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14.15-11 盗難11

「何やってるの?あの2人……」

「いつもの睨み合いですね〜。私もたまにされますよ〜?似ているから〜、って〜」

「ただの不毛な行動です」

『久しぶりに会ったのですから、テレサ様もハグくらいしてあげれば良いのですよ』

「「あぁ、いつものことなんですね……」」


 ジリジリと詰め寄るベアトリクスと、彼女が進んだだけ同じようにジリジリと後退するテレサの様子を見ながら、ワルツたちは事情の共有を行った。状況としては、肉食獣のようなベアトリクスが、小動物のように逃げるテレサの事を追い詰めているかのように見えており、アステリアとマリアンヌはテレサの事を心配していたようだが、コルテックスの"いつものこと"という発言を聞いて、安堵していたようである。


 まぁ、その安堵も、すぐに消え去ってしまうのだが。


「逃げなくても良いのですわよ?テレサ。久々にお会いしたのですもの。遠慮無くこの胸に飛び込んできてくださいまし!」ブゥン


 飛び込んでこい、と言っているにもかかわらず、ベアトリクスが自ら、テレサの前まで移動する。それも一瞬で。ベアトリクスは、まるで転移魔法でも使ったかのようにテレサとの距離を詰めるが、転移魔法を使ったわけではなく、単に筋力にものを言わせただけの移動だったようだ。


 その事実に皆が驚愕するが、テレサだけは驚いている時間すら惜しかったのか、超反応で後ろにバックステップする。そうでもしなければ、ベアトリクスの羽交い締めを避けることが出来ないからだ。


   ガバッ!


「んなっ?!」


「つ か ま え た」


 テレサはバックステップで逃げたはずだった。ベアトリクスが腕を伸ばしても届かないくらいの距離を、全力で跳んだはずだったのだ。


 ところが、実際には、ベアトリクスの手がテレサを捕らえたのである。テレサからすれば、某インド人よろしく、ベアトリクスの腕が伸びたように見えていたようだ。そう考えなければ、捕まる訳がないからだ。


 結果、テレサは顔を青ざめさせる。……ベアトリクスは遂に、人間すらやめてしまったのか、と。


「(いや、むしろ、こやつ……元から人間ではないのか?)」


 自分が人間では無く、半分以上が機械仕掛けの狐娘だったせいか、ベアトリクスの異常な筋力と反応力、物理法則を無視した行動などを見ても、テレサは大きく驚かない。むしろ、彼女は、この状態からどうやって逃げるかを冷静に考える。


「ふんっ!」


   ブォンッ……


「へっ?」


「「「「『……は?』」」」」


 今度はベアトリクスが宙を舞う。テレサがベアトリクスのことを投げ飛ばしたからだ。これまで、防戦一方だったテレサが反撃に出るなどとは誰一人として予想だにしていなかったのか、皆の表情に驚愕の色が浮かんだ。


 ちなみに、テレサがベアトリクスのことを力技で投げ飛ばしたわけではない。凄まじい勢いで掴みかかってきたベアトリクスを、むしろ逆に引っ張っただけである。それだけで、ベアトリクスは体勢を崩し、本来捕まえるはずのテレサを通り越して、宙を舞ったのだ。合気道のようなものといえるかもしれない。


 なにより、テレサの体重が、見た目よりも重かったことも幸いした。テレサの事を掴んでいたベアトリクスの手がテレサの事を掴みきれずに離れたのだ。


 そして——、


   シュタッ


——何事も無かったかのように地面に降り立ったベアトリクスは、驚愕の眼差しをテレサへと向けることになった。ちなみに他の者たちは、エレガントに着地したベアトリクスの行動そのものに驚愕している様子だ。


「テレサが……私のハグを拒否した……?」


「妾をいつまでも無力な狐じゃと思ってもらっては困るのじゃ!」


 ふん、と鼻を鳴らしながら、胸を張るテレサ。そんな彼女は、時間を見つけては、ベアトリクスに対応するための体術を身につけていたらしい。ルシアに粗暴な扱いを受けていたのも、その一環だったりする。


 しかし——、


   ガシッ!


「んなっ?!」


「もう、テレサったら。本気を出させないで欲しいですわ?エレガントではないですもの」


「なん……じゃと?!」


——テレサは一瞬でベアトリクスに捕縛されてしまう。最早、テレサの反応速度では、ベアトリクスの行動を目視することは困難。テレサは何が起こったのかも分からないうちに、ベアトリクスに所謂お姫様抱っこ状態にさせられてしまったのだ。


妾に追い詰められた狐も、きっと同じ事を思っておるに違いないのじゃ。

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