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14.19-45 強襲?45

「ミレニア?!ミレニアっ!!」


 ミレニアの祖母であるマグネアは、横たわるミレニアを見つけると、急いで彼女に駆け寄った。


 ミレニアのすぐ隣には、意識の無いハイスピアの姿もあったが、マグネアの注意は完全にミレニアへと向けられていた。よほど孫娘のことを大切に想っているのだろう。


「大丈夫よ?ただ気絶しているだけだから」


「本当ですか?!……ん?」


 マグネアは声の主——ワルツの方を振り向いて、そして眉間に皺を寄せた。


「ワルツ……さん?」


「えぇ、ちょっと背が伸びてるように見えるかも知れないけれど、気にしないで」


 マグネアが何に驚いているのかを察したワルツは、少しだけ恥ずかしそうにしながら肩を竦めた。マグネア以外の者たちであれば、一日で身長が2割ほど高くなったワルツを見て、その理由を問いかけるはずだが、どうやらマグネアは触れないでおこくことにしたらしい。彼女にも、他人には言えないことが山のようにあるのだろう。


 それから孫娘の呼吸が安定していることを確認したマグネアは、安堵したような表情を浮かべた後、何があったのかをワルツに問いかける。ただ、マグネアには、なんとなく何が起こったのか、予想出来ていたようだが。


「……もしや、ミレニアが暴走したのですか?」


 やはり、前例があったらしい。


 対するワルツは、起こった出来事を、掻い摘まんで説明する。


「多分、マグネアが予想している通りじゃないかしら?急に氷魔法を乱射して、辺り一帯を凍り付かせて、私たちが人道的に助けていた敵兵たちを凍らせていったのよ。ハイスピア先生だって……」


 と言いながら、ミレニアの冷凍ビームの余波を受けて、身体の一部が凍っていたハイスピアに目を向けるワルツ。ちなみにハイスピアの体内には、マイクロマシンたちが満遍なく広がっていて、凍って壊れ掛かっていたハイスピアの体組織を修復していたようである。そのため、ハイスピアに命の別状は無く、ミレニア同様、彼女の呼吸も安定していたようだ。


 一方、ワルツの説明を聞いていたマグネアは、再び眉を顰めた。敵兵を人道的に助けていたというワルツの発言は、やはり理解に苦しむ内容だったらしい。


「……すべてのことをすぐに理解するのは難しそうですね……。ミレニアの身体に起こったことは理解しました」


「原因って知ってる?なんだか、誰かに操られた人形みたいな動きをしていたのだけれど……」


 ワルツの問いかけに、マグネアの表情が動くことは無い。ただ、ミレニアのことを心配そうに見つめているだけ。


 しかし、それだけで、マグネアは返答していると言えた。肯定も否定もしない……。それ即ち——肯定である。それも、知られると具合の悪い類いの肯定だ。


 彼女が明白に返答できなかったのは、周囲にいた者たちの存在に原因があった。ワルツとマグネアとの間で交わされているのは、ミレニアのプライベートな話。ところが、ワルツとマグネアの周囲には、ルシアたちの他、マグネアを呼んできたジャックたちもいるのである。そんな者たちの中で、プライベートな話をすれば、口止めをしたとしてもどこから情報が漏れるとも分からないのだから、下手な事は言えないのは仕方のない事だった。


 普段は空気の読めないワルツでも、なぜマグネアが黙っているのか、この時ばかりは理由を察する事が出来たらしい。


「まぁ、後で詳しく事情を聞かせて貰えると助かるわ?」


 そんなワルツの言葉に、マグネアは小さくコクリと頷く。やはり、皆の前では言えない何かがあるらしい。


 それからワルツは、話を切り替えて、撤収について問いかける。まず、ミレニアについて。


「ミレニアのことはマグネアに任せても良いかしら?それとも、こっちで様子を見た方がいい?」


「……いえ、大丈夫です。ミレニア()こちらで預かります」


「じゃぁ、ハイスピア先生はこっちで引き取るわね?」


 そんなやり取りの通り、ハイスピアについては、ワルツたちが引き取ることになった。元の姿と比べて、見る影も無くなってしまったハイスピアのことを、マグネアは引き取ると言えなかったらしい。


 その間、ジャックたちは、無言でワルツとマグネアのやり取りを聞いていたようだ。彼らには何も言えなかったのだ。担任教師であるハイスピアの見るも無惨な姿と、クラスのまとめ役であるミレニアが意識無く横たわっている姿。そんな2人の姿を改めて見て、ショックを隠せなかったらしい。


 ワルツもジャックたちの様子には気付いていたようだが、彼女がジャックたちに声を掛けることはなかった。彼女にも何と言って良いのか分からなかったのだ。今のワルツにできることは、なんとか一命を取り留めたハイスピアのことを、一日も早く元通りに治す事くらい。それが元クラスメイト——今は教え子たち対してできる、彼女なりのフォローだと言えた。


 こうして、ワルツたちの、そして学院にとっての慌ただしい1日は、ようやく終わったのである。


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