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14.19-38 強襲?38

 咄嗟のことだったために、ワルツには対応しきれなかった。もしもミレニアから放たれたレーザー、あるいはビームのような魔法が、自分やルシアたちに直接向けられていたなら、彼女は間違いなく反応できたはず。しかし、ミレニアから広がる魔法は、地面に当たっただけでその場所を凍らせるだけでなく、周囲へと急速に広がっていったのである。そこまでワルツは配慮できなかったのだ。


 その結果が、ハイスピアや、せっかく助けた者たちの凍結、という結果に繋がってしまった。地面からの冷気を受けて、ジワジワと凍っていくハイスピアを前に、ワルツは慌てて彼女の事を空中に浮かせようとするが、既に凍ってしまった場所は元には戻せない。追加の治療が必要なことは言うまでもないだろう。


「な、なんで……」


 その場にいた皆が同時に考えていた疑問をルシアが口にする。なぜミレニアは、突然攻撃を仕掛けてきたのか……。そもそも、今のミレニアは、正常な状態にあるのか……。なぜ、という疑問が彼女たちの頭の中で渦巻いていく。


 それはルシアたちだけでなく、ミレニアとこの場にきたジャックたちも例外ではなかった。突然、ミレニアが苦しみ始めたと思ったら、何の前触れも無くワルツたちを攻撃し始めたのだ。しかも、普段見ることの無いような超強力な氷魔法で。


「お、おい?!ミレニア?!」


 ジャックは慌ててミレニアへと駆け寄り、彼女のことを止めようとする。しかし、その直前——、


「待て」ガシッ


——肩をラリーに捕まえられる。


「なぜ止める!ラリー!」


「様子がおかしい」


「それは見れば分かr——」


「不用意に近付けばやられる。彼女を助けるつもりなら、もっと冷静になって考えろ」


「……くっ!」


 ラリーの言葉を理解したのか、ジャックは渋々、ミレニアに駆け寄るのをやめた。そしてミレニアの観察を開始する。


 時を同じくして、その場に取り残されていた薬学科の双子も、ミレニアの異常さに気付いて、彼女の事を観察し始めていた。


「薬物の類い……じゃなさそうだね」


「薬物なら、私たちも影響を受けているはずだもん。もしかして、お昼に何か変なものを……」


「それは無いよ。だって、私たち、お昼ごはんは食べてないじゃん」


「ってことは……」


 薬物ではなく、突発的な病気か、あるいは魔力的な"何か"が原因。そこまでは原因を断定した双子だったが、2人は思考を止めざるを得なくなる。


「おい!2人とも気を付けろ!」


「「?!」」


 チュィィィン……ズドォォォォン!!


 間一髪の所だった。無差別に乱射されていてミレニアの冷凍ビームが、双子の間を突き抜けていったのである。当たれば即死を逃れられないのは明らか。2人は慌てて木陰に身を隠した。


 幸い、学院の周囲に生えていた木は、某人物によって単なる木ではなく大木化させられており、木の陰に隠れれば、ミレニアの攻撃を防げそうだった。結果、2人は慌てて木の陰に隠れて事なきを得る。


 すると、彼女たちの所に、ジャックとラリーが急いで駆け寄ってきた。


「無事か?!」


「え、えぇ……」

「どうしちゃったの?ミレニアちゃん」


「分からない……。だが、ワルツたちが何かをしたようには見えなかった」


「うーん……。余りにお腹が減りすぎて——」

「何か危険なキノコでも食べたのかな……」


「いや、それは無いだろ……」


「あれは——」


 普段は寡黙なはずのラリーが、珍しく自ら感想を口にする。


「誰かに操られている……そんな気がする」


「「「操られている……」」」


 ラリーの言葉に3人の声が重なる。


 そんな3人は、木陰に身を隠したまま、頭だけを出して、ミレニアの様子を確認した。彼女の動きは辿々しく、まるでヘタクソな人形遣いに操られるマリオネットのような雰囲気。右にフラフラ、左にフラフラと、自分の意思で立っているとは到底思えない動きをしていた。


 そんなミレニアから、今なお、無数のビームが放たれ、ワルツたちの方へと襲い掛かっていく。しかし、それらビームの軌道は、ワルツたちの直前で、何かに弾かれるかのように直角に曲がり、あらぬ方向へと飛んでいく。


「すごい……」

「魔法じゃ……ない?」

「おい、あれ……」

「ハイスピア先生……」

「「?!」」


 ジャックたちは、遂にハイスピアの姿を見てしまった。ワルツがミレニアの冷凍ビームからハイスピアを守るために、彼女の事を宙に浮かべていたのである。目立つのは当然のことだった。


 ただ、だいぶ月も傾き、暗くなりつつあったせいか、離れた場所からは、ハイスピアの肌がパッチワークのように所々黒くなっているなっている姿や、身体の半分ほどが氷漬けにされている様子は確認出来なかったようだ。そのおかげか、4人が混乱状態に陥る状況は辛うじて避けられたようである。今ここで我を失うような混乱状態に陥れば、4人を待っている未来は決して明るく無いはずだ。


 自分たちがそんなギリギリの状況の瀬戸際にある事を知ってか知らずか、4人は木の陰に隠れながら、事の成り行きを見守った。


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