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14.14-46 仕上げ46

 マリアンヌたちがいた学院前の"駅"以外の場所でも、順調に作業は進み……。ワルツの思惑通りに、伐採から製材、輸送までの作業が、一通り流れていたようである。


 そんな工程を観察していたコルテックスは、公都前の"駅"で、水門を操作していたワルツに対して問いかけた。


「お姉様〜?この一連の作業ですが、学院の授業としてどうなのでしょうか〜?」


 学院で学ぶべき作業なのだろうか……。そんな疑問がコルテックスの中に浮かんできたらしい。


 対するワルツは、「ん?」と首を傾げながら返答する。


「伐採にも乾燥にも製材にも輸送にも、魔法や体力や頭を使っているわけなんだから、授業としては成り立っているんじゃないの?まぁ、一種のレクリエーションみたいなものよ。ほら、ハイスピア先生とか見てみなさいよ。嬉しそうにニコニコしてるじゃない」


「あははは〜♪」ゆらゆら


「まぁ、お姉様がそう仰るのでしたらいいのですが〜……」


 果たしてハイスピアは喜んでいるのだろうか……。一抹の不安を感じるコルテックスだったが、今の彼女は飽くまで見学者。問いかけることはあっても、否定したり、口出しをするようなことはしない。


 そんなコルテックスに対して、ワルツは逆に問いかけた。


「そういえば、今回はなんでこっちにきたわけ?単に私たちの顔を見に来ただけじゃないわよね?」


「いえ、顔を見に来ただけですよ〜?特に、ストレラお姉様なんかは、ワルツお姉様に放置され過ぎて、捨てられたのではないかと心配していた位なのですよ〜?テンポお姉様だって〜——」


「んー、まぁ、理由は分かったわ……。でもそれなら、事前に声を掛けてくれても——」


「事前に声を掛けたら、ワルツお姉様方は逃げてしまいますからね〜」


「……強ち否定できないのが痛いところね……」


 あまり会いたくない相手が来ると知っていたなら、無理矢理にでも用事を作り出して、外出していることにすれば良い……。そんな考えがワルツの脳裏を過ったせいか、彼女は目を細めたようだ。


 ちなみに。彼女たちがどこで何をしていたのかというと、前述の通り、公都近くに作った"駅"で、水門を操作し、”駅”の中に水を流し込んでいる最中だった。騎士科の学生たちが、ハイテンションで人力鉄道車両を操作した結果、凄まじい速度で公都前の"駅"まで木材が運ばれてきたので、それを地下から地上に上げるべく、"駅"に水を流し込んでいた、というわけだ。


 そんな水の流れを見ながら、コルテックスはポツリと呟く。


「ところでお姉様〜?水路を随分と多くお魚が流れて行っているように見えるのですが、気のせいでしょうか〜?」


「まぁ、確かに多いわね。魚」


「今、流し込んでいる水ですが、使用した後は、大深度の地下に排水するのですよね〜?ということは、お魚も一緒に投棄されるのでは〜?」


「何?捕まえて売った方が良いって?」


「いえいえ、捕まえなくても良いと思いますが、せめて流れ込まないように柵などを付けられてはいかがかなと思っただけですよ〜?かわいそうなので〜」


「いいんじゃない?別に。面倒臭いし……」


 と言いつつ、ワルツは水路に目を向けた。そこでは、ルシアが"駅"に流れ込む水を見つめていて、魚が流れ込む度に、「あっ、またお魚さん!かわいそう……」と呟いていたようだ。


 そんなルシアの背中を見て、溜息を吐いた後、ワルツはルシアに向かって指示を出した。


「ごめん、ルシア。魚が穴の中に落ちないように、網を作ってもらえるかしら?」


「網?あ、うん。いいよ!」


 ルシアは、ぱぁっ、と花が咲いたような笑顔を浮かべると、なぜかその場から立ち去っていく。


 一体彼女はどこに向かって行くのか……。ワルツが疑問に思っていると、ルシアは"駅"の排水口の真上まで移動して、「ここら辺かなぁ?」などと口にしつつ、魔法を行使した。


 すると、水に沈んだ"駅"で変化が起こる。排水口の地面から、メキメキと網のようなものが生えてきて、排水口を覆ったのだ。


 そして彼女は姉の方を振り向いて、こう口にする。


「はい!作った!」


「……ごめん、ルシア。その網ってもしかして……」


「お魚さんを捕まえるための網だよ?」


「……あ、うん……そう……」


 魚を捕まえて欲しいのではなく、"駅"に流れ込むこと自体を防いで欲しかったのに……。そんな事を思うワルツだったが、せっかく作って貰った網にケチを付けるわけにもいかず……。そのまま魚を捕まえるための網として活用することにしたようだ。


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