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14.17-36 遠く2

サブタイトルのナンバリングを修正したのじゃ。

 事情を知らないアステリアは、ふと、視界の端の方で何かが動いたような気がして、そちらの方を見る。するとそこでは——、


  チラッ


——と、食器棚の隙間から自分たちのことを観察する目玉が一つ。しかも、アステリアと視線が合う。


「ひぃっ?!」ガタッ


 アステリアは思わず奇声を上げて、椅子を立ち上がって後ずさる。それも仕方のない事だろう。誰もいないはず——いや、誰も入れないほど小さな食器棚の下段から、誰かの目玉だけが覗いていたのだから、まさしくホラー。アステリアの反応は、ごく自然な事だと言えるだろう。


 その目玉の持ち主は、「あー、悪い悪い」と謝罪をしながら棚の下から姿を見せた。狩人だ。コルテックスの転移用魔道具を使って、食器棚とミッドエデンのどこかの扉を接続してやってきたらしい。


 猫の獣人らしく、スルリと狭い通路(?)から抜け出した狩人は、「しっかし、毎回、なんでこんな微妙な所に繋がるんだ?」などと疑問を口にした後で、コロッと表情を変えて、ワルツへと向かって挨拶をする。


「ははっ!久しいな!ワルツ!会いたかったぞ!」


 その陽気な笑みを前に、狩人のことを知っている皆の顔がほころぶ。


 ワルツも一緒だ。やはり来たかと苦笑しながら、彼女は狩人のことを出迎えた。


「久しぶり……なのかしら?2週間ぶりくらいですかね?」


「そうか?なんだか、私の中では、1年くらい会ってない気がするんだが……」


「いえ、気のせいです」


 この前も会っただろう……。などと口にしたかったワルツだったが、そこは何も言わずにグッと言葉を飲み込んだ。嬉しそうな狩人の表情を見ていると、ツッコミを入れる気になれなかったのだ。


 そして、単刀直入に言う。


「もしかして……ペンダントですか?」


「んなっ?!」


 カタリナに手渡したペンダントのことをワルツが口した瞬間、狩人の表情がピタリと凍り付く。ワルツはまだ、"ペンダント"としか言っていないにもかかわらずだ。


「そ、そんなことは……い、いや……ここは素直になっておくべきか……。そ、そ、そ……そう!率直に言って、私もあのペンダントが欲しい!」


 狩人は素直に首肯した。やはり彼女は、カタリナのペンダントのことが気になって仕方なかったらしい。


 対するワルツとしては、狩人に対し、ペンダントを渡す事に(やぶさ)かではなかったものの、一つだけ気になる事があったようだ。


「ペンダントの話は、カタリナから聞いたのですか?私がペンダントを渡した、って」


 ワルツのその質問に、狩人は首を横に振った。


「いや、それは違う」


 狩人の否定に迷いはなかった。どうやら嘘を吐いているわけではないようだ。


 狩人が理由を説明する。


「カタリナがペンダントを持っているとすれば、ワルツから渡されたもの以外にあり得ないじゃないか」


「え゛っ……なぜ、そう言い切れるのですか?」


「良いか?ワルツ。あのワーカーホリックが、自分でアクセサリーを買うなんてあり得ないことだ。買いに行く時間だって無いし、恐らく自分を着飾ることに興味すら持っていない。そんな暇があるなら、患者を癒やすか、シュバルをモフるか、そのどちらかをするはずだ。にもかかわらず、アクセサリーを身につけていたとなれば、もう、これは、ワルツから貰ったとしか思えないだろう?」


「たとえば、誰か素敵な男性と巡り会って、プレゼントされた可能性も——」


「いや、絶対にないな。もしもそんな男がいたとすれば、そいつは今頃、カタリナの実験動物にされているはずだからな!」


「…………あ、はい」


 ワルツは頭の中で、必死に想像した。カタリナが誰か男性と仲良く談笑している姿を。


 しかし、どうやっても、マッドサイエンティストなカタリナの印象がワルツの頭から離れず……。最後には————いや、これ以上は説明を省略する。


「というわけだから、消去法的に、ワルツから貰ったと思ったわけだ」


「そういうことですか……」


 ワルツは深く考えるのをやめた。深く考えても、ろくな答えにたどり着けない気しかしなかったらしい。


 それ故に話題を変える。


「ちなみにですけど、狩人さんが気付いたということは、ユリア辺りも気付いているのではないですか?」


「あぁ、よく分かったな?実はさっき、一緒に"門"を潜ったはずなんだが……」


 そう言って食器棚の方を振り向く狩人。するとそこには——、


「…………!」カァッ


——確かにユリアがいた。しかし彼女はなぜか、無言で顔を真っ赤にさせながら、上体だけを食器棚から覗かせたまま、ピタリと凍り付いていたようである。


「何やってんの?ユリア」


 普段は優秀な腹心とも言えるユリアが、顔を真っ赤にさせながらワナワナと身を震わせている姿を見て、ワルツは問いかけた。


 すると、ユリアはとても恥ずかしそうに、事情を説明した。


「は、挟まってしまって……お尻が引っ掛かって通れない……」


「「「「「『…………』」」」」」


 その場に無言の空気が漂う。皆、どんな反応を返して良いのか、分からなくなってしまったらしい。


???「おやおや〜?このような場所に、叩きやすそうなドラムがありますね〜」

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