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14.18-07 国家運営?7

 森を抜けると、帝都を取り囲む壁が見えてくる。そんな帝都の壁の周りには、農家と思しき人々の家々や、壁の内側に入りきらなかった商店などが点在し、町の外側だけでも大きな町であることが見て取る事が出来た。


 ただ……。町並みを眺めていたワルツたちとしては、その様子に何か引っ掛かることがあったようだ。


「活気が……無いわね」

「死んでる町みたい」

「喧噪が無いのじゃ」

「静かですね……」

「外側にはあまり来たことはありませんけれど……これはあまりに静かすぎますわ?」


 というワルツたちの感想通り、町には活気が無く、音が少なかったのだ。もちろん、人が住んでいないというわけではない。人はいて、会話も聞こえてくるというのに、町特有の喧噪だけがすっぽりと抜け落ちたかのように、静まりかえっていたのである。町全体が何かに怯えている、と表現するのが適切だろうか。


 ポテンティアが今の帝都の状況を説明する。


『全武装を解除させて、貨幣を取り上げ、食料を配給させて、犯罪をすべて抑止するようにしたら、こうなりました』


「なるほど。やっぱり牧場ね。人間牧場」


 そこにいた人々は、小さな虫たちによって管理された"家畜"でしかなかった。暴力も暴言も許されない代わりに、生産的な行動もほぼすべて禁止されているのである。武器だけでなく、武器になり得る鍬や工具、包丁はもちろんのこと、戦争に使われそうな馬車や荷車などもすべて破壊され、それらを新しく作れば、黒い虫たちによって破壊される状況。それによって人々が死ぬことはないが、生きているとは言い難い状況だった。


 事情を知っているワルツたちは、その異様さを目の当たりにしながら、町の中を進んでいった。しかし、人々の視線がワルツたちに向けられることは無い。皆、目に活気が無いのだ。働いても得るものは無く、働かなくても死ぬことはないので、ただボンヤリとするばかり。町の外からやって来る旅人に注意を向ける理由が、彼らには失われていたのである。


 壁の外の町を歩いていると、間もなくして巨大な門が見えてくる。高さは2、30mほどだろうか。どんな町にも引けを取らない巨大な正門だったが、本来必要なものが色々と欠如していた。


「扉が無いね」

「出入りを防ぐ柵も無いのじゃ」

「跳ね橋はあるみたいですけど、ロープは切れていますね……」

「攻め落とされたばかりの町、って感じね」


 普通の町であれば、町を守る門番や、城門のごとき巨大な扉があって然るべきだが、今の帝都にはそのどちらもなかった。一応、門番だったと思しき人々が、普段着のまま門の横に立っていたが、ワルツたちの事をチラリとも見ず……。ただ前を見て黙っているだけ

まるで置物のようになっていた。ワルツたちと視線を合わせれば、なにか恐ろしい事が起こると言わんばかりの様子だ。


 ……と、ワルツは考えていたが、彼女はふと気付く。


「あ、そっか。誰も視線を合わせないと思ったら、今、テレサの幻影魔法が効いていたのね」


「まぁ、そりゃの。マリアンヌ殿が誰にも姿を見られたくないと言っておったゆえ、不可視状態になっておるのじゃ」


「それならそれでいっか……。でも、この感じだと、幻影魔法を切っても、あまり状況は変わりそうにないけどね?」


 そう言いながら、ワルツはマリアンヌに視線を向けた。


 その先にいたマリアンヌは、ショックを受けた様子で、呆然としていたようである。町の変わりようが、彼女の想像を絶していたのだ。


 そんな彼女に掛ける言葉が見つけられなかったワルツは、今度はポテンティアに対して視線を向けた。


「ちょっと、ポテンティア?これは流石にやりすぎなんじゃない?」


 対するポテンティアは、悩ましげな様子で返答する。


『僕も対応には悩んだのです。しかし、戦火の無い戦場と考えれば、妥当なのではないでしょうか?』


「戦火の無い戦場、ね。なるほど、確かに敗戦国と考えれば、こんな感じなのかも知れないわね……」


 人はいるのに活気の無い町並み。武器を持つことを許されない兵士たち。一切の経済活動を管理された町の人々……。それらを一言で表現するために、"敗戦国"という言葉は、ワルツの中でしっくりとくる言葉だったようだ。


 そんな時。マリアンヌがポツリと零した。


「皆様に手を出した報いが、この状況なのですわね……」


 帝都がこうなってしまった原因は、すべて自分にある……。帝都の現状を目の当たりにしたマリアンヌは、小さくない責任を感じていたようだ。



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