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14.14-36 仕上げ36

 ケルベロスに戻ったABC姉妹(ポチたち)は、すぐに人の姿に戻る。いつまでも魔物の姿でいたところで、自己紹介としてプラスに働く事は無いからだ。


「というわけで、ポチたちは人族ではないです」

「ポチたちはポチなの」

「三つ首のケルベ……なんとか?」


 と、自己紹介なのか何なのかよく分からない紹介をするABC姉妹。


 しかし、皆からの返答は無い。教室の中に漂っていたのは、ただひたすらの唖然と恐怖。シーンと静まりかえった教室の中で、ポチたちは困ったように周囲を見渡した後、主人であるストレラへと視線を向けた。


 そんな状況の中で、ストレラは微笑を浮かべながら言った。


「あら?挨拶が無いのは、歓迎されていないって事かしら?まさか、ケルベロスを見た程度で、粗相をするようなレベルの低い学生が集まる学校じゃないわよね?」


 と、煽り半分な様子で、クラスメイトたちに問いかけるストレラ。


 ちなみに担任教師であるハイスピアに驚きの色は無い。驚きが振り切って、普段通り現実逃避を始めていたからだ。見た目だけなら、ニコニコ笑みを浮かべて、ポチたちの自己紹介を眺めているように見えていたが、左右に揺れているところを見るに、おそらくは、いつもどおりに半分意識が飛んでいるような状態になっていることだろう。


 一方、特別教室の学生たちは、ストレラに煽られたことで我を取り戻す者がいたようだ。とはいえ、全員ではなく、全体の半分ほど。どの学科が優れているということはなく、元の性格による違いなのか、人によってばらつきがあったようだ。


 我を取り戻した代表例はミレニアだ。彼女の場合は、最初の内こそ驚きはしたものの、普段からワルツたちに驚かされてばかりいたためか、我を取り戻すまでそれほど時間は掛からなかった。


 騎士科のジャックやラリーなども似たようなもので、ミレニアに続いて、ハッとしたような表情を見せていた。まぁ、ラリーの場合は元々からして感情や反応に起伏が少ないので、見た目からは、驚いているのかどうかよく分からないが。


 薬学科の双子姉妹たちも、「「ふーん」」という程度の反応だった。彼女たちの場合は、恐怖よりも興味が先行していたようで、ABC姉妹たちのことを興味深げに観察していたようである。単に獣が好きなだけなのか、それとも実験動物として見ていたのかは不明だ。


 そしてもう一人。


「…………」


 ABC姉妹の変身を見ても、表情を変えていない人物がいた。もちろん、目を開けたまま気絶していた訳ではない。ストレラたちが教室の中に入ってきた後で、不意にテレサの隣に現れたフィンだ。


「ふぉっ?!」


 テレサとしては、余程、ABC姉妹などよりも、気付いたら隣に座っていたフィンの存在に驚いたらしい。フィンの存在に気付いた瞬間、テレサの口から変な声が漏れ出す。


「……何?」


「い、いや、お主いつからそこにおった?」


「さっき」


「さ、さよか……(なんという、神出鬼没……)」

 

 テレサはそんな事を考えながら、同時に思う。……どうして気配を消して、教室に入ってきて、そしてわざわざ隣に座るのか、と。


 そんなテレサの疑問に気付いたのか、フィンが言葉を追加した。


「ちょっと遅刻した」


「あぁ、なるほどの」


 遅刻をしたから、そっと教室の中に入ったのだろう……。そう理解したテレサが納得げな表情を浮かべつつ、逆方向を向くと、そこでは、我に返ったミレニアたちが、「い、いえ。私たちは皆さんのことを歓迎するわ」などとストレラに返答する姿の他に——、


「…………」じとぉ


——テレサに向かってジト目を向けるルシアの姿があったようだ。それも50cmほど先に。


「……何かの?」


「いや……誰と話してるのかなって」


「えっ?フィン殿じゃが?」


「えっ?誰もいないじゃん」


「えっ……」


 ルシアの、誰もいない、という言葉に反応して、再び逆方向を振り向くテレサ。しかしそこにはしっかりとフィンがいて、筆記用具を鞄から出しているところだった。どうやらストレラたちの名前を書き留めておくつもりらしい。


 そんなフィンの姿を見たテレサは、眉を顰めながら、再びルシアの方を向いて言った。


「いや、間違いなく、ここに一人おるのじゃ。なぜかは分からぬが、幻影魔法を使って姿を消しておるようじゃがの」


「んん??」


 と、唸りとも何とも言えない声を出しながら、テレサの横の席をジィッと見つめるルシア。


 そんな3人(?)のやり取りや、ストレラやABC姉妹、ミレニアたちのやり取りなどを、静かに聞いていたワルツは思う。


「(案外、ポチたちが入学しても、上手くやっていけるんじゃない?)」


 彼女からすると、教室の中の反応はいつもどおりの範疇。想像していたほど、混乱が起こっているようには思えなかったようだ。


なんか、最近、時間が無さ過ぎて、物語を書くのがタイムアタック化してきておる気がするのじゃ……。

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