6中-23 迷宮の外(?)で2
時間がなかったので、少々、文が拙いかも知れぬが、その辺は補完して呼んで欲しいのじゃ。
ズササササ・・・
「っ・・・!」グッ!
ズサッ・・・
滑り落ちる既の所で、壁に、腕と足を突っ張って踏ん張るユキ。
身体が大きくなってきていたためか、どうにかその場に留まることに成功する。
「まさか、こんな所に穴が開いていたなんて・・・」
周囲が真っ暗だったので、そこに壁が無いことに、2人とも気づかなかったのだ。
恐らくイブは、壁にもたれかかろうとして、背中から倒れてそのまま滑っていった、ということなのだろう。
「・・・イブちゃーん?」
外にいる者達に見つかる可能性を否定できなかったが、それでもユキは、これ位なら大丈夫、と思える程度に大きな声を穴の奥へと投げかけた。
・・・しかし、
「・・・」
いくら待っても返事は戻ってこなかった。
「・・・行くしか無いですね」
イブの身に何かあったのかもしれない、と思ったのか、ユキは覚悟を決めるようにしてそう呟いてから、どの程度の深さがあるのかも分からない斜面を、ゆっくりと下り始めたのである。
・・・それからどれほど進んだのかは定かではないが、ようやく坂を降りきると、
「(・・・?少し明るい?)」
通路の先で仄かな明かりが壁に反射している様子が目に入ってきた。
直接光源が見えるわけではなかったが、もう少し進めば、開けた部屋へと出られそうである。
だが一方で、そこにイブの姿は無かった。
「(移動したのでしょうか・・・それとも・・・)」
捕まったのか、あるいは通路の闇に潜む魔物にやられてしまったのか・・・。
そんな最悪な状況が、ユキの脳裏で浮かびつつあったが、
「(・・・明るい光が見えているんですから、そっちに進んでいったのかもしれませんね)」
人や魔物の気配がしなかったことから、彼女はネガティブな考えを捨てて、イブが先に行ってしまったと思うことにした。
何れにしても、光が見えている以上、注意して進むことに越したことはないので、これまでよりも注意深く進もうとするユキ。
そんな時、下げた腕が地面にあった溝に落ちてしまい、体勢を崩してしまう。
ぐにゃ・・・
『(ふぎゃっ!)』
その瞬間、何か温かくて柔らかい感触が手から伝わってくるのと同時に、地面から不可解な音が聞こえてきた。
『(た、食べないでっ!!)』
「えっ・・・イブちゃん?」
どうやら音の主は、イブのようである。
『(はぁ・・・よかったぁ。君かぁ・・・・・・っていうか助けてー!!)』
「え・・・?」
『(挟まって取れない・・・)』
「あ、そういうことでしたか・・・」
要するに、滑り落ちた先で地面に空いた穴に身体が挟まってしまい、抜けなくなってしまった、ということなのだろう。
ユキがイブの名前を呼んでも返事が戻ってこなかったのは、これが原因だったようである。
「今、引っ張ります!」
そう言うとユキは、手探りでイブの身体を探ると、掴みやすかった部位を引っ張ってみた。
『(んぎゃっ?!)』
その瞬間、ビクンッ!と身じろぎして、バタバタと暴れだすイブ。
『(そ、そ、それ、し、し、尻尾!お、折れるぅぅぅっ!!ギブッ!!)』
「あ、ごめんなさい。引っ張りやすかったので・・・」
尻尾を持っていないユキにとっては、尻尾を引っ張られる感覚がどんなものなのか分からなかったが、どうやら、相当痛いらしい。
具体的な痛みを例えるなら、足の指のどれか1本だけで、身体全体を引っ張られる感じに近いだろうか。
『(せ、せめて足を引っ張・・・ひゃんっ?!)』
ユキの手が尻尾を遡ってきたことに、身動ぎできないまま悶えるイブ。
『(ちょっ・・・・・・だから、尻尾から手を離し・・・うひゃっ!!そ、それお尻!!)』
「あ、ここに身体が挟まっていたんですね。それで・・・何か言いましたか?」
『(・・・もういいもん・・・・・・うぅ・・・お嫁に行けない・・・)』
・・・こうしてイブは、身体中ユキに撫で回された後、ようやく救出されるのであった。
一見すると、ユキはふざけていたように見えるかもしれないが、彼女は真面目にイブを助ける方法を探していたのである。
例えば、身体が何か鋭いものに引っかかっている場合、無理に引っ張ると、取り返しの付かない大怪我を負ってしまうかもしれないのだから・・・。
「ウゥゥゥ・・・」
助け出された後で、ユキが居るだろう空間に対して唸り声を上げるイブ。
