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14.16-13 研究所13

 ワルツとマグネアが専門的な話をしている一方、ルシアたちは簡易宇宙船の周りを歩きながら、ワルツたちとはまた異なるやり取りをしていたようだ。


 具体的には、ルシアの魔法の規模をあまり見たことの無いマリアンヌが、たったの数十秒で完成してしまった建物の中を見回してポカーンと口を開けてフリーズしていたので、彼女に対して、ルシアとテレサが事情を説明している、といった様子だ。隣国の皇女の座を魔法で簒奪したマリアンヌにとっても、目の前で繰り広げられた魔法は、理解しがたいものだったらしく、自身の目が信じられなかったようだ。


 その一方で、アステリアは落ち着いていたようである。理由はいくつかあるが、彼女とマリアンヌと大きく異なっていた点は、その目の良さだ。建物に灯火が無いため、向こう側が見渡せないほどの暗闇に覆われていた中、夜目の利くアステリアにはハッキリと建物の中が見通せていたことが、彼女の精神的な余裕に繋がっていたらしい。


「(おっきいですね……)」


 ルシアが魔法で穿った地下空間に住んでいるアステリアにとって、いまさらルシアが巨大な建物を造り上げたところで、大きく驚くような事は無かったらしい。むしろ、普段とは異なる小さな重力を楽しむ余裕すらあるくらいで、スキップしたり、ジャンプしたりと、一人、楽しんでいる様子だった。


 その内に、彼女は、不思議に思い始める。


「(ここでも植物を育てることは出来るのでしょうか?)」


 ワルツから聞いた話によれば、月に動物はいないという話だった。当然、植物もいないはずである。それがなぜなのか、アステリアには分からなかったのだ。動物の場合は酸素が無ければ生きていけないということは分かっていても、植物も同じだと、彼女は知らなかったのである。


 もしも、この小さな重力の中で、植物を育てることが出来れば、大きく育てる事が出来るのではないか……。植物の育成を操作する魔法が使えるアステリアにとっては、少し興味のある事だった。


 彼女はルシアたちに問いかける。


「あの……試してみたいことがあるんですけど、良いですか?」


 アステリアの呼びかけに反応したルシアたちが、上の空状態のマリアンヌのことを揺さぶりながら、アステリアのことは見ずに返答する。


「うん、別に良いよ?」

「あまり遠くに行ってはならぬのじゃ?」


「あ、はい。ありがとうございます」


 というわけで、何をするかも説明すること無く、自由行動(?)の許可をもらったアステリアは、早速、地面に手を置いた。


「(植物の気配は……無さそう……?)」


 彼女の魔法は、育成のほか、植物の操作や植物の探索など、多岐に渡る効果があった。その中で、探索の効果を活用しながら、アステリアは、近くに植物が無いかを探そうとする。植物の種を持ち込まずとも、その地にある植物の種を探して、育成してみようというわけだ。もしもワルツがアステリアの行動を知ったなら、鼻で笑っていたかも知れない。本来、月には、植物など存在するわけがないからだ。


 そう、本来、月に植物などあるはずはなかった。少なくとも、地球の衛星である"月"には、一切の植物は()()()()()()()


 そして、今、アステリアたちがいた月も、地球の"月"と似たような環境だったので、植物は存在していないはずだった。……そのはずだったのだ。


「(んん?近くで、種の気配がしますね……)」


 アステリアは、自身の魔法によって見つけた気配を頼りに、ルシアたちから離れて歩いて行く。


 そして10mほど離れた場所まで来て、そこで立ち止まった。


「この下……」


 植物の種子の気配がする場所で、アステリアは再び地面に手を当てて……。そして魔法を使った。植物を育成する魔法だ。


 すると——、


   ニュッ……


——と地面から何かが生えてくる。


「植……物……?」


 アステリアは口から疑問を零しながらも眉を顰めた。というのも、生えてきた植物(?)は、アステリアが知る植物とは大きく異なっていたからだ。


 色は白——いや銀色の、まるで金属のような質感の"何か"だった。植物といえば、普通は緑色や茶色をしているはず……。そんな常識がアステリアの頭にあったせいか、銀色の植物(?)を見た彼女は、思わず首を傾げてしまう。


 それでも、一応、植物操作魔法で大きく成長しそうだったので、アステリアはそのまま魔法を行使し続ける。


「(水や土が無くても育つんですかね?)」


 普段、自分たちがいる惑星アニア上の植物とはまったく異なるその植物(?)が大きくなっていく様子を眺めながら、アステリアはどんどんと魔力を注ぎ込んでいった。


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