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14.15-13 盗難13

「この恨み、晴らさでおくべきか〜……」ゴゴゴゴゴ


 バラバラになったテンポの機動装甲を前に、機動装甲を組み立てた本人であるコルテックスは、怒り(?)の感情を隠さずに、毒を吐いた。


 そんな彼女が視線を向けた先にあったものは、テレサが突貫工事で作ったという木材運搬車「マークツー」。自身の数ヶ月の苦労を台無しにしたテレサに反撃するために、マークツーにイタズラをするというアイディアが、コルテックスの頭の中に浮かんでくる。


 そんな妹の思考に気付いたのか、ワルツはハッとした表情を浮かべた。が、止めはしない。テレサの行動は自業自得だと言えなく無かったからだ。まぁ、姉妹げんかに巻き込まれた哀れな被害者とも言えたが。


「(まぁ、テレサのやつだし、いっか)」


 ワルツの他、テンポも同じくコルテックスの考えに気付いたようである。


 が、彼女の場合は、ワルツとは真逆で、コルテックスのことを止めようとする。


「……コルテックス。もしもテレサの乗り物を壊すというのであれば、私は反対します」


 そんなテンポの言葉に、コルテックスは目を見開く。てっきり、テンポも同じ考えを持っているものだと思っていたのだ。


「しかし、被害を受けたのは、テンポお姉様も同じではありませんか〜?」


「被害ではありません。コルテックス。私は戦闘にすらならずに負けたのですよ。そう負けたのです。この意味が分かりませんか?」


 淡々と事実を話すテンポを前に、コルテックスは一瞬考え込む。テンポが何を言っているのか、分からなかったのだ。


 そして考え込んだ彼女は、不意に眉を顰めた。


「……お姉様は、魔法で簡単に壊されてしまうような機動装甲を作ったことを、怒っておられるのですか?」


 かつて機動装甲を作成する前、テンポからコルテックスへと向けられた依頼は、ルシア級の魔法使いから攻撃を受けても容易には破壊されない機動装甲を作って欲しい、というものだった。ところが、実際には、攻撃魔法ですらない攻撃力0の魔法によって、テンポの機動装甲は破壊されてしまったのだ。それも一瞬で。


 事情を聞いたコルテックスからすれば、もはや笑うしかない無いようだった。魔法とは言え、正規の手段で分解されれば、壊れてしまうのは当然だったからだ。


 コルテックスは、テンポが、テレサによって簡単に機動装甲を破壊されてしまったことに激怒しているのだと考えたらしい。そんなものでは、(ワルツ)を打倒する事など不可能だ、と。コルテックスはそんな副音声を感じ取っていたようだ。


 実際、テンポは、コルテックスの予想通りに、今のままの機動装甲では、役に立たないと考えていたようである。しかし、彼女は激怒しているわけではなかった。


「私が直接作っている機動装甲ではありませんから、怒るようなことはしません。しかし、今回のような脆弱性に対応した機動装甲を早急に組み立てて欲しいとは思います。脆弱性を抱えた機体では、いつまで経っても、お姉様には勝てませんので」


「テンポお姉様の考えは承知しました〜。至急、次号機の開発に着手いたします」


 コルテックスはそう言って、決意したような表情を見せた。


 テンポも似たようなものだ。妹たちと共に、最高の機動装甲を造り上げるという想いが、彼女の無表情から滲み出ているようだった。


 しかし、納得いかない者がその場にいた。


「いやいや、ちょっと待ってよ。どういうこと?張り合わないって選択肢は無いの?!」


 テンポとコルテックスが、本人の目の前で堂々と、打倒"姉"作戦を話し合っているのだ。ワルツは思わず声を上げてしまう。


 2人とも自分を倒すために機動装甲を作っているというのだから、ワルツとしては寝耳に水どころの話ではなかった。まさか、テンポもコルテックスも、積極的に自分と敵対するとは思わなかったのだ。まぁ、敵対と表現することが適切かどうかは微妙なところだが。


「無いです」

「無いですね〜」


「ちょっ……」


 2人の妹たちが即答する様子を見て、ワルツは背中に冷たいものを感じ取る。なぜ2人共が自分に対して敵対心(?)を抱いているのか、彼女には理解出来なかったのだ。


 とはいえ、本当の意味での"敵対"とは異なるらしい。コルテックスは、直前に話し合っていた内容をすべて無かったことにするかのように、ワルツに対して問いかける。


「それはそうと、このテレサの乗り物ですが〜……やはり、色々と気に食わない部分があるので、ちょっと手を入れてもよろしいでしょうか〜?あ〜、もちろん、破壊するわけではありませんよ〜?ちょっと、改良する……そう、改良するだけです」


「いや、それは構わないけど……」


 いったい2人は何を考えているのか……。ワルツの頭は混乱するばかりで、大量の疑問が喉の奥で詰まったまま、ただただ立ちすくむしかなかったようだ。



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