14.19-01 強襲?1
ワルツたちが自宅に転移しても、特に変わり映えは無かった。当然だ。彼女たちの転移先は、自宅地下の工房内。絶対に人が立ち入らない場所だからだ。そうでなければ、安全機能が取り払われたワルツの転移魔法陣に、誰を巻き込んでしまうかもしれないのである。人のいない場所を狙って転移するために自宅地下の工房内を利用するというのは、ワルツたちにとって都合が良かったのだ。
「到着ー」
「やっぱり、転移魔法って良いね」
「ア嬢は普段から転移魔法を使って……あっ」
「何なぁ?」じとぉ
「……いや、なんでもないのじゃ」
「どうかされたのですか?」
「マリアンヌ殿!話を掘り起こしてはならぬのじゃ!」
『はははは……』
転移後、そんなやり取りをしながら、一行は階段を登って、自宅内へと戻った。
そして、あることに気付く。最初に気付いたのは、ポテンティアだ。
『お゛わ゛っ?!』びくぅ
「「「えっ?」」」
「何よ?ポテンティア。急に奇声なんか上げて……」
『も、申し訳ございません、ワルツ様!レストフェン大公国を離れている間、森の警備が手薄になっていたために、侵入者を許してしまっていたようです!』
「「「侵入者?」」」
『武装した者たちが2万人ほど、学院を取り囲むように、布陣しております』
「2万人って……」
ワルツたちがレストフェン大公国を離れていたのは、たったの半日ほど。その間に、学院周辺に2万人もの人々が移動してくるなど、一般常識的に考えてありえない事だった。学院に繋がる街道はそれほど太くはない2本の道だけ。しかも、森に入ってから学院に辿り着くまでは1日掛かるのである。そこを半日で2万人が移動するなど、どこぞのイベント会場に向かう日本人の集団ですら不可能なことだ。
「そんなことってありえ————」
歩いての移動はあり得ない。転移魔法を使っても、果たして可能だろうか……。などと考えるワルツだったものの、彼女にはひとつ思い当たる方法があったようだ。
「いえ、そんなことって……」
考え込むワルツに、ルシアが問いかける。
「お姉ちゃん、何か思い付いたの?みんな、転移魔法で跳んできたんじゃないのかなぁ?」
「いや……んー……どうかしら……」
ワルツの表情は険しい。険しくならざるを得ない理由が彼女にはあったらしい。
彼女はいったい何を悩んでいるというのか……。その場にいた者たちが、思わず顔を見合わせていると、ワルツは自身の考えを口にした。
「えっとね……森の中は、手薄とは言っても、ポテンティアの集団が警備している訳よね?だから、歩いて森の中に入ってくるっていうのは、多分不可能だと思うのよ」
「まぁ、そうだね」
『そう……だと思いたいです』
「そうじゃろうのう」
「そうなのですの?」
「森の端から学院まで距離もあるから、徒歩や馬で来たってことは無いと思うのよ。ということは、次に、転移魔法を使ってやってきた可能性があるわけなんだけど……世の中の転移魔法使いが皆で力を合わせたとしても、2万人も転移させるなんて無理だと思うのよ。少なくとも、現実的ではないわ?転移魔法使いはそんなにいるわけじゃないと思うし……」
「そうなのかなぁ?」
「ア嬢みたいなのがたくさんおれば、可能かも知れぬが……それはじごk……いや何でもないのじゃ」
『そうですね。それはちょっと考えにくいですね』
「まさか、ワルツ様の転移魔法陣を……」
「いえ、転移魔法陣を使われた可能性はゼロよ?使える人間を判別する機能が入っているから、誰でも使えるわけじゃないし……でもね……」
ワルツは、すでに答えを見つけていたようだ。なぜ2万人もの人々が短時間で学院周辺へとやってきていたのか。その理由を。
「魔法を使ったり、馬車を使ったりしなくても、短時間で遠方から人をたくさん移動させられる方法があるのよ。つい最近、私たちが、学院の近くに作ったやつを使えば、ね」
ワルツがそう口にすると、ルシア、テレサ、ポテンティア、そしてマリアンヌの4人は、少し考え込んだ後で、ワルツが考えていた方法に思い至った。
「「「『鉄道!』」」」
「えぇ……鉄道よ……。公都で何かがあって、鉄道が乗っ取られたんだわ?きっと」
大木を大量に輸送するため、ワルツたちは帝都から学院近くまで、地下鉄を敷設したのである。それを誰かに悪用された可能性は否定できなかった——いやそれ以外に2万人の人々を短時間で移動させる方法など、彼女たちには思い付けなかった。
議長狐「エネちゃんやポテちゃんやストレンジアを使えば、空中から輸送することは可能ですね〜」
魔神姉「ドラゴンたちで輸送隊を結成すれば、大した問題ではありません」
夜狐妹「金の力!」




