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14.20-10 損失10

 ハイスピアが現実へと戻ってくるまでに時間が掛かりそうだったので、ワルツたちは、登校する時間が迫っていたこともあり、ハイスピアのことをとりあえず放置しておくことにしたようだ。彼女の近くには、ポテンティアの分体もいるのである。彼女が無理をして怪我を悪化させたり、行方不明になったりする可能性は、ほぼゼロだと言えたので、ワルツたちは安心して登校出来たようだ。


「……あ、そういえば、ジョセフィーヌとか、カタリナとかはどうなったのかしら?昨日、あのまま放置することになっちゃったわね」


 村から学院へと繋がる真っ直ぐな陸橋を歩きながら、ワルツはふと昨日のことを思い出す。敵兵たちが襲ってきたのは、学院だけではなく、公都も同じ。その際、ジョセフィーヌは、自室で昏倒していた訳だが、死んでいたわけでも、大怪我を負っていたわけでもなかったので、ワルツたちは彼女の事を放置していたのである。


 一方、カタリナについては、転移魔法が使えないので、ミッドエデンへと無事に戻れたのか不明だった。尤も、彼女には無線機があり、ベアトリクスも同行しているのである。何かあればワルツに連絡がくることだろう。


 ルシアたちも失念していたようだ。


「そういえば、すっかり忘れてたね。まぁ、カタリナお姉ちゃんがいれば、余程のことがあっても大丈夫かなぁ」

「もがぁ」


「そうね。学院から戻ったら、ハイスピア先生を連れて、ジョセフィーヌの所に様子見に行っても良いかも知れないわね」


 ワルツは深く考えるのをやめた。カタリナたちが公都に残って活動していた以上、ジョセフィーヌたちが無事なのは明らかだからだ。


 それよりなにより、彼女には気に掛かっていたことがある。……ルシアがテレサの口を未だに塞いでいた事、ではない。


「それはそうと……本当に大丈夫?ユr……()()()()()()()?」


ハイスピアに化けたユリアが、無事にハイスピアのフリを突き通せるのか、ワルツには心配でならなかったのだ。本人は——、


「はい。大丈夫ですよワルツ()()


——とやる気満々で、自身も満々だったようだが、それでも、ワルツとしては心配が拭えなかったようである。


「(情報局の人間だし、どうにかなるのかしら……)」


 果たして、知人関係はどうするのか、授業の内容はどうするのか……。情報局員だから問題は無い、と単純な言葉で解決出来るほど、ワルツは楽観視できなかった。


「(最悪、フォローするしか無いわね……)」


 特別教室での授業中にユリアがボロを出した場合は、自分がフォローするしか無い……。と思うワルツには、もう一つ、疑問に思うことがある。


「そういえば、ハイスピア先生は、特別教室以外に、授業を受け持っていたりしないのかしら?」


 特別教室以外の授業はフォローできない……。そんな心配を抱えていたワルツに対し、ユリアが答える。


「ありません。彼女——私が特別教室以外の授業を行っていないことは、配下の者たちによって確認済みです」


「配下って……」


「ふふっ……秘密です」


「(いつ、他の情報局員を紛れ込ませたのよ……。っていうか、誰……)」


 どうやらユリアたちには、ワルツが思っている以上に、秘密が多いようだ。


  ◇


 そうこうしている内に、一行は学院へと到着する。時刻は授業が始まる30分前。普段通りの時間である。


 学院の門や壁面は、昨晩の戦闘によって多少傷ついていたものの、大きな損壊は見られなかった。学院の敷地内に至っては、バリケードが残っていたくらいで、建物自体には傷一つ付いていなかった。生徒たちや教員たちが抗戦して守り切ったのだろう。


 ゆえに、ワルツたちは普段通りに登校する事が出来たわけだが、ハイスピアになりすましたユリアと別れる直前、ワルツは不意に眉を顰めて考え込む。


「ああ、そうだわ。私、ちょっと、学院長のところに顔を出してくるから、皆は先に教室に行っていて?」


 ワルツは、昨晩のミレニアのことが気になっていたらしい。授業の前に、彼女がどうなったのか、保護者であるマグネアに確認しておこうと考えたのだ。


 結果、ワルツは皆と離れて、学院長のマグネアのところへと訪問したわけだが——、


   コンコンコン……


「……ん?いない?」


——ノックをしたものの、部屋の中から返事は無かった。この時間にはいつもいるはずのマグネアが、この時は在室していなかったのである。


「珍しいわね。まぁ、こんな日もあるか……」


 また後で来よう……。そう決めたワルツは、皆が待つ特別教室へと向かった。


 ……そして彼女は、予想外の展開と遭遇することになる。


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