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14.18-23 国家運営?23

「ポテちゃんたち、放置してきて大丈夫だったのかなぁ?」


 マリアンヌたちと別れた後、町の中を歩いていたルシアは、そんな心配を零していた。


 それに対して反応したのは、ワルツでもテレサでもなく、アステリアである。


「心配……なんですか?」


 どうやらアステリアにとって、心配だと思えることは何も無かったらしい。もちろん、アステリアから見て、マリアンヌが情緒不安定になっているようには見えなかった、というわけではない。アステリアは単純に、ポテンティアのことを信じていたのだ。とはいえ、信頼と言うよりも、理不尽を前にした呆れに近い何かだったようだが。


 対するルシアが、ポテンティアに対してどんな感情、あるいは印象を持っているのかは定かでないが、少なくともアステリアのように、ポテンティア1人だけにマリアンヌのことを任せられるほどには安心できていなかったようだ。


「心配……うん。心配だね。だって、普段のポテちゃん、少なくとも可愛くはないし、むしろ気持ちわr——」


「おっと、ア嬢?同居人の悪口はそこまでなのじゃ。一応あれでも多分益虫——いやマイクロマシンゆえ……」


「……まぁ、とにかく、不安定な状態のマリアンヌさんのことを、ちょっと性格の歪んだポテちゃんに任せて良いのかな、って心配に思ってるんだよね……」


「…………」

「ポテの性格は、お主ほど歪んで——いや、なんでもないのじゃ」


 蛇に睨まれた蛙のように発言を止めたテレサの事は置いておいて……。アステリアは、戸惑いを抱きながら、自分たちが歩いてきた方向を振り返っていた。ルシアに言われて、自信もすこし不安を感じ始めたらしい。尤も振り返ったところで、マリアンヌたちと別れてからは、100m以上離れているので、人混みに紛れて、彼女たちの姿を見ることは出来ないが。


「……戻ってみます?」


 そんなに心配なら、戻って二人の様子を見に言った方がいいのではないか……。そんな副音声を乗せて、アステリアはルシアに問いかけたが——、


「まぁ、大丈夫でしょ。きっと」


——4人の先頭を歩いていたワルツは、ポテンティアに全幅の信頼を置いていたようだ。


「何かあったら連絡が来るわよ。どうせ、ポテンティアって、町中にいるんだし……。ねぇ?ポテンティア」


 と、ワルツが建物の物陰に向かって話しかけると、影の方から声が返ってくる。


『えぇ、その通りです。現在順調にマリアンヌさんのことを攻略中です』


「……攻略って何よ」


 物陰から帰ってきたポテンティアの声に疑問を持ったワルツが問いかけるものの、返答は無い。すでにそこには、ポテンティアの分身はいないらしい。


「……まぁ、悪い事にはなっていないでしょ。きっと……」


 ワルツは考えるのをやめた。何となく、自分が口を挟んではいけない何かを感じ取ったらしい。面倒事、あるいはプライベートな事。そんな雰囲気だ。


 それからワルツは、再び人混みの中を歩き始めた。そんな彼女の後ろをルシアたちも追いかける。


 コルテックス(テレサ)の演説があってからというもの、町には活気に溢れていて、一部には早速、商いの準備をする者たちや、商談をする者たちの姿を見て取る事ができた。ワルツたちが帝都にやってきた1時間ほど前とは雲泥の差だ。まるで別の町のような喧噪に包まれていたのである。


「やっぱり、都市って言ったら、こんな感じよね」


 ワルツは自分よりも遙かに背の高い人々を器用に避けながら、前へ前へと進んでいく。テレサの幻影魔法によって、ワルツたちは現在不可視の状態。人を避けるのも一苦労だったが、反応速度が人智を超えたワルツにとっては、誰もいない場所を歩くことと同義だったようだ。


 しかし、他の者たちにとっては、同じとはいえない。


「うおっ?!」

「きゃっ?!」

「んなっ?!」


 歩いていると、奇妙な斥力によって急に方向転換を迫られる人々がいたり……。


   ズドンッ!


「いだっ?!」

「……っ?!」

「い、石を蹴飛ばした?!」


 何か酷く硬くて重い物を蹴飛ばした者がいたり……。あるいは——、


   ドンッ!


「あっ、すみません……」


「あ、いえ、こちらこそ……ん?」


——誰かとぶつかって謝罪されたはいいが、誰にぶつかったのか分からない者がいたり……。といったように、ルシアとテレサ、それにアステリアの3人は、次々と人にぶつかっていたようである。ルシアは重力制御魔法で人を避け、テレサは背が低いゆえに蹴飛ばされ、そしてアステリアはなんとか人を避けるものの、たまにぶつかって謝罪する——そんな様子だ。


「お姉ちゃん、ちょっと人が多すぎないかなぁ?」


「減らす?」


「歩きにくいから減らした方が良いかも知れないね」


「ちょっ……お主ら、何という会話をしておるのじゃ?!」


「「……転移魔法の話?」」


「あ、うん……そうは聞こえなかったのじゃがのう……」

ドンッ「ひゃっ?!す、すみません!ひ、人が多いです……」


「仕方ないなぁ……」


 どんどんと増えていく町の人々の中、ルシアを中心に、人を遠ざけるような斥力が発生する。彼女が重力制御魔法を使って、テレサやアステリアが歩けるよう、周囲から人を遠ざけたのだ。


 結果、人混みの中に、不自然な空間が出来上がるわけだが——、


「……ん?誰かそこにいるのか?」


——それが逆に人々の目を集める事になってしまったのは仕方のない事か。


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