6後-02 ユキ2
フラグ回収のために、圧縮したり継ぎ接ぎしたので、唐突な文になっておるかも知れぬのじゃ。
なので、近いうちに修正予定なのじゃ。
え?いつも文が唐突?
ふ、普通の文が書けるように努力するのじゃ・・・。
一体、いつの日になることやら・・・。
これまで一度も顔を合わせたことが無かったユキとカタリナ。
そんな2人が出会って・・・
「・・・ビクセン様・・・?」
「はあ・・・?」
混沌が生まれた・・・。
「・・・あの、シリウス様?ビクセン様とは・・・・・・町の名前にもなった、あの大魔王ビクセン様でございますか?」
そんなカタリナの問いかけに、
「はい。そうです。かの有名なお伽話『白き魔神』の話に出てくる魔神の使い、ビクセン様です」
ユキは、至って真面目な表情を見せながら返答した。
どうやら、魔王ビクセンは女性で、狐の獣人・・・所謂、狐人らしい。
すると、
「はいはい。その話はそこまで。どーせ、勇者も狐の獣人の少女とか、実は魔王と姉妹だったとか、その他、色んな仲間たちがいて以下略なんでしょ?」
運命とか物語とか面倒ね、といった様子で、至極適当な物言いをしながら、ワルツは頭の上で手を振った。
・・・だが、そういうわけでは無かったようである。
「いえ、姉妹という話は聞いたことがありません。それに、魔神様はいつも孤独で、ビクセン様しか友と呼べるものが居なかったようですよ?ビクセン様には数多くの仲間が居たようですが・・・」
(ボッチ・・・ボッチだったのね、魔神・・・)
この世界に来た当初のことを思い出して、どこか共感を覚えてしまうワルツ。
「それに、勇者は狐の獣人の少女ではありませんでした。諸説がありますが、ボクが聞いた中で一番古い話では、若いエルフの青年だったという話です」
そんなユキの話を聞いたカタリナはハッとし、ワルツは露骨に嫌な表情を浮かべ、コルテックスはニッコリと微笑んだ。
なお、テンポはいつも通り無表情である。
「・・・なーんかさ・・・あいつしかエルフの知り合いが居ないからだと思うんだけど・・・・・・いやまさか、違うわよね?」
「お姉さま〜?既に、焼却処分は済ませておりますので、もう湧くことはないかと思いますよ〜?」
「えっと・・・ワルツさんにコルテックス?一応、隣の国の王なんですから、もう少し敬意を払っても・・・」
「いいえ。違うのですカタリナ。世の中には、生きているだけで存在自体が否定されなくてはならない者もいるのです。それが隣の国の変態だった。それだけのことです。・・・おや、国王でしたが」
「・・・」
そんな隣国の王を虚仮にしたような会話をしていると、ん?、と何かを疑問に思ったような表情を浮かべて、ワルツがユキに問いかけた。
「・・・一応、聞いてもいいかしら?どうして魔神と魔王、それに勇者は戦ってたわけ?」
するとユキは眼を瞑ってから、んー、と唸り始める。
「・・・何か言い難いこと?」
「いえ。諸説ありましてどれから話そうか考えていました。・・・でも、大抵の場合、恋愛の話ですね」
「・・・もしかしてだけど、世界のまな板を求めてとか、垂れない乳を見てみたいとか、魔神を娶るためとか・・・・・・そんな面倒くさい理由じゃないわよね?それで、勝ったら好きにしていいとか、ダメとか・・・」
「え?ワルツ様、知っていらっしゃったのですか?確かに、そう言った不純な説も含まれますね」
「・・・ごめん。なんか余計なことを聞いちゃったわ」
隣国の王=元勇者である確率が無視できないほど上がってしまったことに、問いかけたことを後悔するワルツ。
尤も、勇者を派遣した国の王なので、勇者と浅からぬ関係があるのは間違いないのだが。
「他に有力な説の一つとして、神に与えられた恒久の時を共に過ごしてくれるパートナー探し、というのもありますね」
「・・・で、その場合、どうして勇者と魔神たちが戦うことになったわけ?聞く限りでは、戦う要素は無いわよね?貧○とか魔神の前で口にしたからキレられたとか?まぁ、貧○かどうか・・・っていうか、そもそも性別も知らないけど」
