14.18-29 国家運営?29
「ロープだけじゃ無理なんじゃないかなぁ……」
1本目のエンドプラントの真横に、2本目のエンドプラントが生えてきた光景を眺めつつ、ルシアは零した。そんな彼女から人々の絶望的な表情は見えなかったが、彼らから染み出す気配は感じ取れていて、どうにかしてあげたいと思えていたようである。
「でも、助けるっていうのは最終手段にした方が良いと思うのよ」
ワルツも、助ける事自体は吝かではなかったようだが、対処は帝都民たちだけでやって貰いたいというのが基本的な考えだった。もしも自分たちがいなくなったときに、エンドプラントが生えてきた場合、対処は帝都民たちだけでやらなければならないのだから、当然と言えよう。
「どうしよっか?」
「そうねぇ……」
ルシアとワルツは考えた。その間、エンドプラントを生やした本人であるアステリアは、どこか申し訳なさそうに、しょんぼりとして俯いている様子だ。テレサは——まぁ、彼女の事は置いておこう。普段通りゲッソリフェイスである。
そんな中、ポテンティアの分体の1人(?)が、ワルツたちの足下で提案する。
『ワルツ様、ルシアちゃん。市民たちに刃物など武器を返還するというのは如何でしょうか?』
「なるほど。ロープでダメなら、鋸とか斧とか、刃物を使わせれば良いって事ね?」
『えぇ。いずれにしても、先ほどのコルテックス様?の演説にもあった通り、彼らの経済活動の制限を徐々に解除していく予定ですから、武器を返還することは必要だと思うのです』
「そうね。それで行きましょう」
他にアイディアも無かったのか、ワルツはポテンティアの提案を取り入れることにしたようである。ルシアなど他のメンバーも異論は無い様子だ。
◇
結果、ポテンティアは、分体たちを経由して、エンドプラントに対処している帝都民たちの近くにいる別の分体へと情報伝達を行う。
『僕!ワルツ様からの伝令です!』
『ほう?ワルツ様からの伝令ですか。何と仰っていたのですか?』
『市民たちに対し、武器の返還指示が下りました』
『……はい?』
『詳細は僕にも分かりません。エンドプラントを伐るために、とりあえず返せとだけ伝わってきました』
『返すって言ったって……誰が何を持っていたのか記録してないですから、返しようがないですよ』
ポテンティアの分体は悩んだ。離れた場所にいる彼らの意識は繋がっている訳ではないので、別のポテンティアが何を考えてワルツと会話をしたのか、真意が分からなかったのだ。
しかし、自分の性格は理解していたので、ポテンティアは適当に解釈する。
『元の武器を返すことはできないので、新しく作って供給しましょう』
『それしか無いですね』
そう決めたポテンティアたちの行動は早い。その場の地面を削り取り、鉄分や炭素など、鋼鉄を作り出すために必要な成分だけを抽出して、混合させ——、
ニュニュニュニュ……
——と、積層型の3Dプリンタで造形することとまったく同じ原理で、武器の類いを大量に生産し始めた。それも、エンドプラントに対処していた市民たちの目の前で。
「「「んなっ?!」」」
いったい何が起こっているのか……。地面から斧や鋸、それに剣などの武器が生えてきた光景を目の当たりにした市民たちは、唖然として固まった。もはや、唖然と言う言葉以外に、今の彼らの表情を表現する言葉が見つからないほどの唖然だ。
それがどのくらい続いたのか……。しばらく経ってから、ようやく我を取り戻した市民の一人が、泣きそうな表情を見せながら、斧を手に取った。
「こ、これでようやく仕事が出来る……!」
別の市民も鋸を手に取る。
「おらもこれで働けるんだな……」
別の市民、もとい料理人も、剣を持って嬉しそうに笑みを浮かべた。
「これで、料理が出来る!」
「いや、剣で料理をするのかよ……」
「たくさん武器が生えてきたんだから、包丁探せよ。包丁。1本くらいあるだろ……」
といったように、皆、嬉しそうな様子で、武器になり得る道具を手にしていった。そして、再びエンドプラントへと向かい合う。
一時は絶望に瀕した帝都民たちの表情に、今や暗い色は無い。皆の表情には、ただひたすらの明るさが戻ってきたようだった。




