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14.15-12 盗難12

「さぁ、テレサ。お茶にしましょう?先日、美味しいお菓子を見つけましたのよ?積もる話もたくさんありますのよ?」

「のぉぉぉぉ……」ズルズル


「「『……』」」


「仲が良いわね。あの2人も」

「なんか羨ましいよね」


「「え゛っ……」」


 所謂ドナドナ状態のテレサを見送りながら、ワルツとルシアは生暖かい視線を2人へと向けていた訳だが、少なくともアステリアとマリアンヌにとっては、ワルツたちが何を言っているのか理解出来なかったようである。


 そんなアステリアたちへと、ポテンティアが事情(?)を説明をする。


『テレサ様が本気を出せば、ベアトリクス様から逃げる事だって出来るはずなのです。それをしないと言うことは、つまりテレサ様がベアトリクス様の事を受け入れていることに他ならないということなのですよ』


「えっ……でも……テレサ様、悲鳴を上げていましたよね?」

「仲が良いというのは、流石に言い過ぎなのではなくって?」


 どう見ても誘拐にしか見えない……。アステリアとマリアンヌは、テレサの悲鳴の消えていった方向へと心配そうな視線を向けながら、ポテンティアへと問いかける。


 対するポテンティアは肩を竦めると、2人にとって予想外の事を口にした。


『確かに、やり過ぎ感は否めませんが、ルシアちゃんが動いていないので、大丈夫でしょう』


「「えっ?」」


『それに、最悪、何かあっても、テレサ様でしたら自力で抜け出してこられるはずですから』


 本当に大丈夫なのか……。アステリアとマリアンヌは混乱するが、ポテンティアはそれ以上を説明せず、また、他の者たちにも慌てた様子が無かったためか、2人は"そういうものだ"と思い込む事にしたようである。


 これで一件落着(?)、と思いきや、その場にいたもう一人のテレサ、もといコルテックスが、突然——、


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ?!」


——と奇声を上げ始めた。より具体的には、何かを直視したまま、両手を頭に当てて、心の内から沸き上がってくる悲鳴を我慢出来ずに口から漏らしている、といった様子だ。


 いったい何が起こったというのか……。それは彼女の視線の先にあるものが原因だった。


   ボローン……


 テンポが先ほどまで駆っていた黒い機動装甲の残骸である。


 テンポの機動装甲の製作は、主にコルテックスが担当していた。それが、つい最近、完成したばかりだというのに、碌な活躍をする事も無く、バラバラに分解されてしまったのだ。


「だ、誰ですか〜?!こんな酷いことをした人は〜っ!」ぷんすか


 地団駄を踏む勢いで、コルテックスはテンポに詰め寄った。機動装甲の持ち主であるテンポなら、何か事情を知っていると思ったらしい。


 するとテンポは「鏡があれば良かったのですがね……」などと、残念そうな無表情でそんな言葉を漏らした後、犯人の名前を口にした。


「テレサがやったのですよ」


「んなっ?!わ、妾が〜?」


 コルテックスは、テレサの()()()を口にしながら驚愕する。


 対するテンポは淡々と事実を説明した。


「それはもう一瞬の出来事でしたね。彼女がたった一言、呟いたただけで、機動装甲はご覧の有様です。耐魔法性能が低すぎるのではありませんか?」


「ぐ、ぐぬぬぬ〜……!」


 コルテックスは苦々しげな表情を浮かべた後、肩をガックリと落とす。


「この機動装甲は、ルシアちゃんの攻撃にも耐えられるくらい強固な耐魔法性能を持っています。もちろん、物理攻撃に対する耐性も高く、人の力で壊せるようなものではないはずなのです……」


「では、なぜ壊れてしまったのです?」


「妾の魔法は攻撃魔法ではないからですよ〜……。もしも機動装甲がダメージを受けて壊れたとき、どうやってメンテナンスをすると思いますか〜?」


「それは……工具を使って分解して————あっ、そういうことですか」


「そういうことです」


 つまり、テレサは、攻撃魔法で無理矢理に機動装甲を分解するのではなく、正規の手順で機動装甲を分解する魔法を使ったのだ……。そう理解したテンポは、半分納得して、そして半分納得出来なさそうな、無表情を浮かべたのであった。


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