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6中-13 迷宮の中で1

暗いトンネルの中を、上がって、下がって、曲がって、跳ねて・・・ユリア片手に進んでいくワルツ(機動装甲)


「・・・なんか、迷宮の中を攻略してるって感じじゃないですよね・・・これ」


「・・・何?バケモノ()が、捕まえた獲物(ユリア)を巣に持ち帰る感じ、って言いたいの?」


「んー、それも悪く無いですね・・・愛の巣ですか・・・」


・・・そう言って嬉しそうな表情を浮かべながら、顔を赤らめるユリア。


「・・・ここに置いてこうか?」


機動装甲の肩に腰を掛けていたワルツ(ホログラム)が、ユリアに向かってニッコリとした視線を向けた。


「えっ・・・ちょっ・・・そ、それ、シャレにならないですよ!」


「なら、発言には気をつけることね」


「うぅ・・・」


・・・そんないつも通りのやり取りをしながら、1分ほど移動した頃。

2人は比較的大きな空間へと辿り着く。


「・・・ねぇ、ユリア?この場所ってさぁ・・・」


「・・・もしかして、ワルツ様も同じこと考えていたりします?」


彼女たちは一体何を考えたのか。

・・・その答えは、部屋のど真ん中に()()()()()()


シャァァァァ!!


「白鳥?」


「ワルツ様!ここボケるところじゃないですよ!あれ、ヒドラです!白いですけど・・・」


・・・どうやらここは、所謂ボス部屋らしい。


パァンッ!!


「それはいいんだけどさ・・・なんか、この通路、ドンドン奥の方に向かってるみたいじゃない?」


「・・・あの、ワルツ様?なんかヒドラが勝手に爆散して死んじゃったみたいなんですけど、何かやりました?」


「え?いや、邪魔だったから、石ぶつけただけだけど・・・」


「・・・」


ワルツの投石は、どうやら即死効果を持っていたようである。


その直後、ボスを倒したためか、


ブゥン・・・


そんな低い音と共に、地下へと繋がる階段と、トレジャーボックスが現れた。

トレジャーボックスは転移魔法で現れたとして、階段の方は空間制御魔法によって隠蔽されていたのだろうか。


「それでどう思う?このまま進むべきだと思う?それとも戻るべきかしら・・・って、進んでも戻っても結局同じよね・・・」


「そうですね・・・って、トレジャーボックス放置して進むんですか?!」


と、地下に繋がる階段へと足を進めていたワルツに対して、抗議の声を上げるユリア。


「いる?別にいらなくない?武器とか武具なら作ったほうが高性能だし・・・」


「えっと・・・それはそうなんですけど・・・」


「・・・?」


「いや・・・何か口にできるものが入っているんじゃないかな、って・・・」


「!」


ユリアのそんな一言に、あぁ、その考えはなかったわ!、といった表情を見せるワルツ。

彼女はすぐさま、降りてきた階段へと戻ろうとするが・・・


ブゥン・・・


階段は彼女たちの目の前で虚空へと消えてしまった・・・。


「んあっ?!」


「・・・」


階段があっただろう場所に向かって視線を向けたまま固まるワルツに対して、ジト目を向けるユリア。

それから、間もなく・・・


「・・・うん。先に進みましょうか」


「立ち直り、早いですね・・・」


ワルツ達は再び、迷宮の中を進み始めるのであった・・・。




この階層(?)から9階層目までは洞窟風、20階層目までが湿原風、さらに30階層目まで砂漠風・・・といった様子の()()()()迷宮の中を、コンフォーマルアクティブソナーなどを使ってスキャンすることで、迷うこと無く進んでいくワルツ達。

各フロアでは、必ず1匹以上のボス級魔物が出てきたが、彼らを倒した際に出てくるトレジャーボックスボックスには・・・まるで嫌がらせのように、これまたボス級の所謂ミミックしか入っていなかった。

どうやらこの迷宮は、ワルツたちのことを捕食する気満々らしい。


そんな出てくるボスを焼いて食べようかとも考えたワルツだったが、どういうわけか、倒した瞬間に光の粒子になって消えてしまうので、結局、食べることは叶わなかった。

そもそも、普通の魔物が全く出てこないこの迷宮。

どうやら、ボス級の魔物も、実際に生きているわけではなく、迷宮自身が作り出した幻影の一種のようである。


そんな迷宮のシステムを前に、ワルツは、この際、本当に石を食べようかと考えていたのだが、食べた瞬間から数十分程度の間、戦闘不能になるくらいに腹痛が襲ってくるので、ユリアを守らなくてはならない以上、下手な所で隙を見せるわけにもいかなかった。

あるいは壁に穴を開けて、名状しがたい迷宮の肉を加熱して食べることも考えたのだが、結局、食事に適したものでなければ、同じく戦闘不能になってしまうので、危ない橋を渡るわけにもいかなかったのである。


