14.19-19 強襲?19
「それにしても、お姉ちゃん、遅いなぁ……」
公都から自宅に転移して、そして地下工房に入ったきり、ワルツは工房から出てこなかった。ルシアたちに待つように言ってから、かれこれ15分。ワルツにしては長すぎる時間と言えた。一体何をしているのか……。
「見に行ってくるかの?」
「いやぁ……やめておいた方が良いんじゃないかなぁ?見たいのは山々だけどさ?」
「ふむ……ア嬢がそう言うのなら……ふむ……しかし、ちょっとかなり気になるのう……」
テレサとしては、地下の工房で、ワルツが何をしているのか興味があったようである。準備に時間が掛かるということは、何か大がかりなことをしているのは間違いないのだ。まぁ、たったの15分で出来る事など、たとえワルツだとしても限られているわけだが、普段では考えられないほど長い時間なのは確かだった。
しかし、ルシアが止めるので、テレサは諦める。その代わり、彼女は、今なお解決していない問題に取り組むことにしたようだ。
「……ところで、ベアよ」
未だ、某犬娘が、自分の二の腕をガシッと掴んで離さなかったのだ。
「お主、いつまでここにおるつもりなのじゃ?」
副音声は、さっさと帰れ、である。
そんな彼女の問いかけに、ベアトリクスからは直球が帰ってきた。
「そうですわね……余り長居をしますとカタリナ先生に怒られてしまいますし、仲間たちにも迷惑を掛けてしまいますから、そろそろお暇しますわね」
「そ、そうか……」ほっ
「……テレサを連れて」
「「…………?!」」
その瞬間、2名の狐娘の尻尾が、パンッ、と音が鳴りそうなほど急に膨れ上がる。どうやら、ベアトリクスの発言は、2人の期待とは真逆だったらしい。
「そ、そ、それは……」あたふた
「…………」げっそり
2人とも、ミッドエデンの本国に戻れと言われれば、戻らざるを得ない立場にある人物である。ミッドエデンの最高戦力と、旧ミッドエデン王国の王族の生き残り(?)なのだから当然だ。
ただ、正確な意味でミッドエデンの人間ではないベアトリクスに、その指示を出すことは出来ない。それでも、ルシアたちにとっては、ビクリとしてしまう内容だったらしい。……尤も、ビクリとした理由はそれだけとは限らないが。
「あら?2人とも、ミッドエデンに戻るのは嫌ですの?」
「うぅ゛……あぁ゛……」(テレサの呻き声)
「……ごめんね。ベアちゃん。私たち、まだこっちでやりたいことがあるんだ」
ルシアはベアトリクスに向かって真っ直ぐに答えた。その間、テレサは、普段のゲッソリを越えて、筆舌に尽くしがたい酷い反応を見せていたようだが、とりあえず彼女の事は置いておこう。
「そのルシアちゃんのやりたいことの内容に、テレサは必要?」
「……必要!」
ルシアは少し悩んでから返答した。彼女が何を悩んだのかは不明だが、即答は出来なかったらしい。
そんな彼女の反応を見たベアトリクスは、次にテレサに矛先を向ける。
「そう……でもテレサはどうなのですの?」
テレサは先ほどから、ゾンビのような奇声(?)を口にしながら、青い表情を浮かべているのである。是も非も口にしていない状態だ。何かを悩んでいるのは明白だったようだが、何を悩んでいるのか、ルシアにもベアトリクスにも分からない。
もしや一緒にミッドエデンへと帰りたいのではないか……。内心でそんな望みを抱きながらベアトリクスはテレサに問いかけたものの、テレサから帰ってきたものは虚ろな表情だった。
そして彼女は返答を口にするのだが……。その返答が向けられた対象は、ベアトリクスだけに限った者ではなかったようだ。
「……前から言おうと思っておったのじゃが……2人とも、妾の事を人間扱いしておらぬじゃろ?」げっそり
「「えっ?」」
「えっ……何その反応……」
さも当然と言わんばかりの反応を見せる2人を前に、テレサのゲッソリフェイスのレベルが更に上がりそうになった——まさにそんな時。
ガタンッ!
「待たせたわね!」
ようやくワルツが地下工房から戻ってきた。
光狐「まぁ、人間ではないね」
天敵「人間でないから、どうしたというのですの?」
機械狐「…………」