「なんか・・・怒らせてしまったみたいで・・・すみません」
そんな彼女に、ユキは申し訳無さそうに頭を下げた。
「助けられたんだし、別に起ってないもん!ウゥゥゥ・・・」
「(怒ってるじゃないですか・・・)」
そう思いつつも、先程まで穴に挟まっていたイブに対して、ユキは身体の状態の確認を取る。
「大丈夫ですか?どこかぶつけたり、傷があったりしませんか?」
するとイブは、今度はユキに触られまいと、自分の手で身体中をまさぐって確認を始めた。
「うん。大丈夫。心の傷以外は問題無さそう」
「そうですか。それはよかった」
「えっ・・・」
「それでは行きましょうか」
「・・・」
自分にとってはとても大切なこと(?)をユキにスルーされて、余計に心の傷が深まったのか、ジト目を彼女のいるだろう方向へと向けるイブ。
ともあれ、目の前に、2人の待ち望んでいた明るい空間が広がっているようなので、イブはユキの言葉通り、大人しく進むことにした。
光の方へと進んで行くにつれて、穴の中の様子が徐々に明らかになってくる。
例えば、最初に飛び込んだ通気口の穴と違って、今いる場所が巨石の隙間に出来たような四角いトンネルではなくなっていたことだ。
石のような硬い材質でできた滑らかな壁面と、少々歪ではあったが円形の壁だったので、イブが長い距離を滑っても、ケガをしなかった、ということらしい。
雰囲気としては、腸内、と言ったところだろうか。
そして、真っ直ぐではなかったこと。
通気口に入った当初は、通路に併設されるようにして作られていたために真っ直ぐの穴だったが、ここでは少々曲がりくねっていて、5m先を見ることも出来なかった。
その様子を説明するなら・・・やはり生き物の腸内という言葉が最適だろう・・・。
最後に。
壁がどこか、しっとりとして、滑っていた。
やはり・・・
「・・・プロティー・ビクセンの体内?」
それしか考えられなかったのである。
「通気口がこんな所につながっていたなんて・・・」
難しい表情を浮かべながら、そんな呟きを口にするユキ。
「ん?なにか言った?」
「いいえ。・・・あ、もうすぐ、広い場所に出られそうです」
「え?あ、本当だ」
その光景を見たイブはラストスパートを掛けた。
・・・が、
「ヌルヌルで進みにくい・・・」
手足が滑って思うように進むことが出来なかった。
そんな彼女の様子に・・・どういうわけか、眉を顰めた怪訝な表情を浮かべるユキ。
それでもイブは少しずつ進み、遂には何やら壁が青く明滅する部屋へとたどり着いたのだった。
「よっし!ゴールっ!」
部屋へと出た瞬間、自分たちが追われていることも忘れて声を上げるイブ。
・・・まぁ、それが悪かった・・・というわけではないが、
「よっし!捕まえた!ロリっ子、○ったどぉぉぉーーー!!」
「?!」
穴から頭を出した瞬間、縁に立っていたために見えなかった男性に捕まってしまう。
しかもその男性は・・・
「ろ、ロリコン・・・」
「あ?ロリっ子からの褒め文句か?嬉しいぜ・・・」
イブが危険視していたロリコンだったのである。
「へ、変態!?」
「おうおう、酷い言われようだな。これでも元の世界では紳sゲフッ!!」
持ち上げていたイブのケリが鳩尾に入って悶えるロリコン。
だが、それほど強くなかったためか、
「くっそ・・・・・・最高だ・・・」
と言いながら復活して、来た穴へと逃げようとしていたイブの尻尾を捕まえる。
「きゃっ?!」
「フッフッフ・・・逃がさないぜ・・・」
イブの尻尾を引っ張って手繰り寄せようとするロリコン。
そして、足が滑って、思うように前に進めないイブ。
まさに絶体絶命であった。
・・・その時である。
ピキピキピキ・・・
イブが出てきた穴蔵を中心として、周囲が一瞬にして凍りつく。
「・・・ん?な、なんだ?!」
「・・・?!」
真っ暗な穴に向かって驚愕の視線を向けるロリコンとイブ。
そして穴から出てきたのは・・・
ヌッ・・・
「イブちゃんを離しなさい!」
・・・既に元の身長まで戻っていた、魔王シリウスだったのである。
前の話のタイトルのナンバリングを修正したのじゃ。
うむー、流石に大晦日だけあって、時間がないのじゃ。
掃除したり、蕎麦を食べたり、ルシア嬢を適当にあしらったり・・・?
・・・おっと、ルシア嬢がお風呂から出てきたようなので、替わりに入ってくるのじゃ。
それでは、よいお年を・・・なのじゃ!




