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14.16-19 ワルツ先生2

 ワルツが呼びかけたとき、騎士科の中で最も剣技が上手いと言えるラリーがすぐに出てきたのは、彼の直感が働いたからだった。以前の剣技の授業では、ワルツは諸事情により、担当教師の前で実力を見せられず、ラリーにとっては未知の存在のはずだった。しかし、ワルツの所属しているグループには、異常と呼べる力を持った者たちが多く所属しており、その1人であるワルツが例外的に弱い訳がない、とラリーは直感したのだ。


 ラリーの予想は正しかった。ワルツは異常な腕力を持っているわけでもなく(?)、特殊な能力を持っているわけでもなく(?)、ただひたすらに速かったのだ。少なくともラリーには知覚できなかった。ワルツの配慮で、彼の頭と胴体が別れてしまうことはなかったものの、その代わりに彼のプライドは、真っ二つに切り裂かれてしまったようだった。


「ありえ……ない……」


 そう言って首に木剣を当てられたまま固まるラリー。


 対するワルツは、ちょっと速すぎただろうか、と後悔しながら、木剣を収め、ラリーが凹まないよう、自分の行動について言い訳を口にする。


「私の今の動きは、魔法——みたいなもので剣の動きと身体の動きを制御したものだから、速くて当然よ?皆も、魔法で剣や身体を無理矢理動かせば、このくらい簡単にできると思うわ?多分ね」


「そんなこと……」


 出来るわけがない……。ラリーがそう口に出す前に、ワルツは次にミレニアに対して声を掛けた。


「さっき、魔法科の代表として、ミレニアが出てきていたわよね?ミレニアだったら出来るんじゃない?魔法を使った高速剣的なやつ」


 対するミレニアは悩んでしまう。彼女が考える限り、魔法で剣を高速化する方法は考えつかなかったのだ。


「ちょっと……方法がよく分からないのですが……」


 戸惑うミレニアを前に、ワルツは「ふっ」とニヒルな笑みを浮かべてから、ポテンティアに目配せした。


 対するポテンティアは、当初、ワルツが何を言わんとしているのか、当初、理解出来なかったようである。ポテンティアは身体が機械で出来ているとは言え、ワルツからの無線通信を受信できるわけではないからだ。


 しかし、彼はすぐに答えへと辿り着いた。


『(なるほど。僕に"アレ"の真似をして、ミレニアさんの力を引き出せというのですね!)』


 直後、彼は周囲を見渡し、ミレニアが全力を出しても他の人間を巻き込まない場所を探し出してから、ワルツに目配せを返す。


 対するワルツには、ちゃんとポテンティアの意図が伝わっていたようだ。


「ミレニア?ちょっと"アレ"を見てもらえる?」


 と言って、あらぬ方向を指差すワルツ。するとミレニア他、その場にいた者たちの視線が、とある方向へと向けられた。


 そこは、訓練棟の中でも誰もいないだだっ広いスペースだった。たとえ魔法で攻撃をして、外したとしても、他の者たちには影響が出ないスペースだ。


 そこに黒い物体がいた。親指大の物体だ。カサカサと動いて、移動する怪しい"アレ"である。いや、こう言うべきか。


「G……いや、ポテか……」

「多分、ポテちゃんだね」

「ははは……」

「アレを見て、ポテ様と即断できるのが——」


 すごいところだ、とマリアンヌが口にする前に、ミレニアが動く。


「滅びろ!!虫けらが!!」ドゴー


   ズドォォォォン!!


 ミレニアの叫びにも近い声と共に、爆発的な現象が起こる。その名を口にするのも憚られるような物体G(あるいは点P(ポテンティア)とも言う)を中心に魔法が炸裂したのだ。言うまでもなく、ミレニアの魔法である。


 しかし、そんな彼女の手には、先ほどまで握られていた木剣は無くなっていた。ではどこに行ったのかというと——、


『いやー、今回ばかりは、本当に消されるかと思いましたよー』


——20m程離れた場所。具体的には、物体G(点P)がいた場所の地面に、ピンポイントで突き刺さっていたのだ。それも、石畳で出来ているはずの訓練棟の地面に。


 もはや、何が起こったのか、特別教室の学生たちには分からなかった。ワルツにもよく分かっていなかったと言えるかも知れない。


 彼女に分かった事は、ミレニアが木剣をGに向かって投げつけた事。その木剣が氷魔法を帯びて凍り付いていたこと。そして地面に突き刺さった時に、氷魔法が炸裂して、周囲の地面と空気を一瞬で冷却した結果、大気を一気に液化させて、爆縮現象が起こった事。もはや、ワルツにすら想定外の出来事だらけだった。


「(ミレニアも只者じゃないわね……)」


 直接剣で結び合っていたならどうなっていただろうか……。ワルツは肝を冷やしたようである。


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