14.17-21 極秘プロジェクト?21
「どーして、妾だけ飛べぬのか……。この悲しみ、苦しみ、怒りと飢餓感。お主には分からぬじゃろ?ア嬢」
「うわ、なんか、こっちに飛び火してきたし……」
ドス黒いオーラを纏ったテレサが、皆に重力制御魔法を教えていたルシアへと絡みつく。
対するルシアは、テレサに悪い事をしたわけではない。事実、クラスメイトたちは、ほぼ思い通りに宙を舞っていたのだ。飛べないのはテレサだけ。恨み節をぶつけられても、ルシアにはどうすることもできないのだ。
「私に言われても困るんだけど……。ダイエットする?」
「ダイエットしたところで、微々たるものゆえ、どんなに頑張ったところで飛べぬ事に変わりは無いのじゃ」
テレサは完全に拗ねていた。その場にいる25人中、飛べないのはテレサだけ。なぜ自分だけ重力の軛に囚われなければならないのか、考えれば考えるほど、恨み節しか思い浮かんでこない。
そんなテレサを前に、ルシアは内心、対応に悩んでいたようである。普段、テレサの事を雑に扱う彼女であっても、苦悩しているテレサの姿を見て喜ぶほど性根は腐っていないからだ。腐れ縁ではあるが、腐っていない関係。それがルシアとテレサの関係なのだから。
とはいえ、ルシアには、テレサの願いを叶えることは出来なかった。テレサの願いは、惑星上でも、月の上でも、あるいはあの世があったとしても、いつだってただ一つ。自分の意思で自由に空を飛ぶことだからだ。
ルシアが関与したところで、彼女に出来る事など、テレサを浮かべる程度のこと。一応、彼女の体重を0にする事はできるが、結局、テレサの質量が大きすぎて、彼女が重力制御魔法を使えたとしても、自分の意思で移動する事はほぼ不可能だった。精密な計測機器でかろうじて判定できるほどの小さな推進力が出る程度である。
だからこそ、ルシアは悩んだ。テレサの願いを叶える方法は無いか、と。
「(んー……テレサちゃんのことを背中に乗せて飛ぶ?意味ないよね……。もう、自分で乗り物を作って、飛んでもらうしかないんじゃないかなぁ?)」
結論まで2秒。結局、思い付かなかったらしい。
「もうね。テレサちゃんの場合は、自分の力で飛ぶしかないと思うよ?私の力で浮かべることは出来ても、テレサちゃん、それで納得しないでしょ?」
「……やはりそれしかないか……」げっそり
テレサはこの場で空を飛ぶことを諦めた。ただ、すべてを諦めた訳ではなく——、
「必ず自分の力で飛んでみせるのじゃ」
——と想いを新たにして。
ただ、テレサの呟きを聞いていたルシアとしては、あまり納得がいかなかったらしく、小さく眉を顰めている様子だった。テレサは空を飛ぶことになると、危険な事も平気でやるのである。テレサから何度か説得を受けて、今では文句を言わなくなったルシアではあるが、テレサが空飛ぶ乗り物を作るというのは、内心では正直言って反対だったのだ。絶対にやめさせたい、とすら思っているほどだ。
だが、そんなことをしてしまえば、テレサの夢を奪ってしまうことになる……。それはルシアとしては不本意なことだった。腐れ縁の親友の夢を自分の手で刈り取るなど、ルシアには出来るわけがなかった。
……と、親友がそんなことを悩んでいると知っているのか知らずか、テレサはすっかりその場で宙を舞うことを諦め、思考に耽っていたようである。一人ブツブツとつぶやきながら、頭の中で設計図を組み立てては、白紙に戻し……。理想とする乗り物を構築しようとする。
それがどんな乗り物なのか……。この時点では、テレサにしか分からない事だ。
ただ一つ言える事は、ただ空を飛ぶ乗り物を作るだけなら、彼女の腕やルシアの協力があれば、1日足らずで簡単に作ることができる、ということだ。それが何日どころか、何ヶ月もかかっているというのは、理由があってのこと。テレサにもテレサなりの"友人"に対する想いというものがあって、それを大事にしながら、モノづくりを進めていたのだ。
「いったい妾は何を作っているのじゃろうのう……」
「えっ……何か作ってたっけ?ガラクタ?」
「……たまに、本当にガラクタを作っておるのではないかと誤解してしまうことが——って、ガラクタではないわ!」ぷんすか
テレサの"空"は、遙か彼方。目で見えるよりも遙か遠い所にあると言えるのかも知れない。




