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14.17-06 極秘プロジェクト?6

 ハイスピアの2つ目の発言に、教室の中が静まりかえる。理解不能、といった様子だ。


 それから徐々に喜色が広がっていく。皆、ワルツが学院を去るわけではないことを理解し始めたのだ。


 その様子を見ていたワルツは、内心で、今すぐに帰りたい、などと普段通りの事を考えたようである。しかし、まだ何も始まってすらいないので、ひとまず、ハイスピアの説明に身を委ねることにしたようだ。本当に居たたまれなくなってきたら、逃げてしまえば良いなどと、心のどこかで思いながら。


「ワルツ先生が受け持つ科目は、科学。これまで学院にはなかった教科です。先生曰く、錬金術でも薬学でもない、別の科目とのお話ですが……まぁ、その辺は皆さんも知っていると思うので、この場では詳しく説明しません」


 というハイスピアの言葉通り、ワルツは科学を担当することになった。ただし、科学そのものを教える訳ではない。彼女は、月面研究所計画を進めるプロジェクトリーダーであり、そのために必要な知識を皆に教えるというのがの役割である。


 そのため、授業と言える授業は実質的には存在せず……。計画を進める中で必要になる知識を、実作業の中で学んでもらう、というOJTのような授業を考えていたようだ。


 ちなみに、テストはあるらしい。ただし、筆記でもレポートでもないようだが。


「では、早速、新任のワルツ先生から、一言頂きましょう」


 ハイスピアが、テンプレート通りに、ワルツに話を振る。


 対するワルツとしては、皆の前で喋るのが大の苦手だったのだが、展開は予想出来ていたためか、端的に、こう口にした。


「えっと……皆?またよろしく?」


 3秒である。それでも、皆、ワルツの挨拶に嬉しそうな反応を見せていて、満足げだった。


 こうして、ワルツは、生徒から、特別教室の講師に昇格(?)したわけだが、話はそれで終わりではなかった。


「では、次の話題に移ります」


「「「「……えっ?」」」」


 ワルツの件について話し終えたハイスピアが、急にそんな事を言い出したのだ。2つ話があると言っていたにもかかわらず、だ。


「先生!さっきお話は2つだって言ってなかったか?」


 ジャックが思わず問いかけた。敬語を忘れてしまうほど、困惑しているらしい。


 対するハイスピアは、やれやれ、と言わんばかりに首を横に振る。


「いえ、ワルツさんの話は1つ目の話です。もう1つ別のお話があります」


「ああ、そうなん……ですか……?」


 何となく釈然としない気分になりながらも、ジャックはハイスピアの説明を受け入れた。


 対するハイスピアは、とても良い笑顔を浮かべながら、話を続けた。


「今日から皆さんに仲間が増えます!」ニコォ


「「「「ええっ?!」」」」 


 仲間が増える——つまり、編入生が増える、ということ。その事実を聞かされたジャックたちは、一斉にざわめいた。


 そして、ハイスピアが廊下の方に視線を向けると、ガラガラ、と扉を開けて、編入生が入ってくる。1人、2人、3人……。合計5人。一気にクラスメイトが増えて、合計30人となる。


 そんな編入生たちについて、ハイスピアは1人1人説明し、それを皆が嬉しそうに聞いていたわけだが——、


「(あー、またこの展開?)」


——約1名、いや、正確には約2名が、ジト目を編入生たちに向けていたようだ。1人目はワルツ。2人目はポテンティア。そんな2人に共通して言える事は、幻影魔法の類いが効かないこと。


 つまり、やってきた編入生は、見た目通りに若者の編入生ではなく——、


「(贔屓目に見て、おじさん、おばさん……いや……無理ね。お爺ちゃん、お婆ちゃんばかりじゃない……)」


——自分の姿を偽った老人ばかりだったのである。どうやら、学院長のマグネアが、月面研究所計画に巻き込もうと、5人を招き入れたようだ。学生フィンに扮している彼女の満面の笑みが、その証拠だと言えるだろう。


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