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6中-14 迷宮の中で2

GL回(?)、閲覧注意(?)なのじゃ!

・・・ユリアぁぁぁ!!!抜け駆けは許さぬのじゃぁぁぁ!!!

初めてこの地に迷宮が出来たのは、カノープスやユキたちが生まれるよりも、遥か昔の事だった。

その当時、この地には、強大な力を持った『魔王ビクセン』が住んでいたと言われ、()の者が、勇者との決戦の地として作り上げたのが、この地の迷宮の始まりだと言われている。

その辺の話は、どうやらマグマで出来た大河とも密接に関わっているらしく、この世界における神話のようなものであると言えるだろう。


そんな逸話のある迷宮だが、その詳しい生態については多くの謎に包まれたままであった。

通常の生物とは異なり性別が存在せず、単性での生殖も行われない上、分裂などによって増えることもない。

現代世界の常識に当てはめるなら、宇宙から来た外来生物と真っ先に疑われてもおかしくない、非常に特殊な生物である。

遺伝子自体も存在しないので、生物の系統樹の中に含まれない事を考えると、ある意味、巨大なウィルスのようなもの、と言えるのかもしれない。


では、彼らは一体どのようにして生じるのか。

全てがそうであるとは限らないが・・・(かつ)て、アルクの村近くにある草原で、ルシアが魔法の披露をした際に、小さな迷宮が生じたのが、その良い例だろう。

その地に溜まった魔力が、いつの間にか意思のようなものをもって、それが周辺の土壌や草木、さらには動物を取り込むことで、迷宮を形作るのである。


つまり、複数の迷宮が重なるようにして生じたこの地では、過去に魔力が関わる大きな事件が起ったことは間違いない、ということになるだろうか・・・。




さて。

ワルツ達が攻略を進めている(?)この迷宮はデフテリー(第2)だが、プロティー(第1)と比較して年齢が特別に若い、というわけではなかった。

故に、迷宮自体の獲物を捕らえようとする経験的な能力(レベル)は、この世界の他の迷宮と比べても類を見ないほど高い、と言えるだろう。

・・・そう、神話の時代から、何度も魔王と勇者たちとの戦いが繰り広げられてきただろうこの地で、今までずっと生きてきたのだから。


そんな迷宮の最深部で・・・


「ど・・・どうして、こんなにシリウス様がいるですか・・・もしかして罠?!」


ユキA〜Fを前にして、狼狽えるユリア。


「んー、これ、言っていいのかどうか分かんないんだけど・・・ボレアスの首脳って全員、魔法で変身したユキたち姉妹よ?」


「え・・・」


「あ、私がバラしたってこと秘密にしておいてね?」


そう言いながら、罠を警戒して、遠目からユキたちの容態を確認するワルツ。

どうやらユキ達は他の市民たちと同じく、意識は無い様子だったが、呼吸は続けているようであった。

むしろ、死んでいたなら、ワルツはユリアとこんなやり取りをしていなかっただろう。


ただ、目立った外傷が無いとはいえ、重体であることには代わりはなかった。

恐らくその原因は、彼女たちが身に着けていた魔道具の変身魔法が解けているところから推測するに、大量の魔力を吸い取られてしまったから、ということになるのだろう。

まさに、この世界特有の捕食方法と言えるのではないだろうか。


「まだ・・・大丈夫そうね」


「・・・よかったぁ」


ワルツの言葉に、胸を撫で下ろすユリア。


それからユキたちを、地面から5mm程度、重力制御で持ち上げて、これ以上、迷宮に魔力を吸われないようにしてから、ワルツは周囲の違和感について口を開いた。


「・・・ねぇ、なんかおかしくない?」


「え?何がですか?」


「いや、だってさ?このフロアって、全部がボス部屋みたいなものじゃない?特に横穴が開いてるわけじゃないし・・・」


「・・・そういえばそうかもしれませんね」


これまでのフロアと違って、壁が薄っすらと光を放っていたためか、ユリアにも周囲の状況が(かろ)うじて見えていたようである。


「それで思うのよ。ボスどこにいるのかなって」


「・・・あ、確かに」


ここに来るまでのフロアでは、ボス部屋の中心に、強力な魔物(?)が鎮座していたのである。

そして、このフロアでは、部屋の中心にユキたちがいたのだ。


・・・つまり、


「・・・い、いや・・・それは」


「でも、それ以外に考えられなくない?」


ユキたち(魔王)6人が、このフロアのボス・・・としか考えられなかったのである。


「・・・実は偽物だったりしませんか?」


「突っついても触手を伸ばしてこないところ見ると、多分ミミックじゃないし、色も白くないから迷宮が作り出したボスの幻影的なもの、っていうわけでも無いと思うんだけど・・・」


