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14.16-17 研究所17

 授業の内容は、とても充実していたと言えた。オーバーテクノロジーによる強制的な知識の注入。そして実演。たったの半日の授業で、皆、1ヶ月分ほどの座学の授業を叩き込まれることになった。


「「「…………」」」ぐったり


「まぁ、今日はこんなところかしらね」


 知識の暴力(?)を振りかざしたワルツは、精神的に限界を迎えたクラスメイトたちを前に、満足げな様子だった。やるべきことはやった、といわんばかりの表情だ。


 対するクラスメイトたちは、一気に知識をたたき込まれた事で、知恵熱を発していたのか、酷く疲れている様子だった。この時、クラスメイトたちは、共通してこう思っていたようだ。……体力を使わずとも、頭を使うことでも、満身創痍になれるのか、と。


 ただ、その表情は、何か大きな仕事をやりきったかのような満足げな様子で、ワルツの授業に文句があるわけではなさそうだった。学生(フィン)として紛れ込んでいた学院長のマグネアも例外ではなく、彼女は何も言わないながらも、苦笑を浮かべていたようだ。ワルツが行った授業の密度に、呆れていたらしい。


 そして昼休みの時間がやって来る。昨日までは、午前中が森林伐採の時間で、午後から座学だったが、今日からはスケジュールが変わり、午前は座学の授業(?)で、午後は実習の授業の予定である。なお、実習の内容は伐採作業ではない。


 教師は引き続きワルツの予定だ。急なスケジュール変更で、他の教師の都合が付かなかったからだ。


「(まったく……。カリキュラムはどうなってるのかしら?この学院、カリキュラムもスケジュールもあったものじゃないわね……)」


 午前中の授業が終わり、マグネアから今日一日だけ午後の授業も任せると伝えられたとき、ワルツは内心、憤っていた。なお、カリキュラムが崩壊した原因はワルツにあることはいうまでもないだろう。


 というわけで、今日も昼食を教室で摂ろうとしていたワルツたちは、自分たちの机で弁当を広げようとしていた。いつものことだ。それ自体に変わった事はない。


 しかし今日に限って、イレギュラーが生じる。起こった出来事は2つ。


 まず、クラスメイトたちの大半が、なぜが弁当を用意しており、食堂に行かなかったこと。普段であれば、貸し切り状態のはずの教室の中は、今日、この時は、とても人口密度が高かったのである。クラスメイトたちの大半が、なぜか弁当派に変わってしまったらしい。むしろ、断食派と言うべきか。昼食時間だというのに、教室から出ていかない者が多かったのだ。


 そしてもう1つの出来事。


「あいつらのクラスどこだ?」

「あんなトンデモない作業を押しつけやがって……」

「見つけたら文句の一つでも言ってやらないと気が済まないわ!」


 と、文句たらたらで、廊下の外をウロウロする上級生たちがいたことだ。どうやら、ワルツたちの代わりに、大木の伐採作業を押しつけられた者たちが、激怒しているらしい。……こんな力仕事をできるか、と。クラスメイトたちが外に出たがらなかったことも頷けるというものだ。


 しかし、外でたむろしていた学生たちは、特別教室を見つける事が出来なかったようだ。普段通り、テレサが幻影魔法を使って、教室の場所を隠蔽していたからである。


 一応、念のため言っておくが、テレサが自発的に幻影魔法を展開していたわけではない。ワルツの指示だ。


「やっぱり、昼食は、ゆっくり食べるに限るわよねー」しれっ


 外でウロウロする学生たちのことを横目で見ながら、昼食をパクリと口に運ぶワルツ。


 すると彼女の所に、ミレニアがやって来る。


「もしかしてだけど……外の上級生って、ワルツさんたちが追い払っていたりする?」


 ミレニアや他のクラスメイトたちからすれば、教室の目の前で上級生たちがウロウロしている姿は、奇妙に映ったらしい。それはそうだ。目の前に特別教室の部屋があるというのに、特別教室はどこか、と探し回っているのだから、奇妙に思わない方がおかしいと言えるだろう。


「まぁね?ゆっくりご飯を食べたいじゃない?」


「えっと……本当は学院の中で許可無く魔法を……いえ、何でもないわ」


 バレなければ良い——ではなく、この場合、魔法を使わないともっと酷いことになる、と察したミレニアは、指摘するのをやめた。絵に描いたような優等生であるミレニアも、段々ワルツたちの横暴ぶりに感化されつつあったと言えるのかも知れない。


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