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14.20-29 損失29

 ポテンティアたちによるミレニアとマグネアの救出は、一見、上手くいったかのように見えていた。ミネルバをその場に置き去りにして、救うべきミレニアとマグネアの2人を無傷のまま救うことが出来たからだ。


 ゆえに、ポテンティアの気は緩んでいたと言えるかも知れない。2人さえ助け出せれば、この問題は終わる……。彼は単純にそう考えてしまったのだ。


 助け出した先が学院長室だったというのも良くなかった。もし、2人を逃がすのであれば、もっと人の少ない遠くへと逃がすべきだったのである。


 ……彼はミレニアという名の"爆弾"を、人が多く存在している場所のど真ん中に置いてしまったのだから。


「う……頭が……」


 最初に目を覚ましたのは、学院長のマグネアだった。彼女は頭をぶつけたのか、頭部を押さえながら、応接用の椅子の上で上体を起こす。


 結果、彼女の目に見えてきたのは、見慣れた自分の部屋の姿。その光景を見て、彼女は一瞬、自分が今まで何をしていたのか、忘れてしまいそうになる。


 そんな彼女のことを我に返したのは、同じように応接用の椅子に寝かされていたミレニアの姿だった。


「……はっ?!ミレニ…………っ!」


 マグネアはミレニアへと呼びかけようとして止めた。その様子はまるで、腫れ物に触るかのよう。


 ゆえに、彼女の様子を見ていたポテンティアは、マグネアへと問いかけた。


『マグネア先生』


「誰……いえ、その声はポテンティアさんですね」


『はい、ポテンティアです。お二人を屋敷の地下から救い出した……つもりだったのですが、何か問題でもありましたでしょうか?』


「ポテンティアさんが私たちの事を……」


 ポテンティアと話している内に、マグネアの頭がハッキリとしてきたのか、彼女は何やら考え込む。その表情は真剣で、時折ミレニアのことを見つめて眉を顰める。


 そんなマグネアに対し、ポテンティアは再び問いかけた。


『いったい何が起こったのか、説明していただくことは出来ますか?僕から見れば、ミレニアさんは、ミネルバ先生の実験台か何かに使われていたようにしか見えなかったのですが?』


「…………」


 マグネアは俯いて黙り込んだ。そう簡単に口に出せる内容ではなかったらしい。


『(家族内の問題ですから、あまり喋りたくないのでしょうね……)』


 ポテンティアはマグネアの内心を察して、しばらく彼女の返答を待つことにしたようである。


 それが1分続き、2分続き……。5分経っても、返答は戻ってこない。


 あまりにおかしいと思ったのか、ポテンティアが俯くマグネアに対して再び声を掛けると——、


『あの……マグネア先生?』


「……私はどうしたよいのでしょう」


——マグネアがすすり泣きながら、返答を始めた。


『どうしたら、とは?』


「おそらくあなたは、私が娘——ミネルバの手によって、あの場で昏倒させられたのだと考えたのかも知れません。ですが、実際はそうではないのです。私は……この子を、あの容器の中に封じようとして、暴れられて……そして、この子自身の手によって昏倒させられたのです」


『……なぜミレニアさんの事を封じようとしたのですか?』


「この子には私たちのエゴを背負わせすぎてしまったのですよ」


『エゴを?(どういうことでしょう?的を射ない返答ですね……)』


 ポテンティアがマグネアの話に付いていけず、混乱していた、そんな時。


「うぅ……」


 ミレニアが眼を覚ました。その瞬間の事だ。


   バンッ!!


 部屋の扉や窓が外へと吹き飛ぶ。部屋の内部で生じた急激な気圧変化に耐えられず、留め金ごと弾け飛んだのだ。


 なぜそんな現象が起こったのか……。原因は——、


『ミレニアさん?!』

「くっ?!」


「——————」


——ミレニアが目を覚ました途端、彼女の身体から莫大な魔力が漏れ出し始めたためだった。

あけおめ、ことよろ……と言いたいところではあるのじゃが、世の中、そう言えるムードではなさそうなのじゃ。

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