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14.20-19 損失19

『そういうことですか……』


 ポテンティアは一人、納得していた。


『(ミレニアさんがやたらめったらと黒い虫に対して殺意を抱いていたのは、コレが原因……いえ、血筋が原因だったのですね)』


 周囲を見渡す限り、家の中の調度品がすべてゴーレム。そして彼らは皆、いわゆる"G"スタイルのポテンティアに対して、並々ならぬ殺意(?)を抱いていた。例えるなら、ミレニアがそうだったように、だ。


『(この姿は、狭い場所にも素早く潜り込めるので、とても気に入っているのですが……仕方ありません。確かに害虫をモデルにしていることは否定できませんから、益虫に変わるとしましょう)』


 なぜ虫以外の生き物に変身しようとしないのか……。ルシア辺りならきっとそんなツッコミを入れるはずだが、少なくともポテンティアには、そのような考えは無かったらしい。彼は調度品ゴーレムに追われながら、新たな姿に変わっていく。


『(これならいいでしょう!)』シュタタッ


 その姿を一言で言うなら、クモ。ポテンティアは足を2本増やして、八本足の虫に変わった。とはいえ、黒光りすること自体を諦めてはいない(?)らしく、いわゆる"G"スタイルに足が2本増えただけの見た目だ。


『(確かに"かの昆虫"は害虫ですが、クモは益虫のはずです。これなら——)』


 ポテンティアが戦略的勝利を確信した——その直後。


   ぽーん


『『『最優先殲滅目標を確認』』』


 ゴーレムたちが予想だにしない発言を発し始めた。


『は?いや、だって僕、益虫……』


   ドゴォォォォン!!


『ひえっ?!』


 ほぼリビングアーマーと化している甲冑型ゴーレムが、ポテンティアへと容赦の無くハンマーを振り下ろしてくる。床に穴が開こうが関係は無いらしい。人造ゴーレムに明確な意思はないはずだが、ポテンティアからすると、ゴーレムの作者の明確な殺意が目に見えるようだった。


   ドゴォォォォォ!!


『ク、クモはダメなんですか?!』


 調度品ゴーレムからは、物理的な攻撃だけでなく、魔法攻撃まで飛んでくる。火事対策なのか、火魔法と氷魔法を合わせた複合魔法だ。本物の虫たちが魔法を受ければ、瞬時に駆除されてしまう事だろう。


 そんな状況の中、ポテンティアは必死に逃げ惑う。彼と虫たちとの明確な違い。それは、生き物では実現し得ない圧倒的な機動性と防御力。たとえ音速を超えたハエ叩きが振り下ろされようとも——、


   ズドォォォォン!!


『ひやっ?!』かさかさかさ


——とポテンティアは難なく避けられるのである。まぁ、そもそも直撃したところで、彼の身体は空中戦艦の一部のようなものなのだから、ダメージなど無いのだが。


『(ぐぬぬ……かくなる上は……!)』


 この期に及んでも、ポテンティアには人の姿で再訪するという選択肢は無かったらしい。テレサ辺りが見たなら、ただただ呆れて溜息を吐くに違いない。


 そしてポテンティアは、再び変形する。彼が次に採った姿は——、


『(僕は石……僕は石……)』


——なぜか石だった。虫の姿になると駆除の対象になる事に、ようやく気付いたらしい。


 ポテンティアが、黒光りする黒曜石のような石の姿に変化すると、ゴーレムたちの動きが急に止まった。


   ぽーん


『『『対象を見失いました』』』


『ほっ……(ひとまずこれで、襲われる事は無くなりましたね……)』


 ポテンティアは胸をなで下ろした。自分に向けられていた殺意が()()無くなったのだから、気を抜いてしまうのも無理は無いと言えるだろう。


 ……しかしそれは、別の戦い(?)の始まりに過ぎなかったのである。


   ぽーん


『掃除を開始します』


『……は?』


 突然、近くにあった扉が開いて、そこから人型のゴーレムが現れる。しかもそのゴーレムは、とある特徴的な服を着ていたようだ。


『メ、メイドロボ……?いやメイドゴーレム?!』


 どうやら地面に転がる石——のような姿をしたポテンティアのことを、ゴミだと判断したらしい。


 こうしてポテンティアVSゴーレムの第二ラウンドが始まったのである。


もしかすると、冷蔵庫の影などでは、日々、こんな戦いが繰り広げられておるのかもしれぬ……。

ポテVSル○バ、的な。

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