「魔人様は女性だったらしいですよ?あとは・・・ボクも魔王なので、あまり勇者の悪口を言うつもりはありませんが・・・話によると、魔神様よりもビクセン様の胸のほうが大きかったらしく、途中で浮気したのだとか・・・」
「あ、そう・・・」
そう言いながらカタリナの小さくはない胸に眼をやるワルツ。
それから彼女は、光のない眼でニッコリと笑みを浮かべた後、一言だけ呟いた。
「・・・コルテックス?」
「サーチアンドデストロイですね〜?アイマム!」
・・・こうして王都の防衛システムはアップデートが図られることになったのである・・・。
どうでもいい話だが・・・。
「ま、何れにしても、カタリナはビクセンとは関係ないわよ?昔、街には住んでたみたいだけどね。っていうか、私、魔j」
「ワルツさんの言う通りです。先祖のことは分かりませんが、少なくとも今の私とは無関係ですね」
「・・・」
「そうですか・・・でも、肖像画にそっくりなんですよね・・・」
「ふーん・・・ぜひ今度見せてもらいたいわね。で、私、魔神じゃn」
「あ゛っ?!」
突然、奇声を上げるユキ。
そして彼女はベッドから立ち上がると、
「い、イブちゃんは?!ビクセンの街は?!」
そう言いながらワルツに詰め寄った。
「・・・ようやく気付いたのね・・・まぁ、いいけど。その話をするためにも、一旦外に出るわよ?っていうか、わたs」
・・・というわけで。
それからユキは、初めて着る和服をコルテックスに着付けてもらった後、地下大工房を通って、エネルギアの艦橋へと案内されることになった。
そして、エネルギアへとやってきたのは、ワルツとユキの2人だけだった。
カタリナとテンポは、リアのいる医務室へ。
コルテックスは、最近執務をサボり気味だったテレサと水竜が半ば監禁されている議長室へと足を向けたために、それぞれ別々の行動を取っていたのである。
そんな2人きりのシチュエーションだと、本来なら、少々(?)奥手なユキとはいえ、本当の自分をさらけ出して・・・!、とワルツに特攻するところなのだが・・・地下大工房の常軌を逸した大きさと、一度乗ったことがあるとはいえ人智を超えたエネルギアの内装に再び目を奪われ、言葉を失っていた。
そして・・・
シャコン!
そんなガスの抜けるような音がして、エネルギアの艦橋の扉が自動的に開かれる。
・・・そこでは、
『ずーん・・・』
大きさ1m程の真っ黒な塊が、青いオーラを放ちながら蠢いていた・・・。
「・・・あー、エネルギア。また、ミリマシンをハッキングしてる・・・」
『ずーん・・・』
ワルツが指摘するも、黒い塊から返事は戻って来なかった。
そんな異様な生き物(?)を見て、今度はユキが口を開く。
「・・・黒いスライムを・・・テイムしているのですか?」
「いいえ。この娘はこの船の・・・魂みたいなものね」
ワルツはそう言ってから、ふと思い出したかのようにして言葉を続けた。
「因みに、コレを100万分の1くらいの大きさにした機械が、貴女の身体の中にも住んでるわよ?瞬時にキズが治るのは、そのおかげね」
「はあ・・・」
そんなワルツの言葉に、自分の腕に視線を向けるユキ。
どうやら、自分の身体に小さな魔物が住んでいると思っているらしい。
「ほら、エネルギア。剣士はそのうち帰ってくるんだから、元気出しなさい」
『・・・本当?』
「もちろんよ?今、剣士は、エネルギアのために頑張ってるんだから」
そう、剣士や勇者たちは、エネルギアを貰うことを条件に、サウスフォートレスで慈善活動に勤しんでいるのである。
『いつ帰ってくるの?』
「そうねぇ・・・。目処が付いてからだから・・・1ヶ月位かしら?」
『え・・・』
そして固まるエネルギア。
『ずーん・・・』
・・・人生(?)がまだ短いエネルギアにとって、1ヶ月は長かったようだ・・・。
「んー、困ったわね・・・」
そう言いながら、艦長席にある端末に手を伸ばしてモニターのスイッチを入れるワルツ。
とりあえずエネルギアことは、放置しておくことにしたようである。
「さて、ユキ?貴女がケガを負って・・・いえ、死んでからというべきかしら。それから今までのことを説明するわね?」
「はい。お願いします」
