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6中-18 迷宮の外で1

一部、言葉に欠落があったゆえ、ヌル殿の台詞を修正したのじゃ。

「犯人は・・・私です」


『・・・?』


事態が飲み込めない殆どの者たちが、そんなユキ(N)(以下、ユキX)の発言に対して、疑問の表情を浮かべた。


「あの・・・ヌル(Null)(ねえ)さま?もしかするとボク聞き間違えかもしれないのでもう一度言っt」


「犯人は私ですよ?アインス(Eins)


ユキA(ユークリッド=E=シリウス)の方を見て繰り返すユキX(ユークリッド=N=シリウス)。


「・・・ごめんなさい姉さま。よく分かりません。ボク達と一緒に捕まっていたはずの姉さまが、どうして犯人になりえるのですか?それに、デフテリーが動き出した時、ボクたちは会議室で緊急会議を開いていたではないですか・・・」


だから、迷宮の核に剣を刺す暇など無かったはずではないか、と問いかけるユキA。


「・・・そうですね。ではこう言えば分かりますか?私が他者に依頼した・・・と」


『・・・!』


その一言に、ユキ達は各々に異なる表情を浮かべた。


驚愕する者。

深く考えこむ者。

難しい表情を見せる者。

目を閉じて天を仰ぐ者。


そんな中でユキAは・・・


「・・・警備を強化をしていた迷宮の核に、何者かを招き入れた・・・そういうことですか?」


崩れてしまいそうな表情を必死になって堪えながら、事態の把握に努めようとしていた。


「その通りです。アインス(ユキA)


そう言いながら、ユキAに対して目を細めるユキX。

そして彼女は、深くため息を付いた後で・・・目を伏せながら口を開いた。


「・・・もう、疲れてしまったのですよ」


そんな彼女の言葉に・・・ユキ達は、同じ表情を浮かべて(うつむ)く。

どうやら、皆、彼女の心情を理解しているらしい。


それからユキXは、今度はワルツに視線を向ける。


「魔神様・・・私はもうこれ以上、辛い思いをしたく無かったのです・・・」


「・・・」


そんなユキXの懺悔にも近い言葉に、ワルツは黙って耳を傾ける。


「この世界に生を受けて17年・・・」


(短っ!250年じゃなかったの?!)


「転生することで肉体が若くなろうとも、心の傷は増える一方なのです・・・」


(あー、そういうことね)


彼女のその一言で、ワルツは前から思っていた疑問に合点がいった。


要するに、こういうことだ。


「・・・貴女たち、ホムンクルスだったのね」


『!?』


「いえ、むしろホムンクルスというよりも・・・人工的に創りだした身体に乗り移って、命を(ながら)えさせているって感じかしら?」


「はい。(おっしゃ)る通りです」


ユキたちの見た目があまりにも似通い過ぎていたこと、そして何よりも、彼女たちから生体反応が検出されなかったことで、ワルツは確信を持ったのである。

とは言え、生体反応については、先程、デフテリー・ビクセンの外に出てきてから気付いたのだが。


ワルツがそんなユキたちの秘密を口にした・・・その直後の事だった。


「・・・っ!」


表情が崩れないように耐えていたユキAが、ワルツに対して顔を見せずに、何処かへと駆け出して行ったのである。


「・・・はぁ。ユリアとシルビア?追いかけて頂戴」


「かしこまりました」

「えっ、あっ、はい!」


ため息を吐いた後、腕を組みながらワルツが呟くと、まるで彼女の言葉を待っていたかのようにしてユリアが飛び立ち、その後を追いかける形で遅れてシルビアも飛び立っていった。


「妹は・・・随分と魔神様に懐いてしまったようですね」


「いや・・・魔王に懐かれても、どう対処していいか分からなくて困ってるんだけどね・・・」


辺り一面を氷の世界に変えながら、走っていくユキAに眼を細めるワルツとユキたち。

彼女を見送ってから・・・ワルツは、話を戻した。


「で、疲れたっていうのはもしかして・・・定期的に人の命を奪わないと身体を維持できないけど、人を犠牲にするのが嫌になった・・・とか?」


「・・・流石でございます。魔神様」


(いや、魔神じゃないけどね?・・・っていうか、いつも思うんだけど、どうして皆、私の事を魔神って言うのかしら・・・)


ユキXに対して、ワルツはジト目を向けたが、彼女にそれを気にした様子は無かった。

そしてユキXはそのまま言葉を続ける。


「これまで()()、およそ500年余りの間、世界の移り変わりを見て参りました・・・」


「・・・」


「その間、自分の力を維持したり、命を永らえたりするために、幾ほどの命を奪ってきたのかは既に覚えてはおりません。それほどに人々を(あや)めてきたのです」


そう言いながらユキXは、まるでこの世を去っていった者達に向けるようにして、視線を空へと向ける。


「最初の頃こそ、我が命のために、人々が(にえ)となることは当たり前と考えて、殺戮を繰り返しておりました。その考えが大きく変わったのは、およそ200歳を過ぎた辺りでしょうか・・・。私と勇者との間で大きな戦闘があり・・・その際に、すべての民を失ったことがあるのです」


(え・・・勇者が魔族を皆殺しにしたってこと?)


