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14.20-35 損失35

 どこがどうミレニアと異なるのか、ジャックにも分からなかった。それでも、彼には目の前にいた人物が、いつものミレニアには見えなかったようだ。


 対するミレニア(?)は、不思議そうに首を傾げる。


「どうかしたの?」


「お前さ——」


 とジャックが何かを口にしようとした時、ポテンティアが手を横に出して、ジャックの言葉を止めた。


『どうも今のあなたは、普段のミレニアさんとは異なる様子。念のためあなたが本物のミレニアさんかどうかを確かめさせて下さい」


「えっ?」

「…………」


『……ジャックさんの名前を呼んでいただけますか?』


 どうやらポテンティアは、疑うことに時間を掛けるよりも、確かめることを優先すべきだと判断したらしい。普段のミレニアの癖を見極めれば、今のミレニアが操られているのか、本人なのか、あるいはそれ以外の何かなのか、判断が付くはず……。そんな事を考えたようだ。


 対するミレニアは、怪訝そうな表情を見せるものの、ジャックの事をこう呼んだ。


「ジャック……君?」


『……なるほど』


 ポテンティアとジャックの中で、やはり目の前のミレニアが操られているか、または偽物なのではないかという疑念が深まった。ミレニアは普段、ジャックの事を"ジャック"と呼び捨てで呼んでいるからだ。


 ただ、それだけでは確証には足りないと考えたポテンティアは、更なる確認を行った。確度の高い確認手段だ。


   カサカサカサ……


 ミレニアと自身との間に6本足の黒い物体——いわゆる"G"をこれ見よがしに走らせ、彼女の反応を見たのである。


 いままでのミレニアのGに対する反応は、異常とも言えるものだった。まるで別人に変わったかのように、強大な氷魔法を放ってきたのである。公衆の面前でもお構いなしに、だ。


『(ある意味、別人と入れ替わっているんじゃないかと疑うことはありますが……さて、どう反応します?ミレニアさん)』


 分体たちを動かしながら、ポテンティアはミレニアの反応を注意深く観察した。


 ミレニアはGの存在に気付いて、その姿を眼で追ったようである。しかし、魔法を発射することはなかった。それだけで、ポテンティアの中の疑惑が確信へと変わる。


「ん?どうした?ポテ。さっきからだんまりとして……」


『……残念ですが、ジャックさん。彼女の中身は、ミレニアさんではなさそうです。身体はミレニアさんかも知れませんが、誰かに操られている可能性が極めて高いと判断できます』


「…………」

「今、名前のことしか聞いてなかったよな?それだけで断定して良いのか?」


『えぇ、間違いありません。もし彼女がミレニアさんだとすれば、彼女は()を見た瞬間、殺害衝動に駆られるはずですが、それがまったくありませんでした』


 と、説明するポテンティアだったが、ジャックにはこれっぽっちも理解出来なかった。ミレニアがポテンティアのことを殺害する衝動に駆られた姿など、ジャックはこれまで1回たりとも見たことが無かったからだ。


 だが、実際にポテンティアは、今まで何度も殺されかけていたのである。所謂Gの姿で、ミレニアの視界に入った時、魔法が飛んでくる可能性は、今のところ脅威の100%。TPOも距離も関係無い。


「いったいどういうことだ?」


『さぁ?ただ、僕()には、話せないことがたくさんあるのですよ』


 そう言ってポテンティアが肩を竦めた——その直後だった。


「……ふふっ」


 ミレニア(?)が口許を吊り上げ、笑みを浮かべた。その笑みは普段の彼女とはまるで別人のよう。その様子に、ポテンティアたちは身構えた。


 そんな2人を前に、ミレニア(?)はこんなことを口にする。


「……ミレニアも私の知らないところで、色々な経験をしているようね」


 化けの皮が剥がれた、とはこのことを言うのかも知れない。ジャックは警戒心を露わにして、一歩、後ろに下がった。昨日のミレニアの暴走を見ていた彼は、最悪の事態を考えたらしい。即ち——ミレニアから何か魔法が飛んでくるかも知れない、と。それも、回避不可能なほどの強大な魔法が。


 一方、ポテンティアは、というと——、


『あ、いえ、別に深い意味は無いですよ?どうしてかは分からないですが、ミレニアさん、僕のことを本気で殺しに掛かってくるんですよ。今度、()()()()()に、直接文句を言いに行こうかと考えていたくらいです』


——と、普段通りな様子だった。


 その反応の温度差が原因か。


「「……えっ?」」


『えっ?僕……何か変な事でも言いました?』


 その場の空気は、どういうわけか、ピシリと固まったのである。


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