そしてワルツは、ユキを適当な席に座らせてから、説明を始めた。
「まず、あれから何日経ったのかだけど・・・3日よ?」
「え?みっ・・・・・・え?」
「3日。そうりゃもう色々なことを超特急で済ませたんだから。・・・もしも、カタリナとか、テンポとか、コルテックスとかが居なかったら、ずっと時間がかかっていたでしょうね・・・っていうか貴女、多分、本当に死んでたと思うわよ?」
「はあ・・・」
現実味がないためか、すぐに理解できなかった様子のユキ。
本人の感覚では最低でも数ヶ月は経っていたようだが、実際にはとても短い時間の出来事だったのである。
あるいは、別の視点から比較するなら、前回の身体の交換を引き合いに出すことが出来るだろうか。
今から17年前の交換では、1年以上の時間を費やして身体を慣れさせていた。
だが、今回は3日。
実に100分の1以下の時間である。
そんなケタ違いの時間で交換にも近い修復を終えたのだから、現実味が無くてもしかたがないだろう。
「で、時系列順に説明すると・・・迷宮に飲み込まれそうになっていた貴女の身体から無事だった首だけを刎ねて、その首ごとルシアに転移魔法で送ってもらって、カタリナが治し始めて3日経って、今に至る・・・そんな感じ」
それ以外に説明する言葉が思いつかなかったのか、少々適当な説明をするワルツ。
そんな説明に抜けていたことをユキは問いかける。
・・・彼女にとっては、最も大きな懸念だ。
「・・・イブちゃんは?」
そんな質問に、
「イブね・・・」
ワルツの表情は芳しくなかった。
半ば諦めていると言えるだろう。
そんな彼女の様子を見て、一度は項垂れるユキだったが・・・重要な事を思い出して口にする。
「あ、すみません。コレについてはボクから説明する必要がありましたね」
「え?」
「ボクが捕まっていた時、実はイブちゃんも一緒に捕まっていたんです」
「!」
・・・そう、ワルツは、ユキと共にイブが捕まっていたことを知る由もなかったのだ。
「結局、ロリコンという方に誘拐されてしまいましたが・・・それまでは少なくとも何事も無く元気のようでした」
(・・・ロリコン・・・それ多分、名前じゃないと思う・・・)
「それで、イブちゃんが捕まったとき、助けようとしたら・・・」
「・・・撃たれたって訳ね」
「撃たれた?」
「そ。拳銃とかライフルって言う、古い兵器でね。聞いたことある?」
「いえ、ありません」
「ま、誰かがこの世界に持ち込んだんでしょうね・・・時限爆弾の件もあるし」
そう言うと、艦長席のコンソールを操作して、艦橋のメインモニタに、何やら穴の空いた道具の画像を表示するワルツ。
機動装甲に内蔵された膨大なデータベース・・・その中にあった、ハンドガンの画像である。
「ウチの世界では、半世紀・・・50年前まで製造されていた、古い武器ね(あ・・・ウチの世界って言っても分かんないか・・・)」
「あ、確かにこのような形をしていました」
どうやらユキは、ワルツの住んでいた世界については特に気にしていないらしい。
恐らく、この世界ではない、魔神たちが住んでいる世界か何かだと思っているのだろう。
「メンテナンスとか消耗品とか考えると、ぶっちゃけ取り回しが悪すぎる武器だったから、今ではメンテナンスフリーのエネルギー兵器に置き換わっちゃったけど、それでも数百年に渡って、戦争や紛争、それに抗争の主役として活躍していたらしいわよ?まぁ、似たような武器が見たかったら、この王都の周りの塀にVADSがたくさん生えてるから、それでも見てくるといいわ。あ、危ないから念のため覗いちゃダメ・・・って、今なら直撃しても問題ないか・・・」
「え・・・」
「まぁ、そういうことよ。今度、同じ武器で攻撃されても、まず死ぬことはないわ。HE弾頭でも大量に喰らわない限り、恐らく5秒以内に治るでしょうね。痛いと思うけど」
「・・・」
ワルツの言葉に、いよいよ自分が人間離れしていくことを感じるユキ。
一方ワルツは、目を伏せながらホッとした表情を見せて言った。
「でも、イブ・・・まだ無事だったのね」
「はい・・・ただ、あれから3日経っちゃいましたけどね」
