14.14-30 仕上げ30
瓦礫の中に混入していたテレサの尻尾によって家が2度目の爆発をした後、3度目の建築が行われ、ようやく家が元通りになった。その際、テレサは、ルシアから責任を追及されて、後片付けを人力でやらせらることになった。そのせいか、テレサはいつも以上にゲッソリとした表情を浮かべて、深く溜息を吐いていたようだ。
ただ、彼女としては、納得出来ていない様子だった。
「おかしいのう……。予備の尻尾は妾のポケットの中にしか無かったはずなのじゃが……」げっそり
しかし実際、家は爆発したのである。爆発物を持っているとすれば、テレサかワルツくらいのものだが、ワルツが事故で何かを爆発させるなどあり得ないことなので、消去法的に考えると、家の中に残っていたテレサの尻尾が爆発したとしか考えられなかった。
ということは、テレサ以外の誰かが、彼女の尻尾を所持していたということになるのだが、ルシアからのいつもよりも激しい追及を撥ね除ける術はテレサには無く……。全部、テレサが悪い、ということになったようだ。まったくもって解せないことだ。
一方、客人であるストレラは、元通りになったリビングで茶を飲みながら、呆れを隠せない様子だった。
「姉さん所って、いつもこんな感じなの?」
いつも当たり前のように、家が爆発しているのだろうか……。初対面の住人たちが大して驚いていない様子を見たストレラは、ワルツの家がいつも爆発しているのではないかと思ってしまったらしい。
「いつも爆発していたら、耐爆性能を考えた家を作るわよ」
「……爆発しないよう対策を練る、って言わないところが姉さんらしいわ」
爆発させるのではなく、爆発しないよう対策するのが普通の考えなのではないか……。ストレラはそんな事を考えるが、姉たちに"普通"の定義が当てはまらないことを思い出して、追求するのをやめたようだ。
その後でストレラが、茶を口に含んでいると、ワルツが親指と首をクイッと動かしながら、問いかける。
「ところで、あそこに転がってるコルテックスなんだけど……何かあったの?」
どうやらワルツは、ボロボロの雑巾のような姿になって床に転がっているコルテックスのことが気になったらしい。その姿があまりに悲惨すぎて、今まで聞くに聞けなかったようだ。
「そりゃ、姉さんたちの居場所を知っているのに、私たちに黙っていたからね。テンポ姉さんが怒って、ボコボコにしたのよ。まぁ、私も混じっていたけれど」
「あれ、復旧できるの?」
「かなり思いっきりやったつもりだけど……アレは私たちから見ても化け物ね。ボロボロになってるように見えて、実際には服にすら傷一つ付いていないわよ?ちょっとはだけている程度。まぁ、なんで起きないのかは知らないけど」
「まぁ、コルテックスだし……。あの娘はあの娘で、自分なりに研究を進めているんでしょうね。きっと」
「そう言う意味では、テレサも相当だったわね。家を吹き飛ばすくらいの爆風をゼロ距離で受けても、吹き飛びすらしていなかったわ?」
「あの2人は完全に同型の身体を使っているから、案外、どこかで入れ替わっているのかも知れないわよ?」
性格と服装はまるで異なるが、顔や背丈はまったく同じ。文字通りコピーと言えるテレサとコルテックスが、異様な防御力を持っているのは、不思議な事ではなかった。コルテックスは、ミッドエデン共和国の運営を行いながらも、空いた時間は自身の身体を改修することに費やしているのである。その成果を、テレサの知らないうちに、アップデートという形で彼女の身体に施すことなど、コルテックスには造作も無いことだった。
「まぁ、コルテックスにも考えがあるんでしょ。ルシアに対する保険としてテレサを用意している節もあるし……」
ルシアが何かしらの暴走をした時に、テレサがいれば、とりあえず惑星が滅びるような大事件には発展しないはず……。そんなことを考えてしまうワルツだったが、あまり考えすぎると、不安しか浮かんでこなかったためか、彼女は思考を切り替えることにしたようだ。
「ところで、今日は何の用かしら?ただ、文句を言いに来た、ってわけじゃないんでしょ?」
「まぁ、ね。姉さんたちが学院とやらに通っているって聞いて、ちょっと興味を持ったのよ。ほら、ウチの国——メルクリオ王国には、学院なんてものはないからさ?その学院とやらの視察がてらに姉さんたちに会いに来た、ってわけよ?」
と言いつつ、ワルツが着る学生服に視線を向けるストレラ。
対するワルツが、自分の容姿を見られたと思ったのか、ムッとした表情になってしまったので、ストレラは慌てて、「が、学生服を見ていただけよ?」と良い訳を口にすると、ようやくワルツの視線が和らいだ。やはり、ワルツは、相当、強いコンプレックスをもっているようだ。