そんな疑問を抱くワルツだったが、とりあえずそのまま飲み込んだ。


「たとえ暖めてくれる炎が近くにあったとしても、心まで温まることはありませんでした・・・。そんな、とても寒い思いをしてから、私は人々をむやみに殺めることは止めたのです。・・・今思えば、それが全ての過ちだったのかもしれません」


「・・・」


「それから私は、自分が生きていくために犠牲となる人々の数を、最小限に抑えることにしました。・・・でも、それは本当の辛さの始まりだったのです・・・」


すると、眼を閉じたユキXの表情が自嘲気味たモノへと変わる。


「魔神様?・・・私のために犠牲になっていく人々が、皆、笑顔で死んでいくんですよ?理解できますか?」


「・・・」


「恐怖に(おのの)き、命乞いをし、家族に対して謝罪しながら、私に喰われて死んでゆく・・・昔の私は、それが普通だと思っていたのです。・・・できるだけ人口が増えるように街の環境を整え、侵略してくる他の国の魔王たちに減らされないよう民を守り、飢餓にならないよう助言を与える・・・たったそれだけのことで、どうして民たちは、私に笑顔を向けて死んでいくようになってしまったのでしょうか?」


「・・・」


「・・・その結果、私は人を喰べられなくなりました。おかげで随分と力も衰えてしまいましたよ。昔は最強の魔王と(うた)われていたのですけどね・・・。そんな時です。妹達を作ったのは」


「え?ユキたちって、最初から一緒に居たわけじゃないの?」


「はい。500年前に先代からこの地を奪い取ってから、およそ250年間は一人でやってきたのですが、力の衰えをどうすることも出来ず、国政を任せるために私のコピーである妹達を作り上げたのです。そして私はメイドとして姿を隠しました」


(んー、なんかどこかで聞いたことのある構図ね・・・・・・あれ?)


「じゃぁ、最初の日に、来賓室に私たちを迎えに来たメイドが貴女だったの?」


「はい。・・・あの、今まで分からなかったのですか?」


「いや・・・皆、同じ顔に見えたから判断が付かなかったというか・・・」


どうやらユキXはユキF(メイド)だったらしい。


「でも解せないわね。犠牲者を減らすためにユキたちを作って・・・それで上手く行ってたんじゃないの?」


「時間の『ある一部分』を切り出して考えるなら、上手く行っていたと言えるでしょう。ですが、全体を考えると、そういうわけでもなかったのです」


「どういうこと?」


「原因は肉体の老化です。およそ100年ごとに、私たちは身体を取り替えるのですが・・・」


「・・・つまり、100年ごとに、ユキたち全員分の新しい身体が必要になる・・・そして、その度に、市民の犠牲も必要になってしまう、ということね?」


「そうです。それは決して少ない数ではありません」


「・・・」


ユキFの言葉に眼を細めるワルツ。


つまり、ミッドエデンの王城で犠牲になった人々を基準として考えるなら、6人でおよそ12000人分の犠牲者が出てしまう、ということになるだろうか。


「1人だけだと力が足りなくて国を守れない・・・。でも6人だと、100年ごとに多くの人々が犠牲になってしまう・・・。結局、妹達を作る前と後で、犠牲者の人数は殆ど変わらなかったのですよ」


「・・・そう」


「それに気付いて、私たちは人数を減らすことも考えました。ですけど、コピーとは言え、この世界に一度生まれてしまった生命・・・。皆、死にたくなかったし、殺したくもなかった・・・だから・・・」


「ユキたち皆を道連れにして、心中しようとした。それも、私たちが市民を救うことを分かった上で・・・ってことね?」


「その通りでございます」


恐らく、2ヶ月前、ルシアがこの地に魔力爆弾を投下した・・・その前から計画されていたのだろう。

ユキAの使節派遣も実はブラフで・・・・・・いや、ミッドエデンによる食糧支援の話は、もしかすると、迷宮が暴れた後に残された市民たちのことを考えた末のもの、なのかもしれない。


「・・・それ以外に選択肢は無かったわけ?」


「250年以上探してきましたが、残念ながら・・・」


「そう・・・」


そんな彼女に・・・自分の持っているアンドロイドの技術や、カタリナが持っているホムンクルスの技術などを開示するかどうかを悩むワルツ。


するとユキFは、


「・・・」


何か小さく口の中で呟いてから、どこか決意を持った視線をワルツに向けながら口を開き・・・


「・・・しかし、ここまで問題を大きくしてしまった以上、私一人でも責任を取らなくてはなりません」


そして言い終えた。

その瞬間のことだった。


ドゴォォォォ!!


・・・最近見ていなかった、『黒い塊』がユキFに襲いかかったのである。

さて、なのじゃっ!

今日は、あとがきらしきあとがきを書k


ブゥン・・・


あれ?

テレサちゃん、またどこかに消えちゃったみたいです。

一応言っておきますけど、せっかく1ヶ月前から準備をして作ったクッキーを、お好み焼き呼ばわりされて怒って消した・・・なんてことはありませんよ?

多分・・・今ごろ、お姉ちゃんの家のお風呂で、プカーって浮いてるんじゃないでしょうか。

沈んでなければいいですね。


それで、あとがきです。

これ、テレサちゃんが言ってたんですけど、ユキちゃんの姉妹は、本当は2人だけにするつもりだったらしいですよ?

なんか、星のシリウスが兄弟でなんとか、って言ってました。


あと、これは随分昔の話なんですけど、魔女裁判の話辺りで、A案とB案があって、A案だとテレサちゃんは物語に登場してなかった設定らしいです。

って、主さんが言ってました。


とりあえず、今日はこんなとこですかねー。

・・・え?私のクリスマスプレゼントは何だったのか?

んー、いくつかもらったんですけど、やっぱり、お姉ちゃんに連れてってもらったお空の旅が一番嬉しかったかなー。

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