と、これまでに出てきたトレジャーボックス(ミミック)と、真っ白な姿のボスたちを思い出しながら、そんな考えを口にするワルツ。


「でも、何にも関係なくここに倒れてるっていうのも考えにくいから、例外的な形で、迷宮のルールの中に取り込まれちゃった可能性は否定出来ないわよね・・・」


つまり、そうなると・・・


「じゃぁ、シリウス様方をどうにかしないと、次の階層にも行けないし、外にも出られないってことですか?!」


ということになるだろうか。

ただ、現状だけを切り抜いて考えるなら、迷宮の最深部に、ユキたちと共に隔離されてしまったようにも見なくはないのだが。


「・・・」


ユリアの言葉に、眉を顰めながら考えこむワルツ。


・・・そんな時の事であった。


ゴゴゴゴゴ・・・


何か硬いもの同士がこすれ合って、移動する音が聞こえてきたのである。

・・・それも、周囲の壁一面から。


「な・・・何ですか?」


「ん・・・?・・・うわぁ・・・部屋のサイズが、だんだん小さくなってってる・・・」


アクティブソナーユニットが示す壁までの距離情報が、徐々に小さい値へと変わっていっている様子を確認して、ワルツは頭を抱えた。

どうやら、タイムリミットを作り出すギミックらしい。

要するに、生きてこの場所を出たければ、ユキたちを倒すしか・・・つまり彼女たちの息の根を止めるしか無い、ということなのだろう。


「えっ・・・こ、これから、どうなるんですか?」


自分たちがどうなるのか、分かっていて問いかけるユリア。


「・・・10割方、壁に押しつぶされるでしょうね・・・」


「やっぱりそうなんですか?!8割とか9割に負けてくれないんですか?!」


「・・・それでも多分、あんまり変わんないと思うけど・・・」


ともあれ、このままここでじっとしていてもどうしようもないので、ワルツたちは周囲に逃げるための場所や、迫り来る壁をどうにか止める方法が無いかを探し始める。


だが、どこかに壁を止めるためのスイッチがあるわけでもなく、逃げ込むための窪みもなかった。

まさに、絶体絶命のピンチであると言えるだろう。


ただ、ワルツ単身なら、たとえ壁に押しつぶされたとしても、そのせいで身体が壊れてしまうということは考えられなかった。

最悪でも、腹痛に我慢して石を飲み込み、エネルギーを補給すれば、外へと脱出することも不可能では無いのである。


ただ、それでは、腹痛で戦闘不能に陥っている間、重力制御も使えなくなってしまうので、目の前のユキたちと、そして腕の中にいるユリアを犠牲にしなくてはならないのだが。

それをワルツが是とするわけがないので、結局のところ、絶体絶命に変わり無かったのである。


ゴゴゴゴゴ・・・


「わ、ワルツ様!」


いつの間にか、既に部屋のサイズが半分以下になってしまっていた事に気づいたユリアが、声を上げる。


「くっ・・・」


『ル、ルシア!』


いよいよ、行動に選択肢が無くなってきたワルツは、一縷(いちる)の望みを外にいるだろうルシアたち託そうとした。

・・・だが、


「ダメ・・・ノイズすら聞こえない・・・」


今いる場所が迷宮の中心部、あるいはそれに近い場所であるためか、無線通信システムからは、ルシアからの応答も、更には一切のノイズも聞こえず、まるでこの空間だけが周囲の世界から切り離されてしまったような状態であった。

あるいは、電波の出力を最大まで上げれば、外に届く可能性も否定は出来なかったが・・・近くにユリア達がいる以上、その選択は出来なかったのである。


「これで本当に・・・」


ゆっくりと、だが着実に迫り来る壁に、自らの最期を悟るユリア。


そんな壁が、少しだけ宙に浮いていたユキたちの身体を押して、中心にいたワルツたちへと迫り・・・そしてあと一息で飲み込まれてしまう、そんなサイズまで小さくなった時、


ゴゴ・・・・・・


・・・不意に動きが止まったのである。


「・・・えっ・・・」


全員が入るには、少々手狭な空間の中で、殆ど死を覚悟していた状態のユリアが驚きの声を上げる。


そんなユリアの背後では、彼女と180度反対のことを考えている者がいた。


「・・・諦めないわよ・・・」


機動装甲のライトを消して、ホログラムすら停止させ、消費電力が最小になるように機能を制限しながらも、重力制御を使って最低限の生命維持空間を作り出していたワルツである。


