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14.17-40 遠く6

サブタイトルのナンバリングを修正したのじゃ。

なんか、最近、よく間違えるのじゃ。

 髪留めクリップの機能を説明されたアステリアが、素直にワルツからクリップを受け取ったかと言えば、それは否である。一応アステリアは、ワルツからクリップを受け取りはしたが、アステリアはそれを手に取ったまま、神妙な面持ちでプルプルと震えだしたのだ。


「こ、こ、こ、このようなものを、わ、わたしなんかに……」


 まるで王族が身につけるような透き通った青色の宝石(ませき)が付いたアクセサリー。しかも転移魔法を半無限に使えるというのだから、アステリアは尚更に驚いた。彼女は魔法が使い放題な魔道具など、聞いた事が無かったからだ。


 当然だ。全世界でも、人工魔石を作ることのできるワルツしか、まだ実現していないトンデモ魔道具なのだから、噂の類いを聞くなどありえないことだからだ。コルテックスの『どこ()でもドア』ですら、使用する転移者の魔力を消費するのである。ところが、ワルツの作った魔道具は、術者の魔力消費がない魔道具だというのだから、アステリアには、世界を根底から覆してしまうような、革命的魔道具だとしか思えなかったのである。


「わたしに……なんか……」


 アステリアは俯いたまま泣きそうになっていた。100歩譲って、価値については棚上げにするとしても、ワルツがアステリアにアクセサリーを渡す理由が、アステリア自身には理解出来なかったのだ。


 アステリアの自己評価は、恐ろしく低かった。むしろ0と言っても良いかも知れない。彼女は、自身がもつ価値や可能性に気付いておらず、なぜワルツが自分の事を奴隷として扱わず、家族のように接してくれているのか、未だに分からなかったのだ。


 だというのにワルツは、転移魔法用のアクセサリーを自分に渡そうというのである。自分の価値や立ち位置といったものを理解していなかったアステリアには、尚更に混乱した。しかも近くには、マリアンヌという隣国の皇女がいるのである。彼女よりも先にアクセサリーを渡されたのはなぜなのか……。アステリアの混乱した頭では、どう考えても、理由を思い付くことは叶わなかった。むしろ、混乱していなかったとしても、理由に思い至ることは出来なかった、と言っても良いかも知れない。


 対するワルツは、アステリアの異様な反応に気付いてはいても、彼女が混乱している理由までは理解出来なかった。近くにいた"親しい人物"がアステリアだったので、マリアンヌよりも先に、彼女にアクセサリーを渡しただけである。アステリアに渡した後で、少し離れた場所にいたマリアンヌにも渡すつもりだったのだ。


 にもかかわらず、アステリアが戸惑い、泣きそうになってしまったので——、


「えっ……ちょっ……」


——ワルツもまた、困ってしまう。もしかすると自分はアステリアに対して、何か失礼な事をしてしまったのではないか、と。


 俯いて悲しげな表情を見せるアステリアを前に、事情を知らないワルツは、たまらず周囲を見回して、ヘルプを求めた。しかし、ルシアとテレサたちは首を傾げ、マリアンヌは苦笑を浮かべるばかり。ポテンティアもよく分からないと言った様子で、頬をポリポリと掻いていたようである。


 そんな中、ワルツのヘルプに反応したのは狩人だった。彼女にとっても、アステリアが泣きそうになっている理由は分かっていなかったが、言えることはあったらしい。狩人はアステリアの肩に手を置きながら、口を開く。


「まぁ、なんだ。そんなに深く考え込まなくたって良いと思うぞ?アステリア……って言ったか?君がワルツから贈り物を貰って嬉しいなら、それで良いじゃないか。ワルツだって、何か深い意味を考えて、その髪飾りをプレゼントした訳ではない……はずだからな!!」ニカッ


 狩人は普段通りの清々しい笑みを見せた。その様子はまるで子どもを宥めているかのようで……。そんな彼女の様子を見ていたワルツたちは、微妙そうな表情を浮かべていたようである。皆、狩人の手腕で、アステリアが落ち着くとは思えなかったらしい。


 しかし、存外にも効果はあったようだ。


「考えなくても……良いのですか?ただ喜んでも……良いのですか?」


「あぁ、良いんだよ。アステリア。君がワルツからの贈り物を受け取って嬉しいと思えば、送った側のワルツもきっと嬉しいと思ってくれるはずだからな!だよな?ワルツ!」


「え、えぇ……(たしかに、深く考える必要はない、っていうのは、狩人さんの言うとおりね)」


 ワルツはアステリアたちに渡す予定だった転移用魔道具を、何か意図を持って渡そうとしていたわけではなかった。単に、緊急事態の時に、使って貰いたかっただけなのだ。


 深い理由と言えるものはない。強いて理由を言えば——、


「(月面研究所とかで事故があって、帰れなくなった時に緊急用として使えば、とりあえずは帰ってこられるし……)」


——というくらいである。あとは単純に、寝食を共にしているアステリアたちの身を案じての事だった。


 ただ、そんな副音声が、ワルツからアステリアに対してどう伝わったのかは定かでない。ワルツはただ、ニッコリと笑みを浮かべながら、アステリアの問いかけに首肯しただけだ。


 それをどう思ったのか、アステリアは——、


「えっと……あの……あ、ありがとうございます!これから頑張って、ワルツ様のお役に立てるよう、誠心誠意、努力させて頂きます!」


——などと、なぜかワルツの役に頑張るという謎の返答を口にする。


 その結果、ワルツは、「んん?」と首を傾げてしまうのだが……。狩人やルシアたちは、アステリアの言葉に、なぜかウンウンと頷いていたようだ。


 例外は——、


「(なんだか話が通じていないような……)」


——ユリアくらいのものである。まぁ、彼女の場合、アステリアと狩人の発言の内容が噛み合っていないことを知っていても、そこに首を突っ込むようなまねをするつもりは無かったようだが。


うーむ……難しいのじゃ。

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