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14.14-26 仕上げ26

一部、漢字を修正したのじゃ。

 その日の夜、ワルツは文字通りスキップしながら、自宅への帰路についていた。転移魔法陣が、ただ物体を移動させるだけのものではなく、非常に使い勝手の良い、可能性の塊のような代物だと気付いたからだ。


 彼女のあまりの喜び様に、彼女の後ろについて歩いていたルシアたちは、苦笑を浮かべていたようである。それほどまでにワルツのテンションは高く、浮ついて見えたらしい。ワルツのことを、見た目通りの幼女として見る者がいたなら、微笑ましい光景にすら見えていたかも知れない。


「さぁ!今晩から、機動装甲のプロトタイプの作成を始めるわよ!」


 などと言いながら、ワルツはハイテンションで自宅の扉を開けた——その瞬間だ。なぜか彼女の顔から、スゥッと表情が消えていく。数秒前まで、あんなにもウキウキとしていたワルツの背中には、今や悲壮すら漂うかのごとく、暗い影が差し込んでいた。


 いったい何が起こったというのか……。姉の突然の変わり具合に、ルシアたちが警戒していると、家の中から聞き覚えのある声が飛んでくる。


「うわ……ちょっと、何?この、ちんちくりんは!」くすくすくす

「ストレラ。失礼ですよ?世の中には背の低い方がたくさんいるのですから表現には気を付けるべきです。そうですね……今のお姉様の姿を形容するとすれば……恥さらし、と表現するのが妥当でしょう。私たちが知っている普段の姿は、偽りの姿であって、今の矮小な姿がお姉様の本当の姿なのですから」


 その声はワルツのことを罵倒する言葉で、彼女はおもわず一歩二歩と後ろに下がってしまう。


 ただし、ワルツはショックを受けたような表情を見せていなかった。遂にこの日が来てしまったか、と言わんばかりに苦虫を噛みつぶしたような表情をみせていたようだ。


 なにしろ、そこにいたのはワルツの2人の妹であるストレラとテンポ。そんな2人の足下には、ボロ雑巾のようになったコルテックスが転がっていたようだが、ワルツたちの居場所を隠していた事がバレて、テンポたちから制裁を受けたためか。……まぁ、自分の魔法に失敗して、自爆しただけの可能性も否定は出来ないが。


 そんな家の中にいた者たちの様子に気付いたルシアとテレサ、それにポテンティアは、警戒を解くと、どこか嬉しそうな表情を浮かべながら、家の中に入ろうとした。ワルツが罵倒されるのは、彼女が妹たちのことを放置している上、面倒臭いことを丸投げしているせいだと知っていたからだ。ゆえに、ルシアたちにとって、テンポたちというのは、敵対的な相手ではなく、ただただ懐かしく親しい人物だったのである。従姉妹のような存在だと言っても良いだろう。


 ところが話は、そう単純はは収まらなかった。とはいえ、ワルツが往生際悪く逃げ出そうとしていた、というわけではない。それならまだ可愛らしい展開だといえた。


   ズドゴォォォォンッ!!


「「「『……え゛っ』」」」


 目の前の自宅が、大爆発を起こして吹き飛んだのだ。木っ端微塵である。


 その光景に、ワルツを含めて皆が唖然とするが、ごく一部の人物だけは空中に向かって明らかな敵意を向けていたようだ。


『マスターに向かって暴言を吐くなど、万死に値します!』


 アステリアだ。彼女はいつの間にか、大狐の姿に戻っていて、瓦礫と共に空中へと吹き飛んだテンポたちの姿を目で追っていたようである。


 そればかりか——、


『見つけたっ!』


   シュタッ!


——と、地面を蹴ると、吹き飛ばされた人影——具体的にはストレラを見つけて、宙を舞う瓦礫を足場にしながら、空を飛ぶようにポンポンと宙を進んでいく。


 そしてストレラの首に乱暴に噛みつくと、そのまま今度は地面目掛けて彼女の事を投げつけて……。そして地面に叩き付けられたストレラの頭の上に、巨大な黒い手を押しつけたのである。


『グルルルル!!』


 怒りに我を忘れた様子で、ストレラを襲ったアステリアは、ワルツとストレラたちの関係を知らなかった。ゆえに彼女は、単にストレラがワルツの事を罵倒した不届き者だと判断したのである。単に早計な行動だった。


 ただ、早計だという意味では、もう一人、問題児がいたようである。


「何でしょう?この小汚い犬は」


 テンポだ。彼女も、アステリアがワルツの同居人だとは知らなかったのだ。


 ゆえに、爆発や瓦礫をすべて避けて、急にその場に現れたテンポは、大狐化したアステリアの側頭部に手を翳した。もちろん、殺処分するためだ。いきなり襲ってきた魔物なのだから、殺害したところで何の問題も無い……。彼女はそんな判断を下したのである。


 そして、テンポの手の平から、魔物程度なら一瞬で蒸発してしまうほどの威力をもったエネルギー弾が放たれる。何魔法なのかは不明で、ルシアが放つ無属性の魔力弾に近いしろものだった。


 しかし、その弾がアステリアに当たる事は無かった。


   ズドォォォォン!!


「……どうしてこうなるのじゃ……」げっそり


 テンポとアステリアの間にテレサが割って入ったのだ。そう、文字通り、空間を割って。転移魔法だ。


 そしてテレサの事を転移させたのはルシア、ではなく——、


「ちょっと、みんな?!落ち着いて!ここに争う相手なんて誰もいないからね?!」


——転移魔法陣を操るワルツだった。


あぁ……今日で丸8年、この話を一日も欠かすこと無く、書いたことにになるのじゃ(3日間だけアップロード忘れがあったがの……)。

仕事に追われて、睡眠時間も碌に取れぬ日々の中、ポイントも高くないというのに、なぜ8年間も書き続けようと思ったのかよく分からぬが、この駄文はまだ続くゆえ、読者の方にはもうしばらくお付き合い願いたいのじゃ。

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