せめて飲むことの出来る水があれば、『質量』を持っているので、食事の代わりになるのだが・・・。

しかし、迷宮内に簡単に飲めそうな水は無く、綺麗な水を生成しようにも、水の原料となる水素を化合物から抽出するためには時間も手間も掛かるので、それもできなかったのである。


「あぁ・・・み、水ぅ・・・」


「あの・・・ワルツ様?喉乾いてるんですか?」


90階層を超えて、月面のようにクレーターばかりのフィールドに入った辺りから、水、水、と連呼していたワルツに、そんな問いかけをするユリア。


「いや、そういうわけじゃないんだけど、水さえ飲めれば、エネルギーが補給できるかなーって思って・・・」


「えっと・・・ダイエットですか?」


「ここでダイエットしてどうするのよ・・・。っていうか、一体何よ。水だけダイエットって・・・」


迷宮に入って、およそ1時間。

まだ空腹感に苛まれるような時間ではなかったが、あまりにワルツが(うるさ)すぎたためか、いい加減ユリアも喉が乾き始めてきたようである。


「・・・私も、喉が乾きました」


「そうよね・・・ここから出たら一杯やりたいところね・・・」


と、下戸のワルツが、ジョッキ片手に一気飲みする素振りを見せる。

すると、


「そういえばワルツ様と一緒に飲みに行ったことが無いんですけど・・・ワルツ様ってお酒飲めるんですか?」


狩人やカタリナたちと(たま)に飲みに行っているらしいユリアが、ふと湧いて出たそんな疑問を口にした。


「・・・」


そんな彼女の言葉に(エア)ジョッキを傾けた状態で、物理現象を無視した体勢のまま、固まるワルツ。


(・・・相変わらず鋭いわね・・・)


「・・・じー・・・」


ユリアはまるで嘘をついた子供を責めるような視線を、挙動が怪しげなワルツに向けた。


「・・・えーと・・・そろそろボス部屋ね」


ワルツは少々移動速度を早めて、そんなユリアからの追求を誤魔化すことにしたようである。


「もう、そんなところまで来ましたか・・・次はどんなボスが」


パンッ!


「・・・あの、ワルツ様?確認する前から殺害するのは、ちょっと可哀想だと思うんですが・・・」


「いや、なんか、こう・・・つい、むしゃくしゃして・・・」


「え・・・・・・あの、なんかすみません・・・」


そんな他愛もないやり取りをしながら、


パンッ!


・・・現れたミミックを流れ作業のように破壊して、下の階に進むワルツたち。


そして次の階へと降りると、そこには今までとは異なる光景が広がっていった・・・。


「ユリア?今、何階か覚えてる?」


「え?ワルツ様が数えてたんじゃないんですか?」


「いや実はさー、洞窟内の形状を計測するのに集中してたから、全く数えてなかったのよねー・・・」


「あ、はい・・・」


・・・なお、先ほどのフロアが99階である。

つまり、このフロアが100階ということになるだろう。


ワルツもユリアも、少々毛色の異なるフロアの光景に、ここが100くらいだと思うことにしたようである。


「ホント、100階とか、半端な数字よね。せめて64とか128とか256じゃないと、なんかむず痒くなるのよ・・・そう思わない?」


「すみません。何を言っているのか分かりません・・・」


「・・・そう」


ユリアの返答に、心底残念そうな表情を浮かべるワルツ。


まぁ、それはさておき。

迷宮の100階に足を下ろして、妙にだだっ広いフロアの中心に向かって足を進めるワルツ。


・・・そこで、ユリアの直感の凄まじさを、彼女は実感することになった。


『・・・!』


・・・見えてきた光景に、言葉を失う2人。

何故ならそこで、


「し・・・シリウス様!」


・・・ユキ達が地面に伏せていたからである。

そして続けざまに、


「・・・しかもたくさんいる・・・」


そんな呟きを、驚愕の表情を浮かべながら口にするユリア。

目の前のユキ達は、皆、変身のための指輪を付けているようだったが・・・迷宮に魔力を吸われてしまったためか、変身が解けてしまっているらしい。


(さて・・・どうしたものかしらね・・・)


いよいよ、ブーストモードが使えないことが、大きな足かせになってきたと感じ始めたワルツ。


・・・こうして彼女たちの迷宮攻略は、攻略を始めてから、1時間強で佳境を迎えることになったのである。

最初はノリノリで書いておったのじゃ。

ナレーターがノリノリで解説する的な感じだったのじゃ。


ところがじゃ。

次話を書いておるときに、頭がいっぱいになってしまったので、仮眠を取ったのじゃ。

するとどうしてじゃろう・・・。

・・・なんか違うと感じてしまうようになってしまったのじゃ。


難しいのう・・・地の文。

やはり、淡々と書くのが良いのじゃろうか・・・。

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