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14.18-27 国家運営?27

「確かに、この世界の植物の図鑑なんて、ゆっくり眺めた事なんて無いけれど……」


 自分で見て触って描いた方が確実なので、図鑑などじっくり眺めたことは無い……。ワルツは今になって後悔した。やろうと思えば、ミッドエデンの王都や学院の図書館にある植物の図鑑を眺めて、その中身をすべて()()することは可能なのである。それをしていれば、銀色の植物についてすぐに判別が付いたはずだったからだ。


 なぜ図鑑を見なかったのか……。そんな事を考えつつ、言い訳も考える。


「(でも、マグネアたちのことを月に連れていったとき、誰も何も言わなかったよね?ということは、そんなにメジャーな植物じゃないんでしょうね。うん。そうに違いないわ)」


 "エンドプラント"は、学院長(マグネア)レベルの有識者ですら気付かないほどマイナーな植物なのである。なら、たとえ図書館で図鑑を眺めたとしても、載っていない可能性の方が高いのではないか……。むしろ——、


「(いや、でもちょっと待ってよ?そんなにマイナーな植物だったとして、なんでさっきの人は、あの植物が"エンドプラント"って分かったのかしら?そもそも、なんか、すごく適当なネーミングだし……。もしかして嘘を言っている?)」


 しかし、世の中、変わった趣味・趣向をもった人間は、相当数いるものなのである。疑い始めたらキリがない……。ワルツはそう判断して思考を止めた。もしも、喧噪の中から聞こえてきた声の通り、その銀色の植物が本当にエンドプラントで、その地の植生を破壊するようなトンデモない植物だとすれば、摘み取る以外に選択肢は無いのだから。


「(皆、処理する気満々だし、放置しておいても大丈夫そうね)」


 ワルツが人々の声に意識を向ける限り、銀色の植物(エンドプラント)の噂が、不思議と喧噪の中に広まっていき、帝都民たちの間で、エンドプラントを処分するという雰囲気が高まっていっているようだった。


 ただ、そこには、大問題が鎮座していたようである。


「俺、斧を持っていないや……木こりなのに……」

「お?奇遇だな!俺も鋸を持ってないぞ?……木こりなのに……」

「大丈夫だ。安心しろ。俺たちも包丁を持っていないからな!……料理人なのに……」


 ポテンティアの刀狩り(?)の影響で、帝都民は今、武器になり得る道具の一切を奪われた状態だったのである。その状態で植物を切るというのは難しい事だった。


「(殆ど金属で出来ているような植物を、斧で切ろうとするのは無理な話よね。まぁ、ちゃんとした鋸なら切れるかも知れないけれど、切った程度で繁殖を止める事なんて出来るのかしら?)」


 雑草のように、根っこまで抜かなければ、無限に生えてくる類いの植物なのではないか……。


 ワルツがそんな事を考えていると、どこからともなくポテンティアの声が聞こえてくる。


『あー、ワルツ様?』


「うん?何?」


『あの植物ですが、いかがいたしましょう?僕たちの方で抜いてしまいましょうか?』


「…………」


 確かにポテンティアが抜くというのは、有効な手立てだった。彼なら根こそぎ抜く——もとい融解させることが出来るからだ。


 しかし、ワルツは首を横に振った。


「いえ、まずは様子を見ましょ?人の手でも抜けるのか、ちょっと見てみたいのよ」


 もしも本当にその銀色の植物が"エンドプラント"だとして、もしも何かしらの事故によって、世界中に広まるようなことがあったとき、人の力だけでも根絶することは出来るのか……。ワルツはそんな疑問を抱いたらしく、帝都民たちのやり方を観察する事にしたようだ。


 幸い、人々の意識は、ワルツたちの方から完全にエンドプラントの方へと向けられていた。逃げるなら今しかない。ゆえに、ワルツは仲間たちに提案する。


「みんな?今のうちよ。逃げましょ。で、少し離れた場所まで逃げたら、帝都の人たちがどんな対応をするのか、観察しましょ?」


 ワルツの問いかけに最初に頷いたのはアステリアだった。彼女自身、エンドプラントを生やしたことに責任を感じていて、植物を放置してその場から逃げるというのは気が引けることだったのだ。


「もしもダメだったときは、ワルツ様のお力で滅ぼしていただけるのですね!」


「いや、滅ぼすって……」


 雑草だと考えれば、滅ぼす、という表現もアリなのだろうか……。ワルツはそんな事を考えながら、自分たちならどうやってエンドプラントを処理するのかを考えるのであった。


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