14.14-34 仕上げ34
そして、登校し、無事に学院長室にストレラたちを送った後。ワルツたちはいつものように特別教室へとやってきていた。
普段であれば、教室には一番早く到着するはずの彼女たちだったものの、今日はストレラたちの案内などもあって、少し遅れてしまったせいか——、
「あらおはよう?皆さん。今日は少しだけ遅いのね?」
「おはよう。案外……雪とか隕石とか、なんかヤバいものが降ってきたりしてな?」
——と、先にミレニアとジャックの2人が、教室で待っていたようである。
そんな2人に向かって、ワルツたちはそれぞれ挨拶を口にした。
「おはよう、2人とも」
「おはよう。私たちも、いつも早いわけじゃないよ?」
「今日は特に色々とあったからのう」
「「えぇ……」」
『おはようございます。今日も良い天気で、絶好の伐採日和ですね!』キラッ
と、返答をするワルツたちの一部に、普段と調子が異なる人物がいる事に気付いたのか、ミレニアとジャックが問いかける。
「マリアンヌ様とアステリアさんは……どうかされたのですか?」
「目に見えて分かるくらい、元気が無さそうに見えるんだが……何かあったのか?」
その問いかけに、2人は反応するものの、すぐには返答しない。2人とも顔を見合わせて、複雑そうな表情を浮かべて悩んでいた。朝にあった出来事を言って良いのか悪いのか、すぐに判断が付けられないといった様子だ。
マリアンヌたちが悩んでいると、ワルツが会話に割り込んだ。
「まぁ、その内、分かることなんだし、言っても……いえ、むしろ言わない方が良いのかしら?」
ワルツのその言葉に、マリアンヌとアステリアは、より険しい表情を浮かべてしまう。どうやら、朝にあった出来事を隠さずに、何があったのかを言いたかったらしい。どうやって伝えれば良いのか悩んでいる内に、口を塞がれてしまう形になったようだ。
逆に、ミレニアたちの方は困惑気味だ。何かあったのは確かだが、ワルツたちの会話や、マリアンヌたちの反応を見聞きする限りでは、内容を推測出来なかったからだ。
ただ、確実なのは、ここで無理矢理に説明を聞き出さずとも、そのうち分かるだろうということだけ……。これがワルツたちではなく一般的な学生や先生なら、無視するというのも選択肢の一つだと言えた。
しかし、相手はいつもトンデモないことしかしないワルツたちなのである。無視するという選択肢はあり得なかった。下手をすれば、文字通り爆弾を抱えるようなものだからだ。
かといって、無理矢理聞き出す術は無く……。一旦、口を閉ざしてしまったマリアンヌたちの口から、何かが漏れ出てくることは無かった。結果、ミレニアたちは、悶々——いや戦々恐々とすることになる。
その内に、クラスメイトたちが次々に登校してくる。そしてそのすべての学生たちが、教室の中に漂う異様な空気に気付いて——、
「ねぇ、なにこの空気……」
「しっ!」
「え゛っ?」
「何があったのかは分からないわ……。だけど……空気を読んで静かにしていた方が良さそうな雰囲気じゃない?」
「……あぁ。そうだな……」
——皆、理由も分からないまま、沈黙していくことになる。
そして、始業の時間になり、今日もハイスピアがやって来た。
「おはよう!みんな!」キラッ
今日もハイスピアのテンションは高かった。特別教室が出来てからというもの、朝の彼女のテンションは大体高く、昨日と比べても、特段、今日の彼女に変化があるとは言えない。普段、授業が終わる頃には、いつも現実逃避をしてユラユラ揺れている彼女が、朝になるとなぜテンションが高い状態でリセットされるのかは不明だが、彼女の様子を見る限り——、
「抜き打ちテストがあるとか、そういうわけではなさそうね……」
「学院長室が爆発した訳でもなさそうだし……」
「ワルツたちが何かヤバいことをやらかした、って訳でもなさそうだな……」
——特別教室の学生たちが予想した展開にはなっておらず、教室の中の空気が異様に重かった理由は誰にも分からなかったようである。
次の瞬間、ハイスピアが、一言、口にするまでは。
「実は、皆さんに報告があります。今日は一日だけ……この特別教室に、新しい仲間が加わります!」
その瞬間、クラスメイトたちは悟った。
「「「(これだ!)」」」
と。




