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14.17-14 極秘プロジェクト?14

「静かな馬車ですね……」

「いや、そもそも、馬が引いてないから()車と言って良いのかすら疑問だがな……」


 ミレニアとジャックは月面ローバーの上で、周囲の景色に遠い視線を向けていた。文字通りに遠くを見ていたせいというのもあるが、彼女らの視線は、もっと遠い場所を眺めていたようである。むしろ、景色など最早、視界には映っておらず、心の内に視線が向けられていたと言うべきか。少なくともその目に、輝きは無い。


 どこを見ているのか分からないボンヤリとした表情を見せていたのは、2人だけに限った話ではなかった。特別教室の学生たちのほぼ全員が、荷馬車に揺れる子牛のごとく、無言で虚ろな表情を見せていたようである。不安を感じているわけでも、景色に圧倒されているわけでも、驚いているわけでもなく、ただボンヤリとした様子でローバーに揺られる彼らのことを、言葉で表現するのは難しい。それでも一言で言うなら——、


「なんだか皆様、元気が無いみたいですわね?」


「んー、なんかもう、どうにでもなーれー、って感じだね?」


——というルシアの言葉が的を射ていたと言えるかも知れない。


「お姉ちゃんと関わる人たちって、だいたい最初の内はこんな感じになるから大丈夫じゃないかなぁ?」


「あら、そうですの?」


「マリアンヌさんも、ちょっと前はこんな感じだったような気がするけど?」


「私も……?あぁ、そうですわね。最初、ルシアさんたちと関わって、混乱していた時期もありましたわね。でも、考えている内に分かりましたの。深く考えるだけ無駄って。それからはかなり心が軽くなりましたわ?」


「あ、うん。みんな大体、そうなっていくんだよねー」


 果たして、自分はどうだっただろうか……。ルシアは、かつての自分の事を思い出そうとするが、上手くは思い出せない。最初から慣れていたような気もするし、驚いていたような気もする……。


 一人、首を傾げるルシアだったが、結論を言えば、比較的最初から慣れていた、と言うのが正解である。むしろ、ワルツの方が圧倒されて、今の学生たちと同じような表情を見せていたりする。


 ルシアが思い悩んでいる(?)と、いよいよエリア3に繋がる巨大な扉が、目の前に迫ってきた。サイズはエリア1とエリア2-1を繋ぐ扉と同じだ。機構も同じ。昨晩、ワルツに設計図を見せられたルシアが、土魔法を使って構築したものである。もしもすべて異なる扉だったなら、未だ彼女は建物の完成に漕ぎ着けてはいないだろう。


 そういった意味では、エリア1も、エリア2群も、同じ構造だったからこそ、ほぼ一瞬で構築できたと言えた。しかし、この先に待ち受けているエリア3以降は、エリア1や2とは異なる構造をしているため、未完成。唯一完成しているのは、エリア3-1だけだった。


 ちなみに、エリア3-1を作ったのは、ルシアではない。もちろん、彼女も手伝ってはいたが、材料の提供だけであり、主に構築を行ったのはワルツと——、


「……いよいよなのじゃ」

『さぁ、みなさん、どのような反応を見せてくれるのでしょうね?』


——テレサ、それにポテンティアだった。皆の合作だ。


 そしてローバーが止まり、ワルツが降りて、壁のパネルを操作する。すると——、


   ゴゴゴゴゴ……


——という大きな音を立てながら、扉が左右に開いていった。


 その扉を見上げながら、ワルツは納得げな表情を見せつつ、内心でこんなことを考えていた。なぜこれほどまでに大きな扉を作ったのか、その理由について。


「(これだけ大きな扉なら、機動装甲の出し入れだって楽なはずよね……。それに、あの()の転移魔道具も、巨大な扉を維持できるような仕組みになっていないはずだから、入り込ませる隙は無いはずだし……)」


 大きな扉を作った一番の理由。それは、コルテックス対策だった。どんな扉でも転移門に変えてしまう彼女の魔道具は、転移元か転移先の扉が大きければ大きいほど魔力の消費が激しい()()だからだ。ゆえに、ワルツは隔壁の扉を無駄に大きく作ったのだ。コルテックスに月面基地へと入り込まれないように。


 なお、コルテックスの"どこ()でもドア"には、距離や相対座標も影響するので、公転している上、距離も離れている月面に転移門を接続する事は出来なかったりする。


 そして、いよいよエリア3-1が見えてくる。その場所は一見すると真っ暗であり、そして酷く明るい場所でもあった。要するに——、


「「「「わぁ……」」」」


「外が見える……」


——誰が上げたのかも分からないその言葉通り、外の景色を一望できる場所だったのである。


本当はもっと早く話を進めたいのじゃがのう……。

ポンポンと季節が変わる感じでの。


じゃが、そうすると、小枝殿の話と連携が取れなくなるし……。

もうダメかも知れぬ……。

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