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6中-21 迷宮の外で4

あまりに眠すぎて(つたな)かった前の話を少々(?)修正したのじゃ。

ユキの一人称を修正。

「・・・どうもこの国は、顔が似ている者が多いようだ・・・」


「ん?何の話だ?」


「・・・いや、なんでもない・・・」


「そうか・・・・・・っていうか、お前、今、危険な視線をこの子に向けてたろ!マジ、最悪だな!」


「・・・」


・・・どうにもならない憤りを抑えるようにして、プルプルと震える握りこぶしを作り、眉間に皴を寄せるカペラ。


「・・・先に戻るぞ?」


「おまっ・・・俺をここにおいていく気か?!」


そんなやり取りをした後に、特に何をするでもなくどこかへと去っていた男たちに対して、


「(どうしてここにカペラが・・・?)」


頭からシーツを被って身体を隠していたユキは、怪訝な表情を浮かべた。


一方で。


「・・・さてと」


ベッドの影に隠れて、男たちを睨んでいたイブが徐ろに立ち上がり、ユキに対して口を開く。


「一緒にだっそー(脱走)しよ?」


「・・・え?」


「なんか、このままだと、あのロリコンって名前の人に、なんかされそうな気がするんだよねー。私のことを見るとき、なんかイヤラシイ視線を向けてくるし・・・」


そう言いながら、もう一枚あったシーツを、まるでマントのようにして首に固定して、身体を隠そうとするイブ。

そんな彼女に、


「・・・えっと、イブちゃん?こういう時は・・・」


そう言いながら、シーツの端の方を破いて紐状のものを作り、残ったシーツの真ん中、そしてそこから少しずれた場所に2箇所、穴を開けて、頭と腕を通すユキ。


「で、この紐でお腹の部分を縛れば・・・」


「おぉ・・・服みたい・・・」


簡易的なワンピース・・・のようなものが出来上がった。


それから、イブも器用な手捌きで同じ服を作った後、表には見えないベッドの影で、2人の作戦会議が始まる。


「でさー?この首輪が取れないと、魔法が使えないみたいなんだよね・・・」


と言いながら、自分の首に手をやるイブ。


「・・・あ・・・ボクにもついてる・・・。これって、魔力拘束具?」


そう言いながら、手のひらに魔力を集中しようとするユキ。

だが、そもそも魔力が底を付いているためか、チョロっとモヤのようなものが出ただけで、魔法は発現しなかった。


「ふーん・・・君、魔力が強いんだね。私なんて、全く漏れてこないのに・・・」


と言いながら、単に手を開いたり閉じたりしているだけのイブ。

そんな魔法が使えない様子の彼女に対して、ユキは問いかけた。


「・・・それで、どうやって外に出るつもりだったのですか?」


「それはもちろん、牢屋をぶっ壊して!」


「はあ・・・」


満面の笑みを浮かべながら少々乱暴な言葉を口にするイブに対して、女の子が口にする言葉ではないですね・・・、と困った表情を浮かべるユキ。


「ちなみにどうやって?」


「んー、この首輪を外して魔法が使えるようにしてから、牢屋の壁に小さな穴を開けて、水魔法で水作ってから流し込んで、蓋して、火魔法で加熱して、爆発させる?・・・あとは・・・流石に檻の金属は大きくて温まりにくいし、熱が逃げやすくて火魔法じゃ溶かせないから、小さな部品で作られてる鍵の中を溶かすっていう手もあるかもねー。それと、檻の中で作業するときは、あのカペラとか言うムッツリな奴が転移してこないように工夫をしなきゃダメかも。天井の高さを下げて、転移してきたら頭を埋まるようにするとか・・・」


