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14.19-27 強襲?27

 カタリナが匙を投げるほどの状況になっていたハイスピアを前に、ワルツは諦めなかった。ダメなことは分かっていても、できる限りのことやって、それでもやはりダメなら、その時は諦める。その瞬間までは、ハイスピアの生きる力を信じたい……。ワルツはそんなことを考えて治療を進めた。


 その一方。


 ハイスピアを穴の中に落としてしまった本人であるマリアンヌは、見るも無惨な姿になっていたハイスピアを前に、我を忘れかけていた。口の中はカラカラに乾き、全身が震え、焦点が定まらず、立っていることすらやっと。自身の魔法を完璧に制御出来ていたはずなのに、なぜよりにもよってハイスピアを巻き込んでしまうことになったのか……。そんな後悔と疑問が、マリアンヌの脳裏を真っ黒に埋め尽くしていく。


 そしてついに——、


   グラッ……


——彼女は立っていられなくなり、体勢を崩してしまった。


 そんな時、彼女の事を支える人物が現れる。彼女の真横に立っていたポテンティアだ。


『おっと、気分が優れないようですが、大丈夫ですか?マリアンヌさん』


 対するマリアンヌは、大粒の涙を零しながら、震える唇で、内心を吐露する。


「ハイスピア先生を殺してしまったのは……私ですわ……。私……いったいどうしたら……」


 大声を上げて泣けば、ハイスピアは元通りになるのだろうか。ルシアたちのようにありったけの魔力をハイスピアにぶつければ、彼女の事を救えるのだろうか……。そんな考えがマリアンヌの中で渦巻くが、答えはすべて、否。現状、彼女に出来る事は何も無かった。


 そんな彼女の言葉を静かに聞いていたポテンティアは、普段通りの柔らかな口調で、マリアンヌに問いかけた。


『マリアンヌさんは、どうしたいのですか?』


「もちろん、ハイスピア先生を助けたいですわ!でも……でも、私には出来ませんの……。人を傷付ける事しかできない、化け物のような私には……誰も救えない……」


 そんなマリアンヌの言葉に、ポテンティアはどういうわけか落胆したように肩を竦めた。


『そんなことはありませんよ。あなたは学院にいる多くの学生たち、教員たちの命を救ったではありませんか』


「でも!」


『えぇ、マリアンヌさんの気持ちは分かりますよ。僕もまた加害者の一人です。ですから——』


 そしてポテンティアは、その場の空気にそぐわない微笑みをマリアンヌに向けて、言う。


『あなたの憂いは僕が払拭しましょう』


「えっ……」


 マリアンヌが疑問の声を上げた後、ポテンティアが増える。別のポテンティアがもう一人、その場に現れたのだ。彼の分体であるマイクロマシンたちが、人の形を成したのだ。


 彼はワルツに話しかけた。


『ワルツ様。ハイスピア先生のことは、僕に任せていただけないでしょうか?』


 ワルツはハイスピアに対し、様々な治療を施して奮闘していた。しかし、生命活動を止めかけている今のハイスピアには、回復魔法が効きにくく、ワルツの考えているようには処置を進められなかったようだ。


「……貴方ならどうにか出来るって言うの?」


 ワルツは手を止めることなく問いかける。


『完全な元通りになるかは、ハイスピア先生の生命力次第ですが、今の状態なら、命を落とすという所まではいかないはず……いえ、いかせません』


「…………」


 ワルツは考え込んだ。ポテンティアが医療を囓っているという話は聞いたことがなかったからだ。しかも、彼は、回復魔法どころか、魔法自体が使えないのである。いったいどうやってハイスピアを救おうというのか……。


 しかし、考え込んでいても埒が明かないと思ったのか、ワルツは決断した。


「……分かったわ。任せる」


『承知しました』


 ワルツの許可を得たポテンティアは、ハイスピアの前に立って、そして彼女の胸に手を置いた。


 一方で、マリアンヌのことを支えていた別のポテンティアが、口を開く。


『マリアンヌさんは自分の事を化け物だと仰っていましたが、それは誤解です。マリアンヌさんは化け物なんかではありません。立派なレディーですよ』


 ポテンティアがそう口にした直後のことだった。ハイスピアの胸に手を置いていたポテンティアの身体の一部が解けて、ハイスピアの傷口から彼女の体内に溶け込み始めたのだ。


 その後の光景も異様だった。ハイスピアの血管という血管が黒く染まり始めたのである。その様子を例えるなら、今この瞬間にハイスピアが、人ならざるものに作り変えられているかのよう……。実際、ほぼ死亡状態のはずのハイスピアの身体が、不自然に——、


   ビクッ!


——と跳ね上がった。それも、何回も断続的に。


 その様子を前に、カタリナですら目を細める。マリアンヌに至っては「ひぃっ」と小さな悲鳴を上げた。


 そんな中で、ポテンティアは口調を変えること無く、マリアンヌに対して言った。


『本当の"化け物"というのは、人の形もしていなければ、人の心も持っていない、そんな存在なのですよ。例えば、僕みたいに、ね』


 と。


伏線が2つあって、その1つを回収したのじゃ。

1つは本章のどこかで、もう1つは……多分、2000話くらい前ではなかろうか?

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[良い点] バケモノ……G……カサカサ……カサカサカサカサカサカサ
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