「・・・ワルツ様・・・」


ユリアは、今にも消えかかっていた自分たちの命を、どうにか延命しようとしてくれている、そんな現主(げんあるじ)の名を呟いた。

・・・ただし、どこか寂しそうな表情を浮かべながら。


「・・・ワルツ様、もういいのです。このままだと、ワルツ様も手遅れになってしまいます。私は・・・私たちは、この国に仕える者。例えここで命を落としたとしても、それはとうの昔に覚悟していたことなんです。だから・・・私たちを見捨ててください!」


そう言ってユリアは大粒のナミダを零した。


すると、


「・・・あのねユリア」


そんな声とともに、ホログラムを再度展開したワルツがユリアの前に現れた。

そして、ユリアの頬を流れる涙を拭いながら、彼女は呆れた表情を見せつつ口を開く。


「シルビアにも言ったけど、命は粗末に扱うもんじゃないと思うのよ。せっかくある生命なんだから、最後の最後まで足掻いてみたらどうかしら?」


と、まるで、まだできることはある、と言わんばかりのワルツ。


「何か助かる方法があるんですか?」


「んー、無い」


この雰囲気の中で、そんな冗談のようなことを口にするワルツに、ユリアは、


「・・・ふふっ」


思わず笑みを浮かべた。


「・・・ここ笑うとこじゃないと思うんだけど・・・」


「いえ、最後までワルツ様らしいな、って・・・」


「最後ね・・・」


そう言って・・・ワルツは溜息を吐いた。


そんな彼女に、ユリアは再び笑みを見せた後、目を伏せて、少し口を尖らせながら呟いた。


「えっと、ワルツ様?一つお願いごとがあるんですけど・・・」


そう言って、足をブラブラさせながら、両手の指を組んでもじもじさせるユリア。

そのままワルツが黙っていると、しばらくの後、ユリアは決心したのか、一気に胸の内を口にした。


「・・・あのっ・・・キスしてください!」


「え・・・?」


「・・・私、まだキスとかそういうのしたことが無くって・・・このまま死ぬなんてことがあったら、浮かばれないです。・・・もしかしたら、ワルツ様のことを呪ってしまうかもしれません」


そう言ってユリアは、笑みを浮かべつつ・・・だが、真剣な眼差しをワルツに向けた。


「・・・」


そんなユリアに、これまでに無かったほどの難しい表情を浮かべるワルツ。

まさに、人生の分岐点、といった様相である。


「大好きなワルツ様なら・・・」


そう言いながら、手の届く所にいたワルツの頬に、手をやるユリア。

いつもなら振りほどく彼女の手を・・・しかしワルツは、そのままにさせて、どこか諦めたような表情を浮かべながら呟いた。


「やるしか無いか・・・」


「えっ・・・」


てっきり断られるものだと思っていたユリアは、そんなワルツの言葉に、これまでにない程、明るい表情を見せる。

そしてホログラムの姿のワルツは、決心を決めたような視線をユリアに向けながら、彼女の露出していた両肩に、静かに手を置いた。


「・・・」


すると、嬉しそうでありながら、どこか緊張した面持ちで目を(つぶ)り、少しだけ顎を上げるユリア。


ワルツはそんな彼女の唇を・・・通り越して、耳元まで口を近づけると小さな声で、ユリアに告げた。


「ここから出る方法が無いって言ったの・・・あれ、嘘だから」


「えっ・・・」


カプッ・・・


・・・そしてワルツは、ユリアの首筋に、かぶりついたのである。

なんかよく分かんないけど、テレサちゃんが奇声を後に、コタツでふて寝を始めちゃったから、私があとがきを書こうと思います。

・・・もちろん、尻尾から出火したら困るので、電源は切っておきましたよ?


えっと、迫り来る壁についての補足です。

どんな壁かっていうと、紙を巻いて筒状にした感じ、って言えば分かりますか?

ぐるぐる巻いて、ぎゅって締めると、中の隙間は小さくなりますよね?

あんな感じです。


あとは・・・ユリアお姉ちゃんの肌の色のことかなぁ・・・。

なんか、主さん曰く、『想像できねー』って言ってたので、もしかすると髪の色を含めて変わるかもしれません。

ちなみに今は、紫色の髪で、褐色の肌って設定ですね。

まぁ、私はそれでいいと思うんですけど。


ところで・・・。

話は大きく変わって、テレサちゃんの好物の話です。

いなり寿司が好きなのは私と同じなんですが、なんか狩人さんの話だと、山芋の千切りが好きらしいです。


なので、この前、私の作ったクッキーに、隠し味として山芋を入れたんですけど、なんか味が違うって言われたんですよ。

テレサちゃん、昔、お姫様だったせいか、舌が贅沢ですよね。

もう少しキャベツが入っていたほうがいいとか、お肉が入っていたほうがいいとか・・・。

なんかそれって、クッキじゃない気がするんですよ。

テレサちゃん、一体、どんなクッキーが食べたいんでしょうか。

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