14.14-38 仕上げ38
今回の分担作業には、すべての作業に人員が割り当てられている訳ではなかった。【移動】【乾燥】【輸送】の各工程で、荷下ろしや荷積み、あるいは安全管理が必要だが、底には人員が割り当てられていなかったのだ。後者の安全管理という面については、ワルツやテレサ、あるいはポテンティアが担当予定になっていたが、問題は、荷下ろしと見積みだ。未だ担当が決まっていないルシアやアステリア、マリアンヌなどが担当になるはずだが、ルシアはまだしも、アステリアとマリアンヌだけでは大木の荷下ろしも荷積みも出来ないのは明白だった。
ゆえにワルツは、アステリアとマリアンヌの作業に、ABC姉妹を張り付けようと考えたようである。ABC姉妹には、元の姿に戻って力仕事をする以外にも、もう一つ、最終手段とも言うべき方法で、力仕事をする手段があったからだ。まぁ、実際にその最終手段が行使されるケースは、余程のことが無い限りあり得ないはずだが。
「というわけで、ポチたち3人は、アステリアたちと一緒に、地下の駅で乾燥した木材を輸送車両に載せる、って仕事をしてもらおうかしら?魔法科の人たちには荷が重いだろうから……。言葉通りの意味でね?」
魔法科の学生たちは、魔力の扱いに特化しているので、ワルツが作った乾燥用転移魔法陣に魔力を注ぎ込む作業であれば、問題なく出来るはずだった。だが、それ以外のことになるとからっきしで、腕の細い彼らが荷下ろしなどの力作業を出来るようには見えなかったのである。まぁ、腕が太かったところで、何トンもありそうな大木を運べるとは言えないのだが。
◇
というわけで、魔法科の学生たちとアステリア、マリアンヌ、それにABC姉妹は、地下の駅へとやってきた。ちなみにストレラも一緒で、彼女はただ見ているだけだが、実質的に安全管理役を担当することになったようである。
「(ここなら、学院の人間に見られる可能性は低いから、ポチたちにとっては気兼ねなく作業できそうね……。っていうか、姉さんたち、いつのまにこんなものを作っているのよ……。自宅の大空洞もだけどさ?)」
地下数十メートルに掘られた大きな縦穴の中に、木材を乾燥するための乾燥炉がずらりと並び、公都方向には立派なレールが敷設されたトンネルが大きな口を開けている……。そんな大規模な構造物にストレラは思わず呆れていたようだ。
そんな彼女の視線を受けながら、皆、作業を進めていく。
「おぉ、すげぇ……」
「昨日までは1つしか無かったのに、いつの間にか何十個も作られてる……」
「しかも、この中には木が入ってるんだろ?ホント、いつの間に作業したのかしら?」
といったように、魔法科のクラスメイトたちの間で、驚きの声が上がる。昨日の作業では、乾燥炉は1つしか無かったのだが、今日になって学院前の"駅"にやってくると、乾燥炉が大量に増えていたからだ。しかもすべて稼働中らしく、乾燥路の扉に描かれていた魔法陣は薄らと輝いているようだった。
そんな乾燥炉を前に、魔法科のメンバーの代表とも言うべきミレニアが、口を開く。
「さぁ、作業を始めましょ?まずは一番端からが良いかしらね?」
彼女は、事前にワルツから受けた説明通りに、稼働中の転移魔法陣に手を触れて、そこに取り付けてあった魔石を取り外す。
魔法陣にとって、魔石やアーティファクトといったものは、電池に等しく、取り外した瞬間に魔法陣の動作が停止する。その瞬間——、
シューッ!
——という音共に、炉内に空気が入り込む音が聞こえて……。そしてさらには——、
ガコンッ……
——何やらロックが外れるような音も一緒に聞こえてきた。デッドボルトのようなロック機構が取り付けられているわけではなく、気圧差で扉が閉まっていただけなのだが、扉の隙間から空気が入って、ちょうど内側と外側との気圧差が等しくなり、扉の隙間が大きく開いて音が生じたらしい。
「これも"科学"って奴なのかしら?」
ミレニアはそんなことを呟きながら、乾燥炉の扉に取り付けられてあった取っ手を引っ張った。すると、ギギギときしみ音を上げながら、ゆっくりと扉が開いていく。
そして、炉の中身を見て、ミレニアだけでなく、皆が驚くことになる。
「……えっ?」
「すげぇ……」
「どうなってんだ?」
「大木が……木材に変わってる……・」
乾燥炉の中には大木が入っていたはずだというのに、蓋を開けてみると、大木ではなく、均等に切断された木材が入っていたのだ。昨日のうちに、ワルツたちが切断したのだろうか……。
そんな事を考えるミレニアたちだったが、どうやらそういうわけではなかったようだ。皆に同行したマリアンヌが、事情の説明を始めた。




