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14.19-14 強襲?14

 その時、不幸が起こる。いや、不幸自体はいつだって常に起こり続けていると言えるのかも知れない。そもそも、エヌレジア王国による学院への侵攻自体が不幸なことなのだ。今回の場合、特に、学院の戦力を把握し切れていなかったエヌレジア王国側が、不幸だった。


 それはそれとして、更なる不幸が彼らを襲う。彼らは確かに白旗を上げたのだが、夜で暗く、しかも空にはポテンティアが浮かんでいたので、月の光が遮られ、白い旗が誰にも見えなかったのだ。


 撤退の合図である太鼓の音も聞こえない。太鼓は、一部の教師が放った爆発性の矢により、文字通り木っ端微塵に吹き飛んでいたからだ。


 つまり、今のエヌレジア王国には、情報伝達の方法が無かった。正確には、伝言ゲームの要領で、指令を伝える事は原理的に可能だったったが、恐怖と絶望と興奮が入り乱れる戦場という名の()()()の中でかき混ぜられていた兵士たちには、正しい指令を伝える事は出来ず……。エヌレジア王国の指令系統は、完全に崩壊していたと言えたのだ。


 結果、ポテンティアが呼びかけて、停戦に応じたのは司令部のみ。その他の兵士たちは、白旗を上げる司令部に気付かず、継戦するか右往左往するか……。見通しの悪い森の中では、司令部の者たちのように、火の海と化した森の姿が見えていた者は多くなく、兵士たちのことを混乱が包み込んでいたようである。


 その姿を空から眺めながら、ポテンティアとマリアンヌは悩ましげに考え込む。


『止まりませんね。戦い。一部の兵士たちは、白旗を振っているようですが、指令が末端まで伝わっていないようです。森の中で兵士たちを展開しているわけですから、仕方がないのかも知れません』


「大木もそのままですもの。余程、森の中での戦いなれた方々でなければ、自分が今どこにいるのかすら分からなくなっているのではなくって?」


 そんな2人の言葉通り、森の中では迷子になっていると思しき者たちが少なからずいた。大量の大木が生える森の中では見通しが悪く、展開した場所によっては、学院の姿も司令部の姿も見ることが出来なかったのだ。その上、今は、夜の帳が下りた後。余計に迷子になりやすくなっていた。


『さて、どうしたものか……』


 帰り道はこちら、という看板でもマイクロマシンで作ろうかとポテンティアは考えていたようである。その上でキラキラと光っていれば、よく見えるに違いない。まぁ、マイクロマシンに搭載された"光る機能"と言えば、レーザーを発射する機能くらいなものなので、近くで見れば、大惨事に繋がるのは確実だが。


 兵士たちを傷付けずに彼らに帰って貰う方法をポテンティアが考えている間、マリアンヌも似たようなことを考えていたらしく、彼女もこんな提案を口にする。ポテンティアには出来ない対処方法だ。


「匂いで操って、お帰り頂きましょうか?」


『あれほどの数の兵士たちを、匂いで操れるのですか?』


「えぇ、できますわ?美味しそうな匂いがしてくるお店があったら、思わずそちらの方に立ち寄りたくなりますわよね?それと同じ原理ですわ?」


『あぁ、そうなのですね(すみません、マリアンヌさん。僕……美味しそうな匂いというものが理解出来ないので分かりません)』


 と、思いつつも、ポテンティアは余計な事を言わずに相づちを打つ。今は水を差すときではないと、空気を読んだらしい。そう彼は、空気を読める男(?)なのだ。


『では、お任せしてもよろしいでしょうか?』


「えぇ、良いですわよ?表に出る方法はあって?」


『えぇ、少々お待ちください』


   ガコンッ……


 そんな大きな音が聞こえて、空中戦艦が変形を始める。姉妹艦のエネルギアやストレンジアには無い機能だ。


『っ?!』


「おっと、お手を拝借」


 揺れる艦橋で、ポテンティアはマリアンヌの手を取った。たとえマリアンヌがその場で倒れたとしても、船体自体がポテンティアで出来ているので、彼女が怪我を負うことは絶対に無いが、それでも反射的に手を差し伸べてしまったようである。


 対するマリアンヌは、ポテンティアの何気ないその行動に顔を赤くしながらも、どうにか体勢を立て直す。皇女をしていた際に、紳士たちに囲まれて、彼らの振る舞いになれていたはずの彼女からしても、ポテンティアの何気ない行動には何か思うことがあったらしい。


 その内に、2人の間を強い風が流れていく。艦橋が外に露出して、風が吹き込んできたのだ。


 空中戦艦ポテンティアはマイクロマシンの集合体。ゆえに。その形を変えることで、艦橋を表に出すことが出来るのである。具体的には、船体下部から外装の一部がエレベーターのように下降することで、艦橋だけを外に露出させた。


「ハイテクノロジーですわね……」


『そうですか?お褒めに与り光栄です。では、どうぞ、マリアンヌさん。ここから先はあなただけのステージ。お任せいたします』


「えぇ……。なんだか、そう言われると、緊張しますわね。これは失敗できませんわ」


 マリアンヌ——もとい魔女マリアンヌは、そんな失敗フラグを立てながら、魔法を使って空中に匂いの渦を作り出した。その中心地は、ワルツたちが作った"学院駅"。最初に兵士たちが学院へとやってきた場所だった。


ポテに性別は無いゆえ、彼(?)なのじゃ。たまに彼女(?)になることもあるのじゃ。

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