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14.19-13 強襲?13

『みなさま、こんばんわ。今日は空中戦艦のポテンティアです』


 と、地上に向かって呼びかけながら、自分の正体をシレッと口にするポテンティア。とはいえ、彼は、それで自分の正体がバレるとは思っていなかった。所謂一般常識において、人の姿をしたポテンティアが、イコールそのまま空中戦艦だと思う人間は誰もいないことを知っていたからだ。


 おそらく皆、空中戦艦の"中に乗っている"ポテンティアだと認識しているのだろうと考えつつ、彼は地上に向かって呼びかけた。


『いきなりで不躾ですが、みなさま、すぐに戦いを停止していただけないでしょうか?ここは、学業を身につけるための学び舎です。戦う事に特化した生徒たちばかりが集まっているわけではありませんから、この場所を攻撃するというのは、普通の町を無差別に攻撃するようなものです。もしもこのまま継戦するというのでしたら——』


 ポテンティアはそう口にすると——、


   ウィィィィン……ガコンッ


   ズドォォォォン!!


——直径1000mmを越える副砲の一発を、誰もいないだろう森の中へと発射した。その直後、着弾した場所を中心に森が蒸発する。それも、直径10kmほどの範囲が。


 空中戦艦ポテンティアの組成は、ほぼマイクロマシンである。普段は副砲の弾体としてタングステンカーバイドの塊か、超耐熱オリハルコン合金の弾体を保有しているのだが、今日は急いで船体を構築したこともあり、弾体に質量弾を使い事が出来なかった。


 では何を発射したのかというと、地上から少量持ってきた重金属の粉である。その粉に超高電圧を掛けながら船内でグルグルと加速させ、副砲から発射したのである。要するに、荷電粒子砲だ。


 結果、亜光速まで加速された重粒子が地面に突き刺さった瞬間、その粒子が地上の粒子とぶつかり、核分裂を引き起こし、小さな核爆発を引き起こしたのである。その威力は絶大で、森が10kmに渡って蒸発した、というわけだ。


 威嚇のつもりで荷電粒子砲を放ったポテンティアは、スチールウールのごとく炎が広がっていく森の光景を見下ろしながら、船内で頭を抱えた。


『ああああ!やってしまいました!植林しなきゃ……』


 どうやら彼は、植林すれば済む話だと思っているらしい。森には動物たちもいたはずだが、そこは考えないことにしたのだろう。


 彼が見ていたものと同じ光景を眺めていたマリアンヌは、しかしポテンティアとはまったく異なる反応を見せていた。


「すばらしい……すばらしいですわ!」キラキラ


『ええっ……』


「これほどの力があれば、エヌレジア王国の兵士たちを退けることも容易なはずですもの!」


『あぁ、彼らって、エヌレジアという国から来たのですね』


「掲げている旗を見れば一目瞭然ですわ?」


『なるほど。僕ももっと勉強が必要ですねー』


 マリアンヌの発言にポテンティアは相づちを打ちつつも、彼はマリアンヌの性格を少しだけ疑っていた。……自分の近くにいる人物は、皆、力に飢えている人々ばかり。実はマリアンヌもその1人で、彼女場合は破壊的衝動にも飢えているのではないか、と。なお、実際の所は不明である。


 一方、地面にいた兵士たちにとっては、冗談にも洒落にもならない話だった。自分たちに対して、ポテンティアの攻撃の矛先が向けられるのではないかと戦々恐々としていたためだ。


 しかし、彼らの上層部は別のことを考えていたようだ。彼らは分かっていたのだ。少なくとも、ポテンティアと名乗る空の存在が、いまここで自分たちに向かって攻撃することはない、と。なぜなら、敵味方が入り乱れている現状で、地上を攻撃しようものなら、守るべき学院の人々どころか、学院自体を吹き飛ばすことになるからだ。


 では、彼ら上層部の者たちは、何を危惧していたのかというと、ポテンティアが長距離攻撃可能な大量破壊兵器を搭載していることに関係する。下手な選択肢を選べば、自分たちの国、首都、町などを無差別に攻撃される恐れがあると、彼らは考えたのだ。


 たった一発で、周囲の森が炎の壁になったかのごとく焼き払われたのだ。その力が自国に向けられればどうなるのか……。確実な滅びが待ち構えているのは明白。自分たちが吹き飛ばされるならまだしも、帰るべき、守るべき国が吹き飛ばされる事だけは絶対に避けなければならなかったのだ。


 ゆえに、上層部の者たちの反応は早かった。即座に白旗を上げたのである。


 奇しくも戦場は物量で押していたものの劣勢の状態。引き際としてはちょうど良いタイミングだと言えた。


担任教師「森がーーーーっ!!」

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