6中-15 迷宮の中で3
GL回(?)(続き)、閲注(妾にとって?)なのじゃ。
・・・ユリアめ・・・後で体育館裏送り(?)なのじゃ!
ちゅーーー・・・
「あ・・・あぅっ・・・?」
自分の中から、何かが急速に失われていくことに、喘ぎでもなく、酷く苦しそうでもない、そんななんとも言えない声を上げるユリア。
例えるなら、貧血に陥って、倒れそうになった・・・そんな感覚に似ているだろうか。
・・・ただ、貧血と大きく違うのは、大好きな主が、自分の首筋にその唇を当てている、そんな感触が伝わってくることだろうか。
「ぷはぁっ!マズッ・・・!」
・・・心底、美味しくないといった表情を見せながら、口元を真っ赤にしたワルツが、顔を上げた。
そう、彼女は、『質量』を補充するために、ユリアの血液を摂取したのである。
何故、ワルツが彼女の血を吸い取ったのか・・・細かい理由については説明する必要はないだろう。
ただ言えることは、ワルツの身体の原理上、血液を摂取することによって腹痛が引き起こされることは無い、ということである。
「あの・・・えっと・・・どうしてですか・・・?」
唇に触れられなかったことが残念だったのか、それとも実は痛かったのか・・・ユリアは目に涙を溜めつつ、しかし同時に嬉しそうな表情を見せながら、ワルツに問いかけた。
「それ以外に、何か口にできるものあった?」
「・・・無いですね。むしろ、最適な選択だと思います」
そう言って大きく頷くユリア。
ふと、地面で意識なく横たわっているユキEの柔らかそうな腕が目に入るユリアだったが・・・結果として、ワルツと自分との間の距離が極端に近づいた(気がする)ことに、満足そうな笑みを浮かべながらそんな言葉を返した。
「600cc・・・まぁ、それ以上は無理しないほうがいいわね・・・」
そんなユリアの表情に、できる限り視線を向けないようにして、摂取した血液の量を確かめるワルツ・・・。
「ま、十分、お釣りが来る量でしょ」
そして彼女は・・・眠らせていた全機関の起動を開始した。
ブゥン・・・
そんな低い音と共に、機動装甲の眼に、まるで吸いとった血のごとき赤い輝きが戻ってくる。
同時に、ワルツの姿も真っ黒になり、瞳が同じ色に染まった。
「はぁ・・・ワルツ様。やっぱり、魔神だったんですね・・・」
「・・・」
最早、ユリアの言葉を否定する気も失せたワルツは、少しだけジト目を彼女に向けた後、宙に片腕を翳し、そして・・・そのまま停止した。
「・・・」
「・・・?どうしたんですか?ワルツ様。・・・まさか、私の血で何か問題が・・・」
嬉しそうな表情から一転、顔を青ざめさせるユリア。
「別にそういうわけじゃないんだけど・・・どうしようかなぁって、悩んだだけよ」
「え・・・?」
「いや、だってさ?今まで、スカー・ビクセンが暴れだして、デフテリーが暴れだして、って立て続けに来てるじゃない?ということは、何も対策しないとプロティーも暴れだすかもしれないってことじゃない?」
「・・・確かに」
「だから外に出る前に、原因とか少し調査したほうがいいのかなぁ、って。でも、ユキたちのことを考えると、直ちに外に出た方が良いのかなぁ、とも思うのよね・・・」
「なるほど・・・そういうことでしたか・・・」
「というわけで、直感の鋭いユリアに、決めてもらおうと思うのよ」
「なるほど・・・は?」
今、さらっと、ビクセンの町と市民の未来、そしてユキたちの命運を、ワルツに押し付けられたような気がしたユリア。
「ちょっ・・・て、適当過ぎませんか?!」
「じゃぁ、論理的に判断できる?このまま調査した方がいいのか、それとも、直ちにユキたちを外に連れて行くのを優先した方がいいのか・・・」
「・・・」
そんなワルツの言葉に、ユリアは難しい顔をして考え込んでしまった。
未来に起こるかもしれない大惨事を防ぐための方法を探すべきか、それとも、目の前で未だ意識を取り戻さないユキたちの治療を優先したほうがいいのか・・・。
・・・しばらく考えた後で、ユリアはどういうわけか、少し申し訳無さそうな表情をワルツに向けてから言った。
「・・・あの、ワルツ様?ワルツ様のお力が如何程のものかは私には分かりません。なので、お聞きしたいのですが、外に出た後で、デフテリー・ビクセンを拘束して、再び内部に戻ってくるか、あるいは調査団を派遣させる、といったことは出来ないのでしょうか?」
「・・・」
ユリアの言葉に眼を細めながら考えこむワルツ。
・・・なお、その考えは無かった・・・、と思っていたのは、彼女だけの秘密である。
「・・・そうね、不可能ではないと思うわ」
そしてワルツは、まるで熟慮したかのような表情を見せながら、深く頷いた。
そんな彼女の様子に、小さく息を吐きながら、胸を撫で下ろすユリア。
どうやら、小さいながらも主の役に立てた、と喜んでいるらしい。
「じゃ、外に出ましょうか」
「はい!」
そう短く返事をすると、ユリアは身体を掴んでいる機動装甲の腕に、嬉しそうにしがみついた。
そんな彼女の姿を見て、ワルツは・・・
(・・・あー、やっぱり、腕から血を吸えばよかったかしら・・・)
と、一人後悔していた。
ユリアも女性なので、傷の跡が変に残ると拙いと思い、あえて腕ではなく、髪に隠れた首筋の部分から採血を行ったワルツ。
しかしそのせいで、ユリアの思考が、何か変な方向へと走り始めてしまったのである。
これが、腕からの採血なら、こうはならなかったのではないか・・・。
そう思い、ワルツは頭を悩ませていたのだ。
まぁ、元より、彼女は明後日の方向へと猛進していたので、どこから採血したとしても、ワルツが彼女の血液を口にした時点で、結果は変わらなかったとも言えるのだが・・・。
それからしばらく経って・・・
キュウィィィィィン!!
