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14.15-14 盗難14

 その夜、ベアトリクスの部屋には、攫われたテレサ以外にも、ルシアやアステリア、マリアンヌなどが呼ばれ、夜の茶会が催された。その内容は、専ら、レストフェン大公国での出来事はどうか、という点のみ。テレサたちに置いてけぼりにされていたベアトリクスとしては、テレサたちが遠い異国でも元気にしていたのか、本気で心配していたようである。


 そこに害意は無かったためか、強制的に誘拐されたテレサも文句は言えず、聞かれたことを素直に答えていたようである。ベアトリクスの事は苦手であっても、嫌っていた訳ではないのだから。


「……ということがあっての?あと一週間くらいは、大木の伐採作業に従事せねばならぬのじゃ」


「ルシアちゃんらしいですわね」


「んん?私ってそんなに頻繁に、森を大きくしてたかなぁ?」


「「…………」」


 頻繁ではなくても、森を大きくした事はあるのか……。静かに話を聞いていたアステリアとマリアンヌは、内心で、ミッドエデンにおける普段のルシアの行動について、想像を膨らませる。


 そんな彼女たちの表情が、困惑の色に染まっている様子に気付くことなく、ルシアが自身の行いを思い出しながら首を傾げていると——、


「……ベアよ」


——ベアトリクスの抱き枕と化していたテレサが、されるがままの姿で、ベアトリクスに対して問いかけた。ただし、苦々しげに。


「お主もレストフェンに……学院に通いたいかの?」


 テレサとしては、正直なところ、ベアトリクスと同じ学院には通いたくなかったようだ。学院の中で、毎日のように抱き枕にされては堪ったものではないからだ。


 ゆえに、覚悟を決めて問いかけたテレサだったものの、それに対するベアトリクスの返答は——、


「それはもちろん、行きたいですわよ?」


——と即答。しかし、彼女はその後で、すぐに首を横に振った。


「でも、行けませんの」


「「え゛っ」」


 テレサだけでなく、ルシアの声も重なる。テレサのことが大好き(?)なベアトリクスのことなので、一緒に学院に通うと言い出すはず……。ルシアもテレサも同じ事を考えていたのだ。だが、どうやら、ベアトリクスには事情があるらしい。


「実は私……既に、この王都で、学校の教師のようなことをしているのですわ?」


「「「「えっ」」」」


「イブちゃんやローズマリーちゃん、それにカリーナちゃん(飛竜)のように、色々学ばなければならない小さな子供たちがたくさんいるでしょう?そんな子供たちに、知っている限りのことを教えているのですわ?とは言っても、教えているというより、教えられていると言った方が正しいかも知れませんけれど」


 王城代替施設の中だけでも、年齢の低い者たちが何名かいた。ベアトリクスはそんな者たちの教師役を買って出て、日々、色々な事を教えているらしい。


 その話を聞いたルシアは、興味深げに問いかけた。


「ベアちゃん一人で教えてるの?」


「いいえ?流石に、私も賢いわけではありませんから、他にも教師役の方々は大勢いますわ?ユリア様とか——」


「あぁ、ユリアさんなら、色々な事に詳しそうだもんね。……サキュバスなのが気になるけど」


「「(えっ……サキュバス……?)」」


「カタリナ様も良く、顔を出されますわ?」


「カタリナお姉ちゃんかぁ……。毎回、生物の解剖をしてる……わけじゃないよね?」


「あら?さすがはルシアちゃん。その通りですわ?」


「あぁ、うん……。誰でも予想出来るんじゃ無いかなぁ?」


「でも、生き物を痛めつけるようなことはしませんのよ?怪我をしたワイバーンを治す実演をしたり、食べ物が詰まった地竜の喉を切開したり……」


「そっかぁ……。そうだよね。カタリナお姉ちゃんが無闇に生き物を殺めることはないよね」


「「   」」


 ベアトリクスとルシアの話を聞いていたアステリアとマリアンヌは、とても静かに耳を傾けていたようである。むしろ、微動だにしていなかったと言うべきか。白目すら剥いていたようだが、もしかすると目が乾燥していたのかもしれない。


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