したその穴から現れたのは——、


『こんにちは。家庭訪問です』


——ポテンティアだった。どうやら、事前に宣言していたとおり、保護者に対してミレニアの文句を言いに来たらしい。


やはり、このくらい書かねば話が進まぬのじゃ。

だからといって、毎日この量を書くほど時間は無いのじゃ……。

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