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14.15-06 盗難6

『え゛っ?!ちょっ……』


 テンポが気付いた時には、争いと言えるものは何一つ無く、すべてが終わっていた。機動装甲は一瞬で無力化されて、その能力の一端すら見せること無く、廃棄処分になってしまったのだから。


「んなっ……テレサ!何をしてくれるのですか?!」


 黒い機動装甲が崩れたことで、中から露わになったテンポは、普段の冷静さを失いながらも、いつも通りの無表情のまま、テレサに詰め寄った。2人の身長差は、およそ50cm。叱責する大人と、叱責される子ども、といった様子である。


 が、その程度で、テレサの怒りは引かない。


「妾が丹精込めて2時間半を書けて作ったマークツーを返すのじゃ!」


「……私の機動装甲は、2時間や3時間どころではなく、数ヶ月、掛かっているのですが?」


「へっ?す、数ヶ月……?いや、それとこれとは話が——」


「テレサ」


 テンポは諭すように、あるいは呆れたように、テレサへと言った。


「そもそも、マークツーというのは何なのです?テレサの言っていることが良く分からないのですが?」


「マ、マークツーというのは、木材輸送用のデュアルモードビークル(DMV)のことなのじゃ!ワルツに聞いたのじゃ。テンポ殿が妾のマークツーを盗んだ犯人じゃと!」


「いえ、そのようなガラk……ものを盗む理由が、私にはありません。そもそもどうやって盗んだというのです?」


「そ、それは転移魔法陣を使って——」


「転移魔法陣?転移魔法陣を使えば、遠距離の物体をピンポイントで盗めるというのですか?そのような事が出来るのでしたら、私賭しては、もっと別のものを盗みますが?」


「えっ……」


 テレサの言葉が詰まった瞬間、2人——どころか、その場にいた全員の視線がワルツへと集中する。皆、察したらしい。テンポは犯人ではない、という可能性に……。


 対するワルツは、ピタリと固まったまま、冷や汗(?)をダラダラと流していたようである。テンポが犯人だと思い込んでいたのだと、彼女もここで初めて気付いたのだ。


「お姉様。いったいどういうことなのですか?」

「ワルツ?テンポが犯人ではないのかの?」


 2人に詰め寄られたワルツは、慌てて言い訳を口にした。


「だ、だって、テレサのマークツーだか何だかっていう木材運搬車が転移させられたとき、テンポを送還した座標と同じ場所に転移する転移魔法が浮かび上がったのよ?そんな偶然、ありえる?」


「……断っておきますが、私自身は転移魔法陣を使ったことはありません。もちろん、お姉様の転移魔法陣の模様はハッキリと記憶しておりますが、使うとどこに飛ぶのか、どうやって使うかなど、不明な点が多い危険な転移魔法陣を使う程、自殺志願者でもありません。最悪、誰か人を巻き込んでしまうかも知れない危険なものなのでしょう?そのような不確実なものを、私が使うとでもお思いですか?」


「   」


 ワルツは言葉を失った。テンポが嘘を言うような人物では無いことを知っていた——つまり、自身が間違っていることに気付いてしまったのだ。


 より具体的に言えば、ワルツが絶句した理由は2つ。テンポが犯人では無い事が確定したために、彼女に謝らなければならないこと。そして、真犯人は別にいて、もしかしたら今なお転移魔法陣を悪用しているかも知れないこと……。そのことが、ワルツの思考を過負荷状態に陥らせる。


「(やばい……)」


 退路を失ったワルツが、冷たい視線を送ってくる妹を前に固まっていると——、


「……?!」びくぅ


——どちらかと言えば責めている側のはずのテレサの尻尾がパンパンに膨らんだ。彼女には珍しい行動だ。何か、トンデモない忘れ物をしていた事に気付いたか、あるいは命の危険を感じたか……。そのどちらかくらいでしか、彼女が尻尾を膨らませるようなことはないはずだった。


 そして、今回も、例外では無かったらしい。


「テーレーサーァ?久しぶりですわね?そう、とっても久しぶり!」にこぉ


「んひっ?!ベ、ベアト……リクス……じゃと?!」


 テレサの前に現れたのは彼女の天敵と言える人物。"ですわ"という言葉が口癖(?)のベアトリクスだった。


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