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14.16-38 ワルツ先生21

 学院長室から出てきたワルツは複雑そうな様子だった。苦笑を浮かべたいが、浮かべられない、そんな表情だ。


 そんな姉の様子を見て、ルシアは確信する。


「お姉ちゃん……先生になるんだね?」


 いきなり踏み込んだ質問が飛んできたことで、ワルツは、うっ、と苦々しい表情を浮かべるも……。


「はぁ……。まぁ、そんな感じなのよ。学院の先生方には手に負えないから、特別教室専任の先生になれってさ?」


 そう口にするワルツの反応自体は、吝かでないといった様子。ワルツがマグネアとどんな会話をしたのだろうと予想していたアステリアたちは、予想が当たったせいか、あるいは驚きが大きかったせいか、「おぉ!」と声を上げていたようだ。


 しかし、ルシアの表情は余り芳しくない。


「……他にも何か言われたんだね?」


 先生になれと言われ、それを受け入れただけなら、姉はきっと、恥ずかしそうに苦笑を浮かべるだけのはず……。ところが今のワルツの様子は、ルシアが考えていたものとは異なり、想像していたよりも暗かった。


 対するワルツは、自分の考えが態度に出ていたのかと察したのか、ガックリと肩を落とす。


「色々と聞いちゃいけない重い話を聞いてきたのよ。聞きたい?」


「「「「えっ」」」」

『いえ、重い話であれば遠慮しておきます。既に僕らの積載量は過積載気味なので……』


「貴方に最大積載量とか無いでしょ……。まぁ、言いふらす話でもないし、大して重要な話でも——」


 と、ポテンティアの冗談にワルツがツッコミを入れたタイミングで、廊下の先から誰かが歩いてきた。クラスメイトのミレニアだ。祖母であるマグネアの所に何か用事があるのかも知れない。


「……大して重要な話じゃない、って断言できないのが悲しいところなのよね……」


『「「「「えっ?」」」」』


 皆がワルツの発言に首を傾げている中、6人の横をミレニアが通過していく。ミレニアがワルツたちに気付いテイル様子はない。テレサの幻影魔法の影響だ。


 ワルツたちの前を通り過ぎたミレニアは、そのまま学院長室の扉をノックして、部屋の中へと姿を消した。一体、何を話しているのかと気になるワルツではあったものの、流石に家族同士の会話を聞く気にはなれなかったらしい。


 結果、ワルツは、その場を立ち去ることにしたようだ。


「じゃぁ、帰りましょうか」


『「「「「えっ」」」」』


「プライベートな話だから、何を聞いたのか話すつもりはないわよ?多分、話を聞いたら……明日からミレニアと話をするのが辛くなるはずだから」


『「「「「…………」」」」』


 ワルツが何を聞いたのか、とても気になる……。とても気にはなるが、内容を聞くのが怖い……。そんなジレンマに苛まれながら、ルシアたちはワルツに続いて、下校することにしたようだ。


  ◇


 そして下校途中のこと。


 学院から自宅のある村まで一直線に繋がった陸橋の上を歩きながら、ワルツがルシアに対してポツリと零す。


「ルシアさ……この世界に、人を生き返らせる魔法ってあると思う?」


「うん?テレサちゃんの事?」


「いえ、テレサは半分以上死んでるから、蘇生とは別ね」


「…………」げっそり


「んー、そんな魔法があったら、真っ先にテレサちゃんの事を……いや、今のままの方がいっか。ぞんざいに扱っても壊れないし……」


「ちょまっ?!今、お主、シレッと妾の事をぞんざいに扱うとか、人に向かって言ってはならぬ言葉を——」


「人を生き返らせる魔法かぁ……。私には分からないかなぁ。肉片とかを増やして人の形を作ることは出来ると思うけど、それってただの人形みたいなものだし……。んー、私に聞くより、カタリナお姉ちゃんとかに聞いた方が良いと思うよ?」


「……うん。まぁ、カタリナに聞いても、知らない、って帰ってくるのは分かっているんだけれどね……」


 そう言った後、口を閉ざしてしまうワルツ。そんなワルツの態度を見て、彼女が学院長室で何を言われたのか、ルシアたちは何となく察することが出来たとか出来なかったとか……。


気付いたら、今日から8月なのじゃ。

もうダメかも知れぬ……。

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