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14.15-22 箍7

誤字を修正したのじゃ。

「私はマスターと……いえワルツ様と一緒に行きたいです。そのためなら、死んでも口を割りません!」


「いや、別に命を賭ける必要は無いのだけれど……」


 アステリアの一緒に行きたいという発言を前に困った様子で返答するワルツ。それから彼女は、アステリアに対して質問する。


「私たちがどこに行こうとしているか、アステリアはちゃんと分かっているの?」


「えっ?お月様ではないのですか?」


「そのお月様ってどこにあるのか、知ってる?あぁ、方角じゃなくて、距離的な意味でね?」


「えっと……」


 アステリアは慌てた様子で考え込むと、しばらくしてこんなことを言い出した。


「三角測量でおおよその距離は算出できると思います。ただ、私たちが立っているこの惑星のサイズと、観測者の正確な標高、座標が分からないため、多少の誤差は出てしまうかと」


「……アステリアさ……」


「はい?あっ、やっぱり、数字を言わないとダメですか?えっと……時間があれば求められなくは無いのかな……月の出と月の入りはいつも一定の周期だし……あ、でもやっぱり、惑星のサイズが分からないと……そっか!惑星のサイズが分かれば良いんだ!ちょっと時間を下s——」


「い、いや、良いわ?貴女が理解していることは分かったから……。まぁ、口外しないというのなら一緒に来ても良いわよ?」


 意外にも月というものを理解していたアステリアを前に、ワルツは驚きが隠せなかったようである。自分の力で距離を算出しようとするアステリアの行動も、意外だったらしい。


「(アステリアは数字に強いのかしら……)」


 アステリア——夜狐(ノクセン)という種族がどういった獣なのか知らないワルツが、内心で戸惑っていると……。今度はマリアンヌが口を開く。


「……8万キロメートルですわ?」


「「え゛っ……」」


 ワルツとアステリアから声が声が上がる。ついでに言うと、テレサも——、


「あれ?そんなに近かったかの?」


——と首を傾げている様子だった。ちなみに、地球の場合、月と地球の距離は、約38万キロメートルである。どうやら皆、マリアンヌの計算が間違っているのではないかと思っているようだが、そういうわけでもないらしい。


「魔女ですもの。空を見上げて星の動きを観察することだってありますわ?それに、この前、ワルツ様に、数学の知識を授けてもらいましたもの。それらを使って算出した結果が——」


「8万キロだった、ってわけね」


「はい」


「……少し軌道がずれているかも知れないわね……」


「えっ?」


「ううん、何でもないわ?」


 かつてワルツとルシアは、2つある月のうち1つを削って、機動装甲の材料にしたのである。その際、軽くなってしまった月と、軽くなっていない方の月との引力のバランスを取るために、重い月と軽い月を縦に並べたのだ。


 どうやらその距離が想定以上にズレてきているらしい。


「(軌道の修正をしなきゃね……)」


 やはり、また宇宙に行かなければならない……。そんなことを考えながら、ワルツはマリアンヌに問いかけた。


「貴女はどうする?マリアンヌ」


 一緒に付いてくるか……。ワルツのそんな副音声に対し、マリアンヌは——、


「是非、連れて行って下さいまし!一度、月には行ってみたいと思っていましたの!」


——そう言って顔に笑みを浮かべて、コクリと首を縦に振った。


 そんなマリアンヌとアステリアの反応を見て、ワルツは思う。


「(結果的には問題は無いのだけれど……あれ?もしかして、学院の学生……とくに特別教室の学生も、みんなこんな感じなのかしら?アステリアとマリアンヌだけ特別授業をしたつもりは無いから、知識レベルは同じくらいよね?)」


 もしや、皆、自身の想定以上に知識を応用しているのではないだろうか……。そんなことを考えたワルツは、人知れず、背中に冷たいものを感じたようである。


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