ワルツたちの前では、何か真っ黒な球体が、周囲の空間を捻じ曲げながら、迷宮の石壁や肉壁を吸い込んでいた。
・・・ワルツの作り出したマイクロブラックホールである。
ただ、ブラックホールとはいえ、実物のように、吸い込んだ『質量』から発生した『エネルギー』をジェットとして外へと吹き出すようなことは無く、単に、超重力で圧縮し続けるだけの単純な代物である。
もしも、これがジェットが吹き出していたのなら・・・迷宮だけでなく、この星ごと無くなっていたことだろう・・・。
まるで、空間を削り取るかのようなマイクロブラックホールが形作る穴の中を、一同を浮かべたワルツが歩いていると、
「これ、掃除するときに使うと楽そうですね。要らないものとか、ホコリとか何でも吸い込んでくれそうですし・・・」
目の前の光景に、ユリアがそんな感想を口にした。
「えっ?王城を掃除するときとか、よくこれ使ってるわよ?」
「えっ?」
「えっ?知らなかった?」
「っていうか、ワルツ様が掃除しているって噂は耳にしたことがあるんですけど、実際に掃除しているお姿を見たことが無いんですよ・・・」
「まぁ、できるだけ人に見られないように、こっそり掃除してるし・・・」
「はぁ・・・」
「中でも掃除が面倒なのは、コルテックスの部屋ね。あの娘、椅子に根でも下ろしてるのか、殆ど議長室から出ること無いから・・・。それに、掃除自体も大変なのよ。一見綺麗そうに見えるんだけど、色んな所に物が仕舞いこんでるせいで、偶に余計なものまで・・・・・・いえ、このことは忘れて」
急に話を中断したワルツ・・・。
そして、彼女にジト目を向けるユリア・・・。
「あの・・・もしかして・・・」
「・・・2度目は言わないわよ?」
キュウィィィンーーーゴゴゴゴゴ!!!
「あああああ・・・すす、すみません!ひ、秘密です!秘密にしておきますっ!」
吸引力の上がった、この世界でただひとつしか無いだろう掃除機の音に、ユリアは差し迫った命の危険を感じてあたふたした。
そんなやり取りをしていると、
ボコン!!
何やら掃除機で大きな物を吸い込んだような音が聞こえてきた。
・・・どうやら、浮かべていたユキを間違えて吸い込んだわけではないらしい。
「ん?何か開けた空間に出たわね?」
通ってきた穴や周囲の空間が、迷宮によって再構築されないように、重力制御で形状を固定しながら、行き当たった空間へと足を進めるワルツ。
するとそこでは、先程まで閉じ込められていた空間と同じように、壁が薄っすらと光っていた。
そんな壁に照らし出されていた光景を目の当たりにして、ユリアは唖然とした表情を見せる。
・・・何故ならここが・・・
「め、迷宮の核・・・」
正真正銘、迷宮の心臓部。
『迷宮の核』だったからである。
今日も、テレサちゃんがふて寝をしてるので、私があとがきを書きますね。
あとがきというか・・・明日のことなんですけど、もしかすると更新できないかもしれません。
多分、大丈夫だと思うんですけど、明日はお姉ちゃんたちと、お姉ちゃんの故郷に戻ろうって事になってるんです。
なので、到着するまでは更新できないかもしれません。
え?主さんの名前が上がってない?
えっと、主さんとお姉ちゃんの故郷は別々の場所なので、一緒には行かないです。
と言っても、100kmくらいしか違わないんですけどね。
100kmも違えば相当違う?
そうですか・・・
私にとっては、100kmも1000kmも10000光年も、大して違わないと思うんですけどねー。
今度、試しに、テレサちゃんを思いっきり遠くに飛ばしてみようかなぁ・・・。




