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14.14-23 仕上げ23

「そもそもさ……」


 ワルツが皆に問いかける。


「中級魔法って何?」


 今まで魔法が使えなかったワルツには、中級魔法というものが何者なのか、分からなかったらしい。まぁ、正確には、今でも魔法は使えるようになったとは言えないのだが、魔法陣を使って似たような事が出来るようになったというのは間違いないと言えるだろう。


 そんな彼女の問いかけに、ルシアは首を捻った。


「んー、そういえば何だろうね?中くらいの強さの魔法?」


 息を吸うように魔法が使えるルシアにも、中級魔法の定義は分からなかったようだ。ワルツが魔法を使えない以上、彼女と共に行動することの多いルシアも、魔法について詳しく知ることは出来なかったらしい。


 学院での授業の際、学院長のマグネアが応用魔法理論を教えはしたが、初級魔法や中級魔法などの違いは、基本中の基本であり、彼女は応用は取り扱っても、基本までは教えなかったのだ。その他、コルテニアなる謎の教師(?)が魔法学を教えたこともあったが、その際は実力を確認するだけだったので、結局、ワルツたちは、魔法学の座学と言えるものを未だ受けていなかったのである。


 当然、ポテンティアも知らず……。最近まで魔法を使えなかったアステリアも初級と中級の魔法の違いは分からなかったようだ。彼女たちが唯一自信を持って言えるのは、初級魔法がどんな魔法かということだけ。火球のような単純な魔法が所謂"初級魔法"だということくらいしか知らなかった。


 ただ、幸いと言うべきか、その場には魔法について詳しく知っている者がいたようだ。マリアンヌだ。彼女は魔女であり、代々、魔法について教わってきたからだ。


「ルシアちゃんが言っている通り、見た目の雰囲気で分けるという方もいらっしゃいますわ?ルシアちゃんの光魔法で、地面に大きな穴を開けた際の魔法などはその典型例で、あれは初級魔法とも言えますし、広域殲滅魔法とも言えますわね」


「でしょうね」

「じゃろうの」

『えぇ、分かります』

「そうですよね……」


「んん?(もしかして分からないのは私だけ?)」


「その他で明確な違いは、一つの魔法を構成する属性の数というのも、級を分ける一つの目安ですわ?」


 と、口にした後、マリアンヌはもう一言付け加える。


「……まぁ、先日、皆様が組み上げた理論によれば、属性などあって無いようなものなので、結局は雰囲気で分けるのが正解かも知れませんけれど……」


 火魔法と氷魔法は、プラスとマイナスで方向は違えども、両方とも熱を操る魔法なのである。それと同様に、プラスマイナスで分けられる魔法があるのではないか、というのがワルツたちの理論だった。


 それを元に考えるなら、2種類以上の属性を組み合わせた複合魔法——世間一般に言われている中級魔法は、例えば、火魔法と氷魔法を組み合わせることを考えたとき、同じ魔法を組み合わせているだけだと言えるので、ワルツたちの理論的には、単一魔法と同じ。つまり、2属性を組み合わせたとしても、組み合わせる属性によっては初級魔法と同じという分類になるのである。


 単一の火魔法や氷魔法と、2つの属性を組み合わせた中級魔法との間に何か違いがあるとすれば、単に威力だけ。ゆえに、単に見た目の派手さや、威力だけが、初級と中級を分ける違いだと言えなくなかったのである。


「元も子もないわね……」


 ワルツが自分たちの理論を思い出して、その上で中級魔法の定義を考えて、頭を抱えていると、マリアンヌが首を横に振る。


「いえいえ、そんな事はありませんわ?新しい理論で、古い中級魔法を定義できないのなら、新しい理論で、新しい中級魔法を作ってしまえば良いのですのよ。そうやって魔法は進歩してきたのですもの」


「なるほど」


 マリアンヌに指摘を受けたワルツは、俄然やる気になった様子で、自分たちの理論に基づいた新しい魔法を考え始める。


 ワルツたちが考えた魔法の理論というのは、端的に言えば、魔法を物理学の現象として整理するということでもあった。つまり、ワルツたちの魔法の理論にとっての"中級魔法"とは、複数の物理現象を組み合わせた魔法ということになるのである。


 そんなことを考えたワルツは、また碌でもないことを思い付く。


「ふむふむ、なるほどね。じゃぁ、つまり、こういうことね?」


 ワルツは両手を広げ、空中一杯に銀色のインクを広げた。魔法陣を書くためのオリハルコンのインクだ。そんなインクを重力制御システムで操り、転移魔法陣として空中に浮かべる。しかも1つではない。一気に50個ほど浮かび上がらせた。


 その後でワルツは、それぞれの転移魔法陣から、手元に一本ずつ銀色のインクを引っ張ってくる。導火線のようなものだ。


 そしてすべての準備が整った後。ワルツは、インクが集まる右手の上に、青い宝石のようなもの——ルシアが作り出した魔力の結晶であるアーティファクトをポトリと置いた。


 その瞬間だ。


   ズドォォォォン!!


 爆音と轟音と衝撃波を伴いながら、上空で雲が割れて青空が顔を出した。空で大爆発が起こったのだ。


 一体何をしたというのか……。宙に浮かぶ50個もの魔法陣を前に、マリアンヌが大混乱状態に陥っていると、ワルツはこんなことを言い出した。


「へぇ……。自分でやっておいてなんだけど、ポリ窒素爆弾も()()()出来るのね。思った以上に、転移魔法陣って便利だわ」


 そんなワルツの発言を誰も理解出来なかったことは言うまでも無いだろう。


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