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14.17-23 極秘プロジェクト?23

 ワルツの授業は午前中で終わりなため、昼食を理由にミレニアの話を切るというのは有効な事だった。ただ、問いかけられた側のワルツとしては——、


「(あの子、痛いところを突いてくるわね……)」


——と、内心では悩んでいたようだ。次回もうまく誤魔化せるとは限らないのだから。


 ちなみに。ミレニアたちは、ワルツが何かを隠しているとは思っていなかったようである。それこそ、ミレニアが問いかけたとおりの内容で、ワルツがその気になれば、学院の学生程度、自由に使役できる力を彼女は持っているのである。それをしないということは、そもそもやる気が無いと言うことの証左。そのせいか、特別教室の学生たちの中には、ワルツの事をある意味で神格化する者までいたようだ。……自らの利益を捨てて、自分たちに叡智を与えてくれる女神のような存在ではないか、と。もちろん、そんなことはあり得ないのだが。


 陰でそんな事を言われているなど知らないワルツは、地上に戻ってくると、その足でマグネアの所へとやってきていた。昏倒した編入生たちの付き添いとして残った彼女に、編入生たちの状況を確認するためだ。


「失礼するわよ?マグネア」


 学院長室の扉をノックすると、中からか細い声(?)が聞こえてきたので、ワルツは扉を開けて中へと入る。


 対するマグネアは、学院長のデスクで、ワルツの事を出迎えた訳だが——、


「はぁ……この度のことは、申し訳ございませんでした」


——デスクから立ち上がった彼女は、ワルツに向かって突然頭を下げた。


「えっ?何か謝罪するような事なんてあったっけ?」


「……私が選んだ研究者たちが、揃いも揃って倒れてしまった事です。もう少し若い者たちを選ぶべきではなかったかと、今になって後悔しております」


 マグネアは、今回のトラブル——つまり編入生たちが倒れてしまった件について、責任を感じているらしい。


 しかし、普段からトラブルまみれのワルツにとっては、編入生たちが倒れてしまった事など、正直なところ、どうでも良いことだった。むしろ、編入生たちが倒れてしまったことには、助かっていると言えた。


「あぁ、気にしなくて良いわ?おかげで、疎遠になっていたカタリナとも、すこし踏み込んだ話が出来たし……」


 と言いつつ、ワルツは苦笑する。その苦みの理由はただ一つ。彼女は、これから起こるだろう出来事を予想できていたのだ。


「(カタリナにネックレスを渡したってことは、他の人たちも欲しがるんでしょうね……。狩人さんとかユリアとか……。とりあえず、あの2人にもネックレスを渡せば、他の人たちのことは抑え込んでくれるでしょうから、追加で2つ作っておこうかしら?)」


 家に戻ったら、2人が待っているのではないか……。ワルツには、そんな予感がしてならなかったらしい。むしろ、待っていない確率の方が低いとすら考えていたようだ。


 対するマグネアは、ワルツの苦笑の意味を理解することはなく、単に今回のトラブルに対する反応だと考えたようである。


「本当に申し訳ありませんでした。彼らの体力では難しい事が分かりましたので、もしワルツさんが許して頂けるのなら、もっと若い人員に交代させて頂きたく考えております」


 編入生たちが倒れたのは、間違いなく年のせいだろう……。それがマグネアの考えだった。


 対するワルツも、流石にマグネアの言葉の真意は理解出来ていたらしく、彼女は首を横に振って否定する。


「いえ、その必要はないわ?私の経験上、たとえ若かくても、年老いていたとしても、結局、反応は変わらないはずだから。その辺の若い子をいきなり月に連れていっても、驚いてトラウマを抱えるだけよ?だったら、一度、驚きを経験した彼らをそのまま計画に参加させた方が良いと思うわ?」


「体力的に不安が残るのですが……」


「マグネアから見て、今回の授業って、体力と何か関係あるように見えた?むしろ、重力は小さいんだから、身体への負担も小さいはずよ?」


 別に身体を動かしているわけでは無いのだから、体力の問題など関係無いはず……。ワルツはそう結論づけていた。そんなことを考えながら、現代世界のことを思い出していた。


 ワルツが暮らしていた地球では、富裕層の高齢者たちが、重力の小さな月で余生を過ごすというのは、一般的に行われていることだった。重力が小さいために、足腰に負担が掛からず、腰痛などに悩まされなくて済むからだ。


 それを考えるなら、高齢の編入生たちが、月面研究所計画の足を引っ張ることにはならないはず……。ワルツはそう結論づけていた。


 対するマグネアは、自身の実体験から、ワルツの発言の意味を理解していたようだが、それでも、高齢者たちが迷惑を掛けるかも知れないという可能性を否定出来ず、即答できないでいたようである。彼女はワルツの問いかけに答えられず、眉を顰めながら、考え込んでしまう。


 そんなマグネアの悩みを察したのか、ワルツはある提案をする事を決めた。


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