14.18-25 国家運営?25
囲まれた状態でどうすれば良いのだろうか……。非殺傷的な魔法をあまり持たないルシアが、対処に困っていると——、
「ここは私が!」
——と言ってアステリアが一歩前に出た。彼女が何かをするつもりらしい。
しかし、いったい何をしようと言うのか……。想像出来なかったルシアが問いかける。
「アステリアちゃん、何をしようとしてるの?一応、念のため聞かせて欲しいかなぁ?」
アステリアが使える魔法は、今のところ3種類。変身魔法、火魔法、そして植物を操作する魔法である。それらを知っていたルシアとしては、アステリアが現状の人に囲まれた状態を打破できるとは到底思えなかったらしい。むしろ、空を飛ぶなどして、自力で脱出した方がいいのではないかと思っていたほどだ。
対するアステリアは、人々へと向かって両手を向けながら、こう言った。
「人って、何かに興味があっても、別のもっと大きな興味を感じるものが出てくると、そっちに気を取られる生き物なんです。だから、そこの道のど真ん中に大きな樹を生やそうと思います!」キリッ
「う、うん……。それどうなのかぁ……」
もっと効果的な方法があるのではないか……。そう思わなくもないルシアだったものの、他に良い方法も思い付かなかったらしく、彼女は難しそうな表情を見せながら、眉を顰めた。
ちなみに、こういうときこそテレサの言霊魔法が効果を発揮する場面なのだが、そのテレサは、現在進行形で幻影魔法を展開している上、演説に言霊魔法を乱用した影響で、魔力が殆ど残っていない状態。かといって、ルシアがテレサに魔力を渡すためには、テレサの顔をグーパン、あるいは平手打ち——という名目で(?)、彼女の唇に触れなければならないのである。ワルツほど人見知りの激しくないルシアであっても、誰にも見られていないとはいえ、大人数の前で、テレサに魔力を渡すというのは気が引ける事だった。
ゆえに、ルシアはアステリアとテレサに対して言った。
「アステリアちゃんはもっと別の方法を考えた方が良いと思う。テレサちゃんはアステリアちゃんと一緒に対策の方法を考えて」
「「対策の方法……」」
アステリアとテレサは考え込んだ。
その内、コンマ1秒以下の時間で、"ベスト"な対応方法を思い付いたのはテレサだった。彼女は未だ、コルテックス製の魔力吸い取り魔道具を身につけている状態。前述の通り、誰かに接吻すれば、その人物の魔力を吸い取ることが出来るのだ。
そして今、彼女の目の前には、全身がモフモフとした毛に覆われている狐娘がいるのである。
「……ぐへへ」にやぁ
「ひっ?!お、悪寒が……」
アステリアは思わずテレサから離れた。
「……なぜ逃げるのじゃ」
「何だか、テレサ様から怪しい気配を感じまして……」
「し、失礼な……」
アステリアの毛に顔面を突っ込ませて、彼女から魔力を吸い取れば、どれほどモフモフ——いや、テレサの思考は置いておこう。以下略である。
テレサはたっぷり3秒ほど悩んだ後で、アステリアからでは十分な量の魔力が吸い取れないことを思い出す。結果、テレサは、莫大な魔力を持つルシアの方に視線を送るのだが、彼女から魔力を吸い取る選択肢をすぐに排除した。テレサのプライドが、ルシアからの魔力補給を許さなかったらしい。まったくもって謎のプライドである。
「ア嬢からは無いのじゃ」
「えっ?」
「仕方ない。お主の思ったようにやってみるのじゃ」
「良いんですか?」
「だって、妾に出来る事は何も無いしのう……」げっそり
「あ、はい……」
ルシアに言われたとおり、ちゃんと考えての行動ではないが、大丈夫だろうか……。そんなことを考えつつ、アステリアがルシアの方を振り向くと、ルシアはワルツと何やら会話中で、自分たちの方は向いていなかった。
結果——、
「……分かりました。やります!」
——アステリアは植物を操作する魔法の準備を始めた。