「・・・」


次々と脱出案を口にするイブを前に、ユキは、よくそんなに案が出て来ますね、と感心した。

ただ、何れの方法にしても、共通して言えることがある。


「でも、結局魔法が使えないと、なんにもできないんだけどねー」


「・・・ですよね・・・」


そう、首輪を外さないかぎり、魔法は使えないのである。


「だから、魔法を使わずにだっそーしたいなーって。それに、魔法を使うと、あのムッツリな奴とロリコンって人にバレるかもだし・・・・・・でもー・・・」


「でも・・・?」


「そもそも、服も荷物も全部取られて、なんにも持ってないんだよね・・・」


ずーん・・・


おそらく、イブが何度も脱走を図っている内に、彼女に一切の持ち物を持たせるのは危険だと判断されて、身ぐるみを剥がされた、ということなのだろう。


そんな凹んでいる様子のイブに対して苦笑を浮かべながら、ユキは口を開く。


「・・・具体的に、どんな物があればいいのですか?」


「どんなもの、かぁ・・・。とりあえず、そこの鍵を開けられるものだから、牢屋の鍵・・・とまでは言わないけど、針金みたいなのが欲しいかも」


「・・・そうですか。その後は?」


そう言いながら両手を合わせて、何かを()ねる手つきするユキ。


「んー、ここがどんな建物かは、もう何回かだっそーしてて分かってるんだけど、人が多すぎて見つかっちゃうんだよね・・・。だから、この部屋を出たところにある、通気口?みたいな所に逃げ込もうかなーって」


「通気口ですか・・・難しい言葉を知ってるんですね?」


「うん!とーちゃんに色々教えてもらったから!」


「そうですか・・・」


そう言った辺りで、ユキは徐ろに自分の服(シーツ)の一部を破ると、何やら手の中にあった物に巻きつける素振りを見せた。


「・・・?何してるの?」


「これですか?・・・・・・はい、出来ました。どうでしょう?これ、使えそうですか?」


そういってユキがイブに手渡したのは・・・


「・・・クリスタルの・・・鍵?」


青く透き通った宝石のような、すこし冷たい鍵だった。


「クリスタル・・・だったらかっこよかったんですけど、これは氷です。魔法が使えないので、作るのに時間がかかりましたがこれくらいなら・・・」


ユキにも魔法は使えなかったが、雪女の性質(?)である吸熱の効果は健在だったらしく、空気中の水分を手のひらの上で凍らせて、粘土のように纏め上げ、さらに温度を下げて固めた、ということらしい。

手で持つ部分に破ったシーツが巻きつけてあるのは・・・恐らく、イブが持った時に凍傷にならないようにするための配慮なのだろう。


「あ、ボクの手から離れると、すぐに溶け始めるので、もしも使うなら急いでくださいね?」


「えっ・・・あ、うん」


まるで宝石のように綺麗だったためか、一瞬見入ってしまうイブだったが、すぐに気を取り直して、鍵のサイズと形状を確認する。


「・・・えっと?・・・多分、少し削れば使えると思う。ありがと!」


そんな氷の鍵(溝なし)を見て、


「(んー、やっぱりこの子・・・どっかで見たことがある気がする・・・。っていうか、すっごい綺麗な魔法・・・)」


と、イブは頭を(かし)げたが、結局思い出すことは叶わなかった。


カチャカチャカチャ・・・


「こんな鍵を開けるなんて、私にとっては朝飯まーえー♪」


カキン・・・


「・・・ん?もう開いたんですか?」


「・・・折れちゃった・・・」


ずーん・・・


・・・こうして前途多難なユキとイブの脱出劇は始まったのである(?)。




・・・カチン


「(・・・開いたよ?)」


「(よかったぁ・・・)」


鍵を作ること17回目。

氷では開かないのではないかとユキが諦めた頃、ようやく牢屋の鍵が外れた。


「(じゃぁ、私が先行するから、合図したら、静かに走ってきて!)」


「(はい。気をつけてください)」


牢屋を管理しているだろう看守に気づかれないように、小声で会話をするイブとユキ。


それからイブは、牢屋の扉を音が鳴らないように大胆かつ速やかに開け、一気に飛び出した。


シュタッ・・・


「(・・・異常なし。ここまで来て!)」


「(はいっ)」


シュ・・・


「(あれ・・・今、音が聞こえなかったような・・・)」


「(え?気のせいではないですか?)」


「(んー、ま、いっか)」


シュタタタタ・・・


まるで岩盤をくりぬいて作ったような頑丈な牢獄の通路の中を、忍者のようにして駆け抜けるイブ。


「(・・・うん、誰もいない)」


彼女は手を上げて、ユキを呼ぼうとした。

そして、後ろを振り向くと、


「(・・・?どうしたんですか?)」


「う、うわぁっ・・・・・・!!」


まったく足音を立てずにユキが付いて来ていたために、小さく声を上げて驚くイブ。


「(しーっ・・・)」


「(びっくりしたー・・・)」


「(ごめんなさい。後ろから人が来てたみたいだったから・・・)」


「(えっ・・・)」


カツンカツンカツン・・・


ユキの言葉通り、先程まで2人がいた辺りを、誰かが歩く音が聞こえてくる。


「(・・・)」

「(・・・)」


その音に、息を潜める2人。


・・・


しばらくすると、足音はそのまま彼女たちから遠ざかっていった。

どうやら、彼女たちの脱走に気付いて、誰かが様子を見に来た・・・というわけではないらしい。


「(ごめん・・・後ろまで見てなかった・・・)」


「(大丈夫です。ボクもこういうの慣れてますから)」


「(えっ・・・)」


自分よりも小さいユキの一言に固まるイブ。

なお、ユキが普段から逃げている相手は、他のユキたちである。


「(そっかぁ・・・君も、苦労してるんだね・・・)」


と、どこか同情する視線をユキに向けるイブ。


「(え?あ、はい・・・そうかもしれませんね・・・)」


まさか、仕事をサボって抜けだしているとも言えず、ユキは苦笑を浮かべる他無かった・・・。




それから、まるでお約束のように、待機所の中で転寝(うたたね)をしている看守の前を通過し、石の階段を昇って、牢屋があった部屋から外へと出る2人。


その先にあった廊下は、先ほどの牢屋の部屋と同じように、巨大な石を切り抜いたり、重ねたりして作ったような、古代の建物といった雰囲気のデザインだった。

例えるなら、石造りのピラミッドの内部の様子に近いだろうか。


そんな廊下に差し掛かると、イブは近くに誰も居ないことを確認しながら身体を乗り出し、そこから少し離れた場所にある、四角い穴に向かって指をさしながら言った。


「(あれが通気口ね。多分、あそこから外に通じてると思うんだけど・・・)」


そんな通気口は、現代世界のようにダクトが廊下の天井を這っているわけではなく、まるで石の隙間に出来たちょっとした空間、といった雰囲気である。


「(多分、私たちくらいの大きさなら通れると思うんだよねー・・・。どうする?行く?)」


ユキに対して、念の為に最終確認を取るイブ。

だが・・・


「(・・・?どうしたの?)」


どういうわけか、ユキからの返事は無かった。

もちろん、誰かに捕まっていたり、どこかで(はぐ)れたり・・・というわけではない。

今でも、イブの真後ろにいる。


では、何故、ユキは返事を返さなかったのか。

・・・それは、


「・・・プロティー・・・ビクセン・・・?」


彼女の眼に写った廊下の様子が、よく見覚えのある場所だったので、思わず立ち尽くしていたためである・・・。

・・・6中が終わらぬ・・・。

というか、前とか中とか後(とか後後(とか後後後))で分けるのが段々面倒になってきたのじゃ。

まぁ、別にいいんじゃがのう。


さてと、じゃ。

次話の準備を始めるかのう・・・。

あと、1話・・・・・・では終わらぬじゃろうな・・・。

いつになったら、妾の出番がやって来るんじゃろうか・・・。


カサカサ・・・


ぬ・・・?

今、何かいたような・・・気のせいじゃろうか・・・。

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