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14.15-03 盗難3

 早速、ポテンティアは、分体たちが目撃したという転移魔法陣をワルツに伝えるべく、その分体たちを使って、転移魔法陣の形状を再現する。


 しかし、ここでまさかの展開が生じる。


『たしか、こんな感j——』


   ブゥン……


 ポテンティアの分体たちが消えたのだ。それも、転移魔法特有の音を出しながら。どうやら、ポテンティアの分体たち自体に魔力のようなものが宿っていて、アーティファクトや魔石の類いを魔法陣に接触させずとも、勝手に魔法陣を起動させてしまったようである。


「えっ……いや、そんな、オリハルコンのインクじゃ無いんだから————あ゛っ!」


 そしてワルツは気付いた。ポテンティアの分体たち——つまりマイクロマシンたちの部品一つ一つに、強度強化のエンチャントを施すべく、材料としてオリハルコンを使っていたことを……。


 対するポテンティアは、苦々しい表情を浮かべた。


『くっ!魔法陣の対価として、身体の一部を持って行かれました……!』


「いや、そんなどこかの錬金術師みたいな発言、しなくていいから……。っていうか、貴方の場合、ミッドエデンに戻って、補充すればいいだけじゃん」


『あぁ、そうでした。しかし、僕たちの身体の一部が失われてしまったことは事実。冥福を祈ります……』


「いやいやいや……」


 と自分自身の冥福を祈るというのはどうなのか、と否定気味に考えるワルツだったものの、彼女はふと考える。


「(実際、どうなのかしら……?ポテンティアは一人の人格なのか、それともいくつもの人……いや虫?が集まって出来上がった人格なのか……。もしもいくつもの"自分"が集まって出来上がった人格だとすれば、まぁ、ポテンティアが言っていることも分からないではないわね)」


 そしてもう一つ思う。しかし、今度は、その考えを口に出した。


「って事は、ポテンティアは、身体が失われる度に、頭が悪くなっていく、ってこと?」


『…………』


 ワルツが発言した途端、その場を無言が支配する。ポテンティアが神妙な面持ちで祈りを捧げていたら、ワルツから、頭が悪くなったのか、などという空気の読めない質問が飛んできたのである。ポテンティアが気分を害してしまうのも当然だと言えるだろう。


 しかし、そこはポテンティア。ワルツの発言に他意も悪意も無い事を知っていた彼は、他の者たちと共に「「『はぁ』」」と深く溜息を吐きながら、ワルツに対してこう返答した。


『いえ、分体たちを失ったところで頭が悪くなるということはありません。手のひらサイズの僕でも、普通に会話ができているではありませんか』


「あぁ、そう……。てっきり、無線通信か何かで、大きな思考ネットワーク的なものを作っているのかと思っていたのだけれど……」


『まぁ、それについては否定しませんが、結局、みんな、僕であって、別々の性格をしている訳ではありませんからね……。僕らの間で、何か高度な社会を形成しているなどというハイテクノロジーなことはしていませんよ』


「ふーん」


 理解したのか、それともしていないのか……。ワルツは興味を失ったかのような空返事のような相づちを打った。ただ、少し残念に感じていたのは確かなようだ。尤も、何を残念に思っていたのかは、周囲の者には伝わらなかったようだが。


 というのも——、


「まぁ、ポテンティアのおかげで、誰が犯人なのかは分かったわ?」


——ポテンティアに興味を失ったワルツが、いきなり、今回の事件の結末を語り始めたからだ。


 突然、何を言い出すのか……。テレサですら話に付いていけず、唖然としていると、ワルツは犯人の名前を口にした。


「多分ね……これ、テンポが犯人ね」


 昨日、喧嘩別れをしてしまった妹。そんな彼女が犯人だというワルツの言葉に、皆が耳を疑ってしまったことは、言うまでも無いだろう。


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