「その前に2日間捕らえられていたのに何も無かったなら、3日や1ヶ月くらい大丈夫よ・・・多分」
(・・・絶対に見つけ出すんだから・・・)
頼りない言葉とは裏腹に、そう心に決めるワルツ。
「・・・他に何か情報はある?」
「・・・そうでした。ロリコンという男の他に、河渡しのカペラという男を見かけました」
「河渡し・・・?あのボッタクリが云々って言ってた人?」
「ぼった・・・・・・えっと、『大河』を渡る時に、500万ゴールドを要求してきた転移魔法使いです」
「500万ゴールドね・・・」
「そのせいで、殆ど手持ちが無くなって・・・」
「・・・食べる物もなく、山で石油・・・燃える液体を求めて遭難してたのね・・・(で、火を付けて燃やそうとしていたと・・・)」
「・・・はい」
その言葉にシュンとするユキ。
当時の自分を思い出して、不甲斐なさを感じたらしい。
それからもユキの言葉は続く。
「あと、何かを知っている可能性があるとすれば、第5王城に居た兵士たちでしょうか」
「第5王城・・・?あの食事が美味しいって言う?」
「はい。砂漠の炎天下の下で、熱々のサンドワーム鍋を・・・じゃなくて、牢屋から逃げ出したボクやイブちゃんを探そうとしていました。普通、王城で子どもを捕まえるなどありえないことなのに、です」
「そういうこと・・・」
するとワルツは、口を閉ざしたまま話し始めた。
『シルビア?聞こえる』
無線でシルビアに問いかけるワルツ。
すると、
『わ、ワルツ様?!3日ぶり・・・3日ぶりですよ?!もう寂しくて死んでしまうかと思いましたっ!』
間髪入れずにシルビアから連絡が戻ってきた。
どうやら、ワルツからの通信を待ち受けていたらしい。
そんなシルビアの言葉の影で、『無線機壊れてるー!旦那様と会話できないー!』と号泣するユリアの声が聞こえてくるのは・・・まぁ、気のせいだろう。
『はいはい。ちゃんと仕事はしてるかしら?』
『もちろんです!昼も夜も寝ないで、全力活動中ですっ!』
(・・・なのに、寂しいのね・・・いえ、寂しいから仕事を・・・まぁ、いっか)
『追加の仕事よ?第5王城の兵士たちから、捕らえていた子どもたちに関する情報を洗いざらい吐かせなさい』
『イエス、マイロード!』
『いや、私、一般市民・・・』
・・・だが、シルビアからの返答は戻ってこなかった・・・。
「・・・って、ことで良いかしら?ユキ?」
何か納得できないことがあったのか、眉間にしわを寄せながら、再び口で話し始めるワルツ。
なお、会話の内容は、艦橋のモニターから聞こえていたので、無線機を持たないユキにも伝わっている。
そんなワルツたちの会話に、彼女は・・・
「・・・なんか、凄いですね・・・」
表現する言葉が見つからない様子で、それでもどこか羨ましそうに、そんな感想を漏らした。
「遠隔で会話する魔法とかあるんでしょ?それと同じよ」
「確かに無いことは無いのですが、大きな規模の魔道具が必要になったり、一度きりしか使えなかったりするので、あまり実用的ではないですね」
「ふーん。そうだったのね・・・」
この世界で通信技術が発達していない理由を知って、納得するワルツ。
ユキの話をそのまま当てはめるなら、これまで天使たちが何度か通信に使っていた水晶のような魔道具は、つまり使い捨て、ということなのだろう。
ワルツがそんなことを考えていると、ユキが急に何かを思い出したかのような態度を見せた後、申し訳無さそうに話し始めた。
「・・・ワルツ様。期を逃してしまい、中々、謝罪することが出来なかったことがございます。ここで謝罪させていただけませんか?」
「随分突然ね・・・・・・あれかしら?この国の王城での一件。あの時、諜報部隊と遠隔で連絡が取れていれば・・・とか考えてたりする?」
「はい。我が国が諜報活動を行っていたことも然ることながら、王族の皆様の命を奪ってしまったことについてです。近日まで事の詳細を知らなかったとはいえ、ご迷惑をお掛けした国にご支援を要求するなどという厚かましい真似をしたことを、深くお詫び申し上げます」
恐らく、ユリアを再教育した際に、この国であった出来事を聞かされたのだろう。
それからユキは、膝を折って正座をし、頭を下げる・・・所謂、土下座をしようとした。
・・・だが、ワルツは、そんなユキの土下座を重力制御で妨害して、頭を上げさせる。
「いや、私に頭を下げても意味ないわよ?どちらかと言うと、私も加害者の方に入るし・・・。それでも、どうしても謝りたいのなら、聖廟に行って、亡くなった者たちに頭を下げることね。あと、テレサに頭を下げたりしちゃダメよ?あの娘、見た目以上に気にするし、今はもう別の所に矛先が向いてるんだから。それと、支援の話が厚かましいとか考えなくてもいいわよ?もう決定したことだし」
「・・・恐縮至極に存じます」
何故、ワルツが加害者側なのか理解できないユキだったが、自分に背を向けて話しているワルツの姿を見て、その疑問を問いかけることは無かった。
・・・ただ、どうしても気になったことがあったので、失礼ついでに問いかけることにした。
「・・・あのワルツ様?テレサ様とコルテックス様って、とても似ていらっしゃるのですが・・・双子の姉妹・・・ではないですよね?全然性格が違いますし。それに雰囲気からすると、議長とその影武者・・・というわけでも無いですよね?」
立ち上がりながら、問いかけるユキ。
「んー、いい質問ね」
ワルツはそう言うと、艦橋のモニターに、テンポ、コルテックス、ストレラ、アトラスの4人の顔写真(機動装甲撮影)を表示した。
「それぞれ、多分、見たことがあると思うから詳しくは説明しないけど、この子たち、皆、ホムンクルスよ?」
「そうだったんですね・・・・・・え?」
「・・・今、納得してたじゃない・・・」
ワルツがそう話している内にも、何故か段々と顔が青くなっていくユキ。
「・・・何人犠牲にしたのですか・・・?」
どうやら、ホムンクルスを作るために、ワルツたちが虐殺をしていると思ったらしい。
ホムンクルスに対する反応は、この世界の人々で共通のもののようである。
「いや、別に1人も犠牲にしてないわよ・・・。その調子じゃ、貴女自身を直すためにも、犠牲者を出したと思ってるんじゃないの?」
「あ・・・今まで考えもしていませんでした・・・」
「・・・」
ユキの言葉に、呆れた表情を浮かべるワルツ。
その直後、
「・・・?!」
ユキは突然眼を見開いて、驚いた表情を浮かべた。
「えっ・・・じゃ、じゃぁ、ホムンクルスを作るのに、犠牲者は要らないんですか?!」
今更になって、遅れて気付いたようだ。
「うん。そういうこと。で、手術室の中で話してた『手筈』って言うのが、ユキにそのホムンクルスの作り方を覚えて欲しいってことなのよ。あ、コレは、ユキFも了承済みね。だからそう言う『手筈』ってわけ」
「ユキF?了承?・・・あ、ヌル姉さまですね」
「流石はユキAね」
「・・・ワルツ様、もしかしてボクたちのこと、AやFとアルファベットで呼んでいたのですか?」
そう言いながらジト目を向けるユキ。
「私に変身魔法が効かないこと知ってるでしょ?だから、皆、同じ顔に見えるのよ・・・」
「・・・」
「まぁ、今度からは見分けがつくし、ユキのことは間違えないと思うわよ?とは言っても、BからFは旧態依然の呼び方になると思うけど・・・。あるいは、ミドルネームのアインスって呼ぶ?でも、結局同じような意味よね・・・」
「・・・そうですね」
自分たちのミドルネームが、0〜5であることを思い出して苦笑を浮かべるユキ。
「なんでしたら特別な愛称を付けt」
「ユキで良いわね」
「・・・はい」
こうして、今後も、ユキの名前はユキ、ユキが複数いる時はユキAと呼ばれる事になったのであった・・・。
これだけ長くなると、修正が容易では無さそうなのじゃ。
一発で書けると良いのじゃが、妾にはまだ遠く及ばぬのじゃ・・・。
さて。
『白き魔神』の部分を書いておって思ったのじゃが、妾=魔王ビクセンという展開を一瞬だけ考えたのじゃ。
・・・同時に一瞬で潰えたがのう・・・。
え?ネタバレ?・・・気にするでない。
まぁ、その辺りの設定はもう決まっておるから、今更変える気はないがのう。




