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14.18-11 国家運営?11

 コルテックスが異空間から取り出したもの。それは、大きなハンマーだった。いや、ハンマーと言うには、あまりに柄が長すぎて、そして、頭の部分が小さすぎた。一見する限りでは、頭の部分に気づけないので、ただの棒である。


 しかしどうやら、ただの棒ではなく、魔道具らしい。コルテックスは、その長大なハンマーのようなものを軽々と片手で振りかざして、そして頭の上でピタリと止めてから、ポテンティアに対して警告する。


「1階の量はこのくらいで大丈夫ですから、いったん、マイクロマシンちゃんたちを退避させて下さい」


『了解です!』


 その瞬間、黒い虫たちが、貴金属の塊から、一気に離れていく。


 黒い虫たちが離れていく様子を確認した後、コルテックスはハンマーをひと思い切り振り下ろした。


「ほいさ〜っ!」


 長さが50m以上あるハンマー、いや鉄の棒のようなものが、貴金属に叩き付けられる——と誰もが思っていたが、実際にはそうならなかった。ハンマーは、貴金属に当たる手前で、何か壁のようなものにぶつかって止まったのだ。


 とはいえ、誰かが、結界魔法を展開したというわけではない。突然停止したのは、コルテックス製の魔導ハンマー自体の効果である。これから何かの作業が始まるらしい。


 いったい何が起こるというのか……。皆が訝しげに眺めていると、事態は一気に進んだ。


   ズドォォォォン!!


 何の前触れも無く、突然、爆風と爆発音を発生させながら、貴金属塊が形を変えたのだ。


 その瞬間、周囲は土煙に覆われて、一時的に貴金属塊の姿は見えなくなる。それから十数秒後。土煙が晴れるとそこには——、


「ふーん。本当にプレスなのね?」


——完全に形を変えた貴金属が現れた。


 最初の貴金属の姿は、ただ積み上げただけの塊だった。それが、コルテックスの魔道具によって叩き伸ばされて、建物の1階部分の形に変化したのだ。


「えぇ〜。もちろんですとも。プレス用の魔道具ですからね〜。叩くだけでデータ通りに金属をプレスをしてくれる魔道具です」


「どこぞの青い猫型ロボットの道具みたいなものね……ホント」


「いえ、狐娘型ロボットですが何か〜?」


 いったい、どんな原理で、造形したのだろうか……。と、皆が疑問に思うものの、誰もコルテックスに原理を問いかける者はいない。聞いても理解出来ないと諦めているらしい。


 そんな中、ワルツは——、


「(あれも、魔法陣とか、その辺の技術を応用して作られているのかしら?)」


——などと、予想を立てていたようだが、彼女は敢えてコルテックスに声を掛けなかった。原理を聞いたら負け……。コルテックスなどの妹たちに、技術的な助けを求めることだけは、プライド的に許せなかったらしい。


 しかし、気にはなる……。ワルツが、技術を聞くか聞かぬかで悩んでいる間も、コルテックスとポテンティアによる建物構築は進んでいく。


「この上に完成した建物フレームを重ねていくので、今度はこの隣に、貴金属の塊を集めてもらえますか〜?」


『わかりました』


 人の姿のポテンティアが、コクリと首肯すると、再び町中から黒い虫たちが押し寄せてくる。そのせいで町の中は大混乱状態だが、どういうわけか、怪我人が出たり、避難する人々で混乱したりすることはなかった。町の人々はすべて、ポテンティアの黒い虫たちの制御下にあって、必要以上の混乱が生じないよう管理されていたのである。最早帝都は、"黒い虫"と人々が住まう、一つの生態系のようなもの、と言えるのかも知れない。まぁ、双方ともに利益は無いので、共生とはほど遠いようだが。


 それから数分後。今度は2階部分のフレームが完成する。


 1階と2階のそれぞれのフレームには、容易に重ねられるよう穴や突起が設けられていた。積み木のようなものだ。しかし、締結部をボルトなどで固定すれば、バラバラな部品で作り上げる建物よりも、遙かに強度は高そうである。


 完成した2階部分は、コルテックスが3階部分のプレス(?)をしている間に、手の空いたポテンティアのマイクロマシンたちによって、ゆっくりと運ばれていく。行き先は、1階部分の上部。蟻が自分たちの身体よりも遙かに大きな食べ物を運ぶように、たくさんのマイクロマシンたちが皆で協力して、何百トンもある2階フレームを持ち上げたのだ。


 それが、合計5階まで繰り返されて——、


「まぁ〜、これだけ大きければ、市役所の代わりくらいにはなるでしょう」


——貴金属の塊で出来た市役所が、エムリンザ帝国帝都の中心部に完成した。所謂、金ピカに輝くシティーホールだ。まぁ、窓枠や窓は、まだ填まっていないのだが。



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