14.18-32 国家運営?32
「……帝都全域に回復魔法が落ちてきたように見えたのじゃが、妾の気のせいかの?それも、かなり凶悪なやつが。老若男女問わず、無差別的に押しつぶす"いつものやつ"だったような気がするのじゃが?」
「否定はしないけれど、大半の人たちは痛みを感じていないはずだよ?中心にいたコルちゃんたちは大変かも知れないけれど、距離が離れていれば、普通の回復魔法と同じだから、大丈夫だよ。……たぶん」
コルテックスを取り囲んでいた人々は、彼女ごと、ルシアの回復魔法によって押しつぶされていた。もちろん、怪我人はいない。ルシアが使った魔法はそういう魔法だからだ。
「さっき、囲まれた時にも、最初から同じ魔法を使っておれば良かったのではなかろうか?」
「流石に、無害な人たちも全員潰すのは気が引けるでしょ?」
「……今の魔法で潰された帝都民たちは良いのかの?」
と、テレサは問いかけるが、魔法を使ったルシア本人は心配していないらしい。
「だったら、探してきたら?巻き込まれた無関係な帝都の人たちをさ?」
「……そこまで言うのなら、信じるのじゃ」
「もしかして、私の事、疑ってる?」
「だってのう……」ちらっ
テレサは真新しいシティーホールの屋上の縁に立って、地面を見下ろした。そこはコルテックスたちがいたところだが、今では悲惨な光景が広がっていたようである。簡単にいえば、潰れたカエルのような人々が地面を覆い尽くしていた、と言えば良いだろうか。もちろん、コルテックスも含めて、だ。
「え、えっと……ごめん!コルちゃん!」
流石のルシアも、自身の魔法にコルテックスが耐えられないとは思わなかったらしい。これまでテレサを使って実験をしていたので、コルテックスなら耐えられるだろうと思い込んでいたのだ。テレサからすれば、まったくもって迷惑な話である。
とはいえ、コルテックスもルシアの魔法に耐えられなかった訳ではなかったらしい。コルテックスは地べたに縫い付けられたまま、親指を立てることで返答をする。
「一応、生きてはいるみたいだね。良かった!」
「良かった!じゃないのじゃ!」
ルシアは、いったい何てことをしてくれるのか……。潰れて返答できないコルテックスの代わりに、テレサがルシアに説教の一つでも言ってやろうかと考えていると、一部始終を見ていたワルツが近付いてくる。
その様子を見たテレサは、一歩引いた。ワルツが自分に変わって説教をするのだろうと考えたのだ。
だが実際には——、
「ダメよー?ルシア。もっとピンポイントで攻撃しないと」
——どうやらワルツには、説教らしい説教をするつもりは無いようだ。
「はーい」
「…………」
「どうしたのテレサちゃん」
「……いや。何でもないのじゃ」げっそり
テレサは諦めたような表情を浮かべながら、再び地面を見下ろした。そんな彼女の表情は、彼女の知人たちから見ると普段通りの表情のように見えていたが、当のテレサは、コルテックスの安否や、ルシアの行動がこの先エスカレートしていかないかなど、悩ましいことが山ほどあったゆえの表情だったようである。むしろ、普段から悩ましいことが山のようにあるからこそ、常にゲッソリとした表情を浮かべている、と言うべきか。
そんなこんなで、ワルツたちは、帝都観光を満喫していた(?)訳だが、その場にいた4人の中で、テレサのように複雑そうな表情を見せていた者が、彼女の他にもう一人いた。アステリアだ。
「こんなことになってしまったのも、元は私のせい……」
帝都内にエンドプラントを生やしたがために、帝都民たちは武器を持つことになり……。結果として、帝都民たちは、コルテックスに牙を剥いたのである。そののきっかけを作ってしまったことに、ステリアは責任を感じていたらしい。
そんなアステリアの暗い表情に、同じく暗い表情(?)を浮かべていたテレサが気付く。彼女はさりげなくルシアの横から離れると、左右を見渡して誰も妨害する者がいないことを確認してから、アステリアへと近づき、彼女へと声